中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2023-01-01から1年間の記事一覧

ままならない少女たち『どうしようもなく辛かったよ』(朝霧 咲)

道徳的な正しさは、所詮他人事の時だけまかり通るのだ。(本文より) 受験勉強しながら高3で小説現代新人賞。 で、今は京大生ってこりゃまたスゲーな。 今回の紹介作品は9月発売のデビュー作。 中学のバレー部員たちを描く短編集だわ。 さわやかとは対極に…

スランプの先へ『八秒で跳べ』(坪田 侑也)

「覚えておきなさい。不調のときは、成長できる最大のチャンスだ」(本文より) 慶應普通部で労作展のために書いた本で デビューして今は医学部生ってナニコレ。 中3夏休みの自由研究が商流に乗るとか、 そんだけで驚きだけど、その後も凄すぎ。 そんな作家…

【番外編】2024年高校入試 国語出典予想20選(2023年1月~2023年10月発売)

試しに高校入試版の予想も作ってみたよ。 中・高入試ともに選書の傾向は似てるが、 高校は10月の作品も割と出ているから、 中学入試版とは少し違う顔ぶれになるよ。 まぁ、そう当たるもんじゃないだろうな。 2024年高校入試国語出典予想20選 (タイ…

学ぶことの意味がしっかりと伝わる『クロワッサン学習塾』(伽古屋 圭市)

学習は知識ではなく、その先にある“考える力”を、究極的には“よりよい人生”を掴むためにあるものではないか。(本文より) 入試とは無縁っぽい作家の6月の新作だ。 コチラで紹介されてたんで読んでみたよ。 意欲ある元教師が子供達の未来のために 自分に出…

人をたやすく決めつけないで『川のほとりに立つ者は』(寺地 はるな)

あの人だけじゃない。かわいそうな女に手を差し伸べたい男っていっぱいいるの。なんでだかわかります?自信がないからですよ。(本文より) 入試頻出作家の昨年10月の作品ですわ。 本屋大賞でも9位というベストセラー本。 手にした出題者もいただろうと思…

新鮮な驚きもある『ケモノたちがはしる道』(黒川 裕子)

人間にとって得になるか、損になるか。自然とはそれだけで割り切れてしまうものなのだろうか。(本文より) たまに入試に出る作家の来週の新作だよ。 同し時期に2冊でるってんだから驚きだ。 11/9発売 『ケモノたちがはしる道』 11/14発売 『オランジェット…

もう、世間知らずじゃいられない『宙わたる教室』(伊与原 新)

待っているんですよ。我々定時制の教員は、高校生活を一度あきらめた人たちが、それを取り戻す場所を用意して待っている。(本文より) 地学小説という新しいジャンルの開拓者、 伊与原先生の10月に出たばかりの本だ。 定時制高校の異色の文化部が発表の場…

めげない少女が駆ける『ややの一本 剣道まっしぐら! 』(八槻 綾介)

勝ちたいと思うなら正しい努力をしろ。(本文より) 今作でデビューした作家の5月に出た本。 ポプラズッコケ文学新人賞の大賞作品だ。 勢い200%!という感じの剣道少女が 願ってやまない目標のために全力を出す。 主人公の魅力ってのが突き抜けてたな~…

思わず声援を送りたくなる『リカバリー・カバヒコ』(青山 美智子)

でも順位なんてさ、いつだって、狭い世界でのことだよ。(本文より) 入試頻出作家の9月に発売された新作だ。 都市伝説に心を動かされる人々を描くが SFチックな話ではまったくないんだな。 素材にする際の妨げになる要素はないし 第一話と第四話なんて特…

たましいの叫びを聞け『ルール!』(工藤 純子)

大人になる前にあきらめることを覚えるなんて、正しいはずがない。(本文より) 入試頻出作家の本日発売された新作だわ。 トラブル当事者になってしまった少女が 理不尽なルールの存在を初めて意識して 校則の見直しに向け動き始めるんだな~。 中学生達が校…

出題されるかもしれない新刊本(2023年11月前後)

11月にも面白そうなのが続々と来るな。 追加で判明したらこの記事に加筆するよ。 10/26発売 『ルール!』(工藤 純子) 理不尽な校則に立ち向かう中学2年生達。 10/30発売 『アオナギの巣立つ森では』(にしがき ようこ) 森の中で凄いものを見つけた二人…

あの先生のお株を奪うような『かたばみ』(木内 昇)

楽な道を選べば、いっとき救われるんや。けどな、努め続けておったらたどり着けたはずの場所から、永遠に切り離される。(本文より) 読友さん達がやたら激賞するもんだから 思わず手にしてみたが確かに大当たりだ。 何が正しいか徹底して考えさせられるよ。…

心に勇気を灯してくれる『ひとりかもしれない』(岩瀬 成子)

わりと入試に出る作家の6月発売の作品。 難易度は3~4年でも十分いけそうだよ。 この先生ってば、いつも思うんだけどよ、 中学年の子に心情の揺れを伝えるのって 言葉選びからして半端でなく難しいけど 今作でも見事にやってくれてるんだわ~。 特に子ど…

アクシデントが最高すぎる『カーテンコールはきみと』(神戸 遥真)

まったくちがう役をやれば自分を変えられると思っていた。でも実際はそんな簡単じゃない。(本文より) 出題はまれだけど注目してる作家による 今週のなかばに書店で並び始める新作だ。 意外な組み合わせの二人が困難を越えて 崖っぷち演劇部に新しい風を送…

【2024年入試版】国語出典予想ランキング(2022年9月~2023年8月発売)

過疎自慢のサイトからひっそりお知らせ。 作品の優劣ではなく出題者が選びそうか。 この点のみで順位付けしたリストが以下。 全てここでレビューを書いた作品たちだ。 表の説明はちょっと真面目に書いてみる。 出典予想ベスト100(1~50位) 私の勘で選んだ…

画期的な中学受験小説『小さな挑戦者たち』(騎月 孝弘)

4人の中学受験生に寄り添うストーリー。 この子たちが、みんないい子なんですわ。 読めば応援せずにいられなくなるほどに。 主人公もがんばり屋さんで共感できるし。 中学受験の心構えを伝えることを主眼に 描かれた小説って点では素晴らしいな~。 使えそ…

ラストがそそる、技アリ素材『後ろの席の菊池さん』(名取 佐和子)

有力作家によるちょうどいい長さの話が いくつも詰まっている季刊『飛ぶ教室』。 ここからの出題が割とあるのは有名だな。 今回は71号から74号が検討対象だよ。 発売時期は昨年の10月から今年の7月。 特に素材文適性が高そうだったのがコレ。 短編の…

どえらいコラボ効果『川滝少年のスケッチブック』(小手鞠 るい)

九十代のおじいちゃんはぼくの隣に座っているのに、スケッチブックのなかでは、十二歳の少年が受験に挑んでいる。(本文より) 著者の祖父が描いたスケッチを元にして、 戦時中の生活をリアルに伝える異色作だ。 絵だけでも小説だけでもできないことが コラ…

今週発売の中学受験小説の話題など

今週『小さな挑戦者たち』が発売される。 4日か6日のどちらかに出るっぽいけど アマゾンが6日としてるんで、書店には 前日の5日には並ぶんじゃねーのかな? ま、手に入ったら早めにレビュー予定だ。 予定といえば、今月は中旬に出典予想の 2024年版…

さびれゆく町で『夏に、ネコをさがして』(西田 俊也)

思い出は自分を守ってくれる大切な友達みたいなもの。(本文より) 老人の多い町に来た少年の夏休みを描く まれに出題される作家の5月の新作だわ。 そのまんまタイトル通りの話ではあるが ネコ好きにはたまらない一冊だと思うよ。 戦時中に犬猫だけでなく学…

巡り合わせの妙『月の立つ林で』(青山 美智子)

これまでにも何度か言ってきたことだが 売れてる短編集の子どもが主人公の話は 大人向け作品でも入試でよく選ばれるよ。 寺地はるな先生のコレなんかもそうだな。 さて、昨年11月に出た今回紹介の本は 本屋大賞5位だからばっちり当てはまる。 特に『ウミ…

人生の幅を広げてくれる『アンドロメダの涙 久閑野高校天文部の、秋と冬』(天川 栄人)

百人のいいね!よりたった一人の、なんてことない一言が嬉しい。(本文より) 界隈では新顔だが文学賞の受賞もあって いま勢いのある作家の9月の新作ですわ。 好評だった前作の続編が今回の紹介本だ。 序盤で前作のおさらいがあるから最初に この本を手にし…

いつも心にコンパスを『波あとが白く輝いている』(蒼沼 洋人)

講談社児童文学新人賞の佳作入選作だわ。 最近のこの賞は、今年の大賞もそうだが プロ作家が別名義で応募してる例が多い。 ゆえに最終選考にはプロがゴロゴロいる。 だから佳作でもハードルがもの凄く高い。 しかも本作は改稿で弱点を修正していて 生まれ変…

あふれ出る本への愛『5分で本を語れ : チームでビブリオバトル!』(赤羽 じゅんこ)

自分の好きな本について、たくさんの人に聞いてもらいたい。(本文より) 話し下手な少年が友人たちの助けなどで みるみる変わっていく爽やかストーリー。 稀に出題される作家の来週発売の新作だ。 小4あたりから読めそうな感じなんだが 中高生にとっても得…

どこまでも癒される『ロールキャベツ』(森沢 明夫)

いまは、立ち止まってもええ時なんとちゃうん?(本文より) まれに出題される作家の5月の新作だわ。 出題者がこの本に気づくかは微妙だけど 学生の会話パートが多く結構使い易そう。 見晴らしの良い場所に椅子をセットして ゆるい時間を満喫する遊びが題材…

思いやりの心をはぐくむ『ひと箱本屋とひみつの友だち』(赤羽 じゅんこ)

友情と同情のさかいはどこにあるんだろう。(本文より) まれに出題される作家の6月の新作だわ。 タイトルだけじゃ全然わからないんだが、 読んでみたら予想外に深いテーマだった。 道徳的要素が多めなんだが読みやすくて 説教臭くもないから楽しみながら学…

大切な人をなくさないために『最高のともだち』(草野 たき)

人って、わからない。なんの問題もなさそうに見えても、本当は深刻な問題を抱えているのかもしれない。(本文より) たまに入試に出る作家の先月の新作だよ。 自力で受験勉強を強制させられる少年と 寂しすぎる境遇の少女が主人公の作品だ。 ひとの気持ちを…

出題されるかもしれない新刊本(2023年10月前後)

10月も注目の作品がザクザクな印象だ。 追加で判明したらこの記事に加えてくよ。 9/21発売 『リカバリー・カバヒコ』(青山 美智子) 夢のある都市伝説にすがる人びとを描く。 9/29発売 『はじまりは一冊の本! 』(濱野 京子) 手作り本との出会いが変える…

愉快、痛快『いじめにパンチ! あたしの小学校ライフ最後の戦い』(黒野 伸一)

出題実績が無さそうな著者の今週の新作。 高学年の読書によさそうな作品だったわ。 主人公が親の権力を笠に着た嫌な男子に 知恵を絞り立ち向かっていくストーリー。 負の連鎖を止めるにはどうすればいいか。 含蓄ありまくりなおばあちゃんの言葉に ぜひとも…

中受小説『中受離婚 夫婦を襲う中学受験クライシス』の話題など

セミフィクションで家庭の危機を描いた という新刊の情報がアマゾンで出てるな。 著者は『勇者たちの中学受験』の先生だ。 前作と同様に実話をもとにして描いてる。 公式によれば以下のような紹介文ですわ。 中学受験は「夫婦」の受験だ! 首都圏の受験率は過…