中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

揺れ動く中1女子の力関係『ココロノナカノノノ』(戸森 しるこ)

戸森しるこ『飛ぶ教室』連載中の作品。

 

いじめは止めたいけど自分自身の安全は

最優先にしたいっていう少女が出てくる。

 

グループ内での立ち位置の変化みたいな

中学生のリアルな日常を描いてて面白い。

 

家庭より級友との場面に注目したいな~。

 

この作家の本はたまに入試に出てくるし

ここ1年の『飛ぶ教室』掲載作の中では

わりと素材にしやすそうな印象を受けた。

 

物語のさわりを要約するとこんな感じだ。

 

主人公は中1女子。誕生の際に失われたはずの双子の妹、野乃の存在を感じることのある彼女は、時折、妹と仲良く暮らしているさまを想像することがあります。架空の友人の話をしていじめられるクラスメイトに似たものを感じ、近づいてみたのもそんな背景があったからでした。

 

『ココロノナカノノノ』(戸森しるこ/光村図書)

 

疎外感を消し飛ばす『夏休みの空欄探し』(似鳥 鶏)

出題実績のない著者だと思うが推す人が

やたら多い話題作なんでチェックしたわ。

 

6月発売の新作だが作問者は見たかな?

 

面白いがエンタメ系の作風だと感じたわ。

出題に使えそうなところも多少あるけど

積極的に小学生に薦めたい作品ではない

 

中学生の楽しい読書にちょうど良い感じ。

 

いつものレビューはこんな書き出しだわ。

 

わかりあうって素敵だな~と実感させてくれる作品です。主人公は謎解きが得意な高2男子。卑屈で内向きだった彼が、難題に取り組む姉妹に出会い、心強い味方も得ながら、ひりつくような頭脳勝負に挑むストーリーです。

 

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『夏休みの空欄探し』(似鳥 鶏/ポプラ社

 

世界の広さを肌で感じられる『両手にトカレフ』(ブレイディ みかこ)

正義なんて恵まれた人間が信じるものだ。私には、私しかいない。(本文より)

 

そこそこ入試に出る作家の6月の新作だ。

貧困や格差について深く掘り下げてるし、

特に中学生たちに読んで欲しい作品だわ。

 

俺のリストの中ではトップクラスの売上

 

作問者も気づく可能性が高そうなんだが、

一部に小学生に見せたくない箇所もある

 

そこを外せば入試素材にはなりそうだが。

フミコが弟と引き離されるシーンとかな。

 

文章の難易度「やや難」、テーマ注目度

「◎」、飛ぶ教室紹介は「〇」、素材の

使い勝手は「無印」として12月に作る

出典予想の最終版では20位台の想定だ。

 

以下が俺のブックレビューの最初の部分。

 

ドラッグ漬けの母の元でどん底の暮らしを強いられる英国少女が、昔の日本女性の自伝の中に自分と同じものを見出します。食事にも窮するなか、必死で弟の面倒を見る主人公の生き様は想像を超える凄惨さでした。14歳で心が荒みきるのも頷けてしまうほどに。

 

『両手にトカレフ』(ブレイディみかこ/ポプラ社

 

助け合うってスバラシイ!『天の台所』(落合 由佳)

自分で台所に立つたびに、小さな発見がある。それを一つ一つ拾い上げて、胸にしまう。(本文より)

 

地元の図書館が大量に仕入れて推してる

ノーマーク著者の2021年9月発売本。

 

あんま期待してなかったがこれが当たり

ごはんを作ることの尊さを学べる一冊だ。

それでいてちゃんと面白いんだもんな~。

 

これを読むと、おかあさんに感謝したり

自分で台所に立ちたくなったりするかも。

 

俺の激賞レビューの書き出しはこれだよ。

 

主人公は母と祖父母を亡くした小6男子。誰もちゃんとした食事作らなくなった家で暮らす彼が、祖母の盟友のサポートを受け、料理のなんたるかを学んでいきます。家族愛あふれる作品ですね。主人公が台所作法をイチから覚える歩みを追体験することで、食事の支度をすることがいかに大変かを知ることもできます。

 

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『天の台所』(落合由佳/講談社

 

開成だとか、女子学院だとか『きみの鐘が鳴る』(尾崎 英子)

こんなにも必死になったことなんて、十二年生きてきて、はじめてのことだった。(本文より)

 

昨日発売された十代向けの中学受験小説

 

正直、小6の春あたり迄は退屈だったが、

夏からは面白さにエンジンがかかる感じ。

 

2月の修羅場とかもう凄いのなんのって。

児童書でここまで親の狂気を書くか~?

子供の方がむしろ冷静という場面もある。

 

実在する学校をモデルにしたと思われる

名門校が多数出るうえにサピらしき塾も。

 

【この本に登場した名門校】

筑波大学附属駒場、開成、桜蔭渋谷教育学園幕張、女子学院、浦和明の星女子、栄東(東大特待)、栄東など

 

注目ポイントは塾の先生たちの言葉だな。

特に終盤は金言だらけだと俺は感じたよ。

 

読後感はいいが子どもはビビるかもな~。

むしろ大人にはいい薬になりそうだわさ。

 

毎度のマイレビューはこんな書き出しだ。

 

同じ小規模塾に通う4人の視点で描かれた中学受験物語。それぞれに問題や不安要素を抱える彼らが、プレッシャーに満ちた過酷な戦いの中で、もがきながら変貌を遂げていきます。

 

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『きみの鐘が鳴る』(尾崎英子/ポプラ社

 

小学生には早いかな~『パンに書かれた言葉』(朽木 祥)

今この瞬間も、この地球上で、ものすごくひどい目にあっている人がいる。自分がその人じゃないのは、ただの偶然なんだ。(本文より)

 

今年最もホットなテーマは平和だろうな。

そこで、読友さんたちが高く評価してた

この作品にも目をつけてみた次第ですわ。

 

イタリア編は目新しい感じではあったが、

昔からよくあるタイプの戦争文学かな~。

 

ちょっとトラウマになりかねないアレだ。

 

まぁ学校関係者が好みそうな部分はある。

学びも多いし中学生に読んで欲しい本だ

 

新時代の戦争文学とカテゴライズできる

『モノクロの夏に帰る』と併せて読むと、

原爆への米系少年の反応の差に驚くかも。

 

以下は俺のブックレビューの締めくくり。

 

つらい記憶を風化させないこと。忘れないでいること。とても大事なことですが、本当に起こったこととはいえ、どこまで子どもたちに伝えてよいのか考えさせられました。

 

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『パンに書かれた言葉』(朽木祥/小学館

 

中受小説『きみ鐘』の話題など

中学受験小説『きみの鐘が鳴る』

著者のインタビュー記事を見つけた。

 

受験に伴走した経験を活かしてんだ。

こいつは期待できそうな気がするわ。

 

ローティーンあたりがターゲットと

思うが親が読むにもいいのかもな?

 

『翼の翼』のときも書いたが、親の

メンタルワクチンに活かせそうだし。

 

まぁ、俺もまだ読んでないけどな!

 

2022年11月9日発売予定

 

さて、ここで2024年組の方から

いただいた質問への回答を書いとく。

 

日能研調べの出題が多い本について、どこで見ることができるのでしょうか? または、ベスト5の本を教えて頂けないでしょうか? 

 

3月開催の入試報告会での配布資料に

中学入試に出題された作品と作者

という国語出典のまとめがあるんだわ。

 

セミナーに参加できなくても資料請求

する機会が今年でいえば4月にあった。

校舎で頼めば見せてもらえるかもな?

 

お薦めの本は読書レベルが判らないと

何とも言えんが、5年生ってことだし

リストで平易となっている本だとか?