中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

つながりの輪を広げて『アゲイン』(あんず ゆき)

「あのさ、わたしがなんで一生懸命勉強してるか、わかる?親をあてにしないで、自分の力で生きていくためだよ」(本文より、主人公の姉の言葉) 中学年向けの作品で存在感のある著者が 高学年向けに描いた来月発売の新作だわ。 貧困やフードロスを真正面から…

心に芯を入れてくれる『鳥』(小手鞠 るい)

たまに出題される作家の5月の新作だわ。 中2の少女たちの国境を越えた交流の話。 お互いに詩を送り合ったりするんだけど 短い詩に凝集された想いがスゲーんだわ。 うっわ、この詩一番イイ!とか思ったら その後で軽々と上回ってきたりするしよ。 ラストの…

それでいいよと語りかける『ふたりのラプソディー』(北 ふうこ)

あのねぇ。六年生の二学期ゆうたら、みんな中学受験のことで頭いっぱいなんよ。(本文より) たぶん、受験界隈ではノーマークの著者。 低学年以下向けが中心だったベテランが 高学年向けに挑戦した先月発売の新作だ。 芸人父娘の会話の弾みっぷりがすごいよ…

今だから推す、入試定番作品8選より『家族シアター』(辻村 深月)

頻繁に出題絡みの著作権許諾申請が来る という辻村深月の2014年発売の作品 『家族シアター』には再び注目したいね。 30日発売の超ヤバい新作に繋がる短編 『1992年の秋空』が載っているから。 件の短編をレビューするとこんな感じだ。 主人公は小…

出題されるかもしれない新刊本(2023年7月前後)

2023年の三田国際の入試素材にあの 『ワンピース』が使われててビビったわ。 4ページにわたって漫画が載ってんのよ。 セリフから意図を・・・とかしてんのよ。 第2回入試の国語素材に『ワンピース』 さて、いつもの本題にもどりますよっと。 芥川賞・…

ひらける友情の可能性『文通小説』(眞島 めいり)

デビュー作も2作目も出題された作家の 5月に発売されたばっかしの作品ですわ。 主人公は進路に迷う中学3年生なんだが、 彼女は人間関係の過ちを通じて友達とは どういうものか見つめ直してくんだよな。 主人公が辿りつく新しい友情のカタチは 生きていく…

温もりの極致、入試定番作品8選より『みつきの雪』(眞島 めいり)

ちゅうでん児童文学賞の大賞作品ですわ。 公式情報によれば以下の出題実績だとか。 2021年入試 関西大倉、甲陽学院、追手門学院、実践女子、田園調布学園、聖ヨゼフ学園、学習院中等科、吉祥女子、佼成学園 2022年入試 新潟大学附属新潟、清風、静岡県西遠女…

きっと目が離せなくなる『みつばの泉ちゃん』(小野寺 史宜)

人間て、たぶん、優しくない相手に優しくはできないです。(本文より) ひとりの少女の成長を見守る連作短編集。 まれに出題される作家の5月の新作だわ。 真っ正直な主人公が演じるドタバタ劇が 最高に笑えて、しかも応援したくなる本。 合いそうもない同級…

沁みわたる博愛のこころ『ファミリーマップ』(おおぎやなぎ ちか)

父親の突然の再婚に揺れる中学生を描く 低学年以下向けが多かった著者の新境地。 主人公は家の事情で生活力がついた少年。 これが応援せずにいられない子なんだわ。 この家族には、一風変わった恩人がいて 困ったときにはズンと進み出てくれんの。 この人の…

軋轢を越えて、入試定番作品8選より『雲を紡ぐ』(伊吹 有喜)

2021年の中学・高校入試頻出本だわ。 でもって今年も中学入試に使われてたよ。 驚くほど意思が通わない家庭が痛々しく 読むのがつらくなるかもしれないんだが ちゃんと救いもあって癒される作品だわ。 文章の難易度は高いが難関を目指すなら このレベル…

際立って美しい心根『リラの花咲くけものみち』(藤岡 陽子)

十二歳で一度終わった自分の人生が、こんな広い道に続いていたことに身震いした。(本文より) わりと入試に出る作家の7月発売の新作。 先週までタイトルに仮とついてたんだが 『リラの花咲くけものみち』に正式決定。 『金の角持つ子どもたち』と似た語感…

色褪せぬ名作、入試定番作品8選より『逆ソクラテス』(伊坂 幸太郎)

入試で使われ続けてる2020年の作品。 小学生の日常が軽快に描かれた短編集だ。 これがメチャメチャ愉快な作品なんだわ。 本好きでない子にもウケそうな感じだよ。 大人も夢中になっちまうストーリーだし、 出題者に選ばれ続ける理由も読めば解る。 この…

あの夏を忘れない『薄明の流れ星』(辻村 深月)

秋以降の作品が滅多に入試に出ないのは 前から書いてるが、実際、7月~8月の 新作もその年度の入試にはあまり出ない。 故に2024年組にとって最後の大作は 『この夏の星を見る』になりそうですわ。 何せ6月30日に発売される予定だしよ。 入試定番化…

心に残る戦争の傷跡『ぼくはうそをついた』(西村 すぐり)

ポプラ社から来週7日に発売される新作。 バレーボールにのめり込む高学年男女が 思わぬきっかけで戦争のかなしさを知る。 一言で言っちまうとこんなストーリーだ。 母の戦争体験を聞いた著者が30年間も 温め続けてきた話を元にしてるそうだよ。 17歳の…

胸を張れ、少年たち『ふたりのえびす』(高森 美由紀)

オレだけじゃない。ほとんどの子はキャラをかぶっている。演じている。素で生きられるほど、小学生ライフはあまくない。(本文より) 小5レベルでも十分に読めるお楽しみ本。 今年の入試で使った学校もあったんだが、 課題図書になり一層注目されそうな感じ…