中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

夏の終わりはスリリング『変身ー消えた少女と昆虫標本ー』(佐藤 いつ子)

今は幸せやけど。あのときのこと、後悔してんねん。あのとき、もっとやれることがあったのになぁって。だから、自分の子どもらには・・・・・・。(本文より) 頻出作家の6月の新作だがタイトル通り 不思議要素やミステリ色が強めに出てる。 ただし、驚かせ…

出題されるかもしれない新刊本(2024年8月前後)

来春の入試を一つの区切りと捉えた場合、 今期の作問選書シーズンもそろそろ終幕。 殆どの作問者は8月までに選書を終える ゆえに後に行くほど採用率は下がってく。 8月は7~9日に新作がドカドカ来るな。 いつも言ってるが、以下は大部分が未読。 出題向…

人生、凪いでる場合じゃない!『もしもわたしがあの子なら』(こと さわみ)

発売即重版となったって触れ込みの新作。 ポプラズッコケ文学新人賞大賞受賞作だ。 ざっくりとワンフレーズで言っちまうと 普通女子が全然違うキャラの少女2人と 入れかわる体験を通して気づきを得る話。 なりたい相手になるって夢があるよな? ま、楽しい…

これも中学受験小説『息が詰まるようなこの場所で』(外山 薫)

子供に残せる資産を持たないサラリーマン家庭の場合、学歴だけが頼りとなるため、小学校低学年から塾に通わせることが常態化している。(本文より) 中学入試の出題候補作品としてではなく 中学受験小説としてすすめたい一冊だよ。 タワマン文学とかカテゴラ…

その強さの源は『明日、晴れますように 続七夜物語』(川上 弘美)

そりゃね。簡単にイジメをやめさせることができるくらいなら、最初からイジメは受けないよね。(本文より) 芥川賞選考委員を務めるような大御所で 中学入試ではあまり見ない先生の新作だ。 成長過程の真っただなかで葛藤しまくる 小学四年生の少年と少女の…

人知れぬ葛藤と涙『わたしは食べるのが下手』(天川 栄人)

友だちに人の悪口を言って欲しくないと 感じる少女の人間性が刺さりましたわ~。 児童ペン賞、日本児童文学者協会賞など この1年ほどで様々な賞の受賞歴がある 天川栄人先生の6月発売の新作2冊目だ。 この先生はここ数年で入試に出るように なってきてい…

読みやすさが際立つ『すきなあの人』(神戸遥真, 令丈ヒロ子, 少年アヤ, こまつあやこ)

わたしたちはいつだって、“みんな”の輪からはみでないように、気をつけているはずなのに。(本文より) 有力作家4人が好きをテーマに競作した 君色パレットシリーズのなかの一冊だよ。 2期の3作品の中では最も読みやすそう。 面白さって点では令丈先生の…

謎めく舞台の真相は?『六月のぶりぶりぎっちょう』(万城目 学)

『八月の御所グラウンド』が頻出だった 万城目学先生の6月に発売された続編だ。 前作は1月の直木賞受賞効果が残るので 引続き要チェックということになりそう。 今作は不思議&ミステリ色が濃いぃので 素材文適性っていう面での注目度は低め。 ただ、登場…

大人が教えてくれないこと『あるいは誰かのユーウツ』(天川 栄人)

思いがけないドラマがとびっきり楽しい 天川先生の先月発売されたばかりの新作。 物語の舞台は共学の公立中高一貫校だよ。 題材はよくある物からそうでない物まで 実に多彩でしかも考えさせられるんだわ。 コンプレックスの闇に囚われる子供達に あるがまま…

最頻出作家に会える!

子どもにとって読んだことのある作品の 作家に会うのって特別な体験になるな~。 うちの娘は去年いとうみく先生に会って ますます作品の世界にのめりこんでたよ。 サイン本は嬉々として学校に持ってって とびきり仲良しの子に貸したりもしてた。 すると、お…

先入観をぶっ飛ばせ『いつか、あの博物館で。: アンドロイドと不気味の谷』(朝比奈 あすか)

人間みたいに行動して人間みたいに会話できるようになったら、そのアンドロイドは人間と何が違うというのだろう。(本文より) 人間に似せるよう作ったモノの好感度は リアルなほど上がるんだが、ある水準を 越えると不気味って声が増えるんだって。 その境…

仰天、ミラクル小学校『6年2組なぞめいて』(吉野 万理子)

別に好きじゃないことでもいっしょうけんめいやると、本当にすきなものが見えてくるのかもしれないな。(本文より) 短編小学校シリーズの先月発売の新刊は、 タイトルから連想できるように奇想天外。 現実の壁を軽々と蹴破る愉快な15短編。 それでいて学…

軽妙テイスト、ほんのり甘い『ひみつの相関図ノート』(望月麻衣, 如月かずさ, 神戸遥真ほか)

読者を驚かせる楽しい罠が盛り込まれた 8人の児童文学の旗手による競作短編集。 トコトン子供の感性に寄り添う作風だし 胸の高鳴る作品との出逢いになるだろう。 不思議要素やびっくり要素が濃いぃから 問題文にはあまり向かないかもしれない。 とはいえ、…

わかり合えることの祝福『girls』(濱野 京子)

自分のことをわかってほしいとか、相手をわかりたいとか、そういうのは必要ないと思ってきた。(本文より) わりと入試に出る作家の6月の新作だよ。 苦悩を抱え込んだ3人の少女たちの絆が お互いを知ることで深まっていく筋書き。 彼女達が前を向き困難に…

新米部長のステップアップ『凜として弓を引く 初陣篇』(碧野 圭)

知ってる?弓道は高校から始めても全国に行ける、数少ない運動部なんだぜ。(本文より) 弓道モノは中学入試より高校入試の方で 出題されてるのを見るような気がするな。 今回紹介するのはシリーズ三作目だけど 前の作品は都立西高の入試で使われてた。 高校…