中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

子どもの気持ちに寄り添った『#マイネーム 』(黒川 裕子)

駒場東邦等で使われた実績のある作家だが、

公立高校入試でも割と出題されてるようだ。

 

高校で出る作品は中学入試でも出てくるし、

『天を掃け』あたりは最注目作品っぽいな。

 

この先生、はてなブログを持ってたりする。

 

令和二年(2020年)国語入試出題情報まとめ

 

さて、今回紹介する本の主人公は怒りん坊。

やり場のない怒りにはちゃんと理由がある。

 

父が離婚で出て行き母は心を病んでしまい、

本人は慣れない苗字に違和感しかない日々。

 

ただでさえ思春期にこれじゃ仕方ないよな。

そんな中から突破口を見つけていくんだが。

 

子ども達が協力して何かを成し遂げようと

奮闘する展開には、学びがあると感じたわ。

 

たくさんの共感を集めそうなのはこの一文

 

だれかに話はきいて欲しいけど、心の奥までは立ち入られたくない。そんなこと、きっとだれにでもある。(本文より)

 

以下は俺が書いたブックレビューの一部だ。

 

親が離婚したことで、自分の苗字がタブーのように扱われる日々に悩む中学1年生の少女が主人公。クラスメイトや同じようなつらさを抱く人たちとの交流で力を得た彼女が、仲間と共に“苗字にさんづけで呼び合いましょう”という先生の押し付けに抵抗します。

 

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『#(ハッシュタグ)マイネーム 』(黒川 裕子/さ・え・ら書房

 

【本気レポート】涙をチカラに変えて ~或る早稲アカ女子の疾走~

「ありがとうございました!」


校舎の受付に喜びの声が響きわたりました。塾生親子の腹の底からの感謝に、その場にいた全員が弾かれたように立ちあがり、とびっきり大きな声で応じます。


「ありがとうございました!!」


歓喜で教室が満たされた瞬間です。

みんなの心が一つになったその場面。少女が最高の笑顔に包まれるその瞬間までの道のりは、決して平坦ではありませんでした。

 

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「自分の未来を変えたい!」


そう願った少女は、小5になる直前に早稲田アカデミーの門を叩きました。中学受験には遅いスタートだったこともあり、初めての組分けテストの偏差値は35


しかし、母親の文字通り身を投げうつようなサポートもあり、必死で塾のペースに食らいつきます。


だんだん早稲アカ気質に染まっていき、おっとりした表面の下に隠れていた内なる情熱が目覚めはじめたのが小5前半の時期でした。


涙に濡れた答案用紙を「一生懸命、頑張ったのに・・・」とつぶやきながら差し出す日もあったといいます。この泣くほど悔しがることができる気質は、実のところ彼女の”成長の起爆剤”でもありました


努力はやがて実を結びます。当初は最下位クラスだったものが、小5の後半には校舎最上位へのクラスアップを打診されるまでになったのです。


本来なら飛び上がって喜んでもおかしくないこの場面。しかし、彼女の家族が下した決断は意外なものでした


「今は基礎固めが大事。先生との相性も抜群だし、環境は変えない方がきっと本人のためになる」


そう考えてクラスアップを辞退したのです。目先の誘惑に負けず、じっくり腰を落ち着けて学ぼうと決めるというのは、なかなかできることではありません。


この方針は正解だったようです。小6になってからも大小の波乱はあったものの、意欲を失わず、上り調子で本番を迎えられたのは、本人に合った環境を考え抜き、選び取った結果でしょう。


35から始まった偏差値は、最後の合不合判定模試で60台に乗せるところまできます。塾に頼み込んでクラスを降級させるという一幕もありましたが、直前期には最上位クラスに十分ふさわしい状態に仕上がってきたわけです

 

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さあ、いよいよ入試本番です。受験のスケジュールは本人の性格を踏まえ、だんだんレベルを上げていくという方針で臨みます。


安全策をとった1月の前受校は、特待合格を含めての3連勝。幸先の良いスタートを切ったかと思われましたが、事件は2月1日の熱望校で起こりました


国語の大問1の途中で具合が悪くなり、退出するという悲劇に見舞われたのです。その学校では途中退出の科目はそこで終了という決まりでした。元々ギリギリの戦いになるはずだった第一志望での中座。絶望に打ちひしがれてもおかしくない局面です。


受験生活を通じてさんざん不安に溺れたり、泣きはらしたりしてきた彼女でしたが、そのときは違いました。


午後の親子面接で「試験はどうでしたか?」と問われた少女は、はっきりとこう答えます。


「国語の試験では、途中で保健室に行くことになってしまいましたが、その他の科目では全力を尽くせたと思います!」


このときの彼女は清々しい位に凛としていて、まなじりを決した横顔は輝いてさえ見えたといいます。


トラブルにめげず、親も目を見張るような成長ぶりを見せた熱望校の受験。結果は残念に終わりましたが、それはこの家族にとってのかけがえのない貴重な経験でもありました。

 

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「あの日、保健室に行かなかったら私の人生は変わってた。乗り越えたから今がある」


その後、憧れ校の合格を勝ち獲った少女は、当時をこう振り返ります。


結局のところ、二月の受験結果は✕〇〇✕〇となりました。悔しさをバネに奮起した彼女は、最後の最後で6年次の成績を優に上回る学校の合格通知を得て、見事に有終の美を飾ることができたわけです


未来を変えたいという少女の想いから始まった中学受験。だからこそ彼女は「これは自分の戦いだと思えた」といいます。


泣いても、倒れても、また立ち上がるという気概は、まさに”不屈の闘志”と呼ぶにふさわしいものでしょう。少女が見せたその想いの強さは、これから受験を迎える親子にも勇気を与えてくれそうです。

 

 

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参照元:不屈の闘志 - 娘と私の2年間 偏差値35からの中学受験


母親の戦略が光る中学受験の回顧録でしたが、残念ながら現時点では参照元を見ることはできません。今回はお願いしてダイジェストを書かせていただきましたが、『全身全霊のママ塾』『父親の並走』『救世主は早稲アカ講師』『高め合えた塾友たち』など、紹介しきれなかった重要エピソードも無数にあります。


なお、第一志望以上の難関校に進んだ少女は、中2で英検2級を取得し、中学受験のおかげで好きになった数学にも、さらに磨きをかけているとのことです。


「随分と勇気が要ったし、頑張った。しかしその頑張りはこの受験を終えた後大人になっても、今後ずっと必要になる経験となったと思う」

(不屈の闘志ブログの本文より)

 

【 お勧めの過去記事 】

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心に御守りをたずさえて ~或る日能研女子の復活劇~

私らしく、いられる場所へ ~或る元サピ女子の再起~

どんなに心が挫けても ~或る公文男子の矜恃~

わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

出題が予想される物語文『夏の体温』(瀬尾 まいこ)

もう俺、小学三年生だよ。可能性がないこと願ってるより、この身長で生きていく方法を考えないとさ。(本文より

 

中編2本、短編1本という構成の作品集だ。

頻出作家の最新作でしかも出題しやすそう

 

ラストの短編『花曇りの向こう』もいいが

表題作『夏の体温』には特に注目したいな。

 

経過観察のため長く入院生活を続ける子が

ストレスでちょっとした悪事に手を染める。

それを見抜いた友人は・・?って筋書きだ。

 

毎度のことだが俺のレビューの一部は以下。

 

病院での生活に飽き飽きしていた小3男子が、検査入院でやってきた快活な少年と思いっきり遊ぶことで意欲を取り戻します。病気を笑い飛ばす“不幸仲間は”嵐のように去っていきますが、彼のささやかな置き土産が少年の心の澱みまで洗い流してくれるのでした。

 

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『夏の体温』(瀬尾 まいこ/双葉社

 

 

溢れんばかりの家族愛『母さんは料理がへたすぎる』(白石 睦月)

なさけない、みっともない、やるせない。いいじゃん。それでいいんだよ。(本文より)

 

2021年入試で出題数3件だった作品だ。

家族愛溢れる本なんだが、特に注目なのは

少年の小学校時代を描いたプレゼントの章。

 

学校が舞台になるシーンが一番活き活きと

描かれてるし面白くもありお勧めなんだわ。

 

全然関係ないが、シマウマの鳴き声が実は

犬にそっくりってネタはこの本で知ったわ。

 

以下は俺が書いたレビューからの一部抜粋。

 

父を亡くした少年が仕事で忙しい母を助けて家事や三つ子の妹の世話に奔走します。男のくせに料理ができすぎるとバカにされたくない彼は、わざと家庭科の時間に手抜きをするのですが、堂々と腕を振るう転校生が現れたことで気持ちに変化が生じます。

 

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『母さんは料理がへたすぎる』(白石 睦月/ポプラ社

 

不和解消で東洋英和『カリスマ塾長直伝 中学受験に大成功する「家庭の戦略」』(須野田 誠)

父親と母親の呼吸が合っていない環境に子どもを長く置くと、まず伸びません。(本文より)

 

早稲アカ創業者が書いたちょっと古い本だ。

 

家庭内不和で成績不振になった家庭の子が

両親の歩み寄りで勉強に集中できるように

なり、東洋英和に受かった美談とかもある。

 

入学後に夫婦がどうなったのか気になるが。

 

受験で挫折を味わい苦労した講師のほうが

評判を得るケースが多いってのは納得だわ。

 

やっぱデキない子の気持ちが解らないとな。

 

進学校を同レベルの附属校と比較した場合

附属校を超える偏差値の大学に進学できる

可能性は約50%って話も興味深かったわ。

 

もう一つ面白いと思った話を挙げるとコレ。

 

レベルがほとんど同じくらいの集団の怖さは、1ヶ月でガラリと順位が入れ替わることです。(本文より)

 

『カリスマ塾長直伝 中学受験に大成功する「家庭の戦略」』(須野田 誠/講談社

 

コロナ時代の中学生活『マスクと黒板』(濱野 京子)

逃げるのは恥ではない。そう思いたい。向き合うことばかりが肯定されるのはきつい、という考えのほうが腑に落ちる。(本文より)

 

そこそこ入試に出る作家の4月発売の新作。

 

絵を描くのが好きだけど美術部には内申の

ために一応入ってるという中2が主人公だ。

 

コロナ禍が舞台とはいえ、前半は主人公が

ウジウジしすぎていて物語は淡々とすすむ。

けど、後半はうってかわってハイテンポだ。

 

出題するなら会話のキャッチボールがいい

後半のシーンの方が使いやすいだろうな?

 

以下に俺のレビューから一部引用してみた。

 

潔癖症で人一倍コロナを恐れる中2男子が主人公。無気力で人と関わりたがらなかった彼が、学校に突如現れた黒板アートに刺激され、全学年を巻き込んだイベントの実現に向けて動き始めます。人に感謝される喜びを知った主人公が、イベント企画を通じてどう変わっていくかに要注目です。

 

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『マスクと黒板』(濱野 京子/講談社

 

スマホを持たせる時期に読ませたい『嘘吹きネットワーク』(久米 絵美里)

結局みんな、自分で体験して、自分で痛い目を見なければわからないのだろうか。(本文より)

 

学校司書の方がいかにも入試に出そうとか

言ってたんで、思わずチェックしてみたわ。

 

確かに学校での会話シーンが使いやすそう。

嘘の是非を語り合う場面とかも要注目だな。

 

賞をとっただけあって期待以上に面白いわ。

入試に出る出ない関係なく読む価値アリだ。

 

読書レベル高めの小4娘も、中1になった

息子も楽しめたから、小6前後にピッタリ

 

以下には俺のレビューから一部を引用した。

 

主人公は正義感が強すぎる小6女子。嘘には黙っていられない彼女が、嘘でみんなを幸せにするとうそぶく不思議な少年との交流を通じて、自分を見つめ直していきます。主人公たちがネット上の騒動に巻き込まれる筋書きなので、読書を楽しみながらごく自然にメディアリテラシーが学べ、警戒心を身につけられそうです。

 

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『嘘吹きネットワーク』(久米 絵美里/PHP研究所