中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2025-01-01から1年間の記事一覧

出題されるかもしれない新刊本(2025年11月前後)

11月は2027年入試向け暫定首位の 作品を含め盛りだくさんのラインナップ。 寒い冬をぽかぽか温かくする本が続々だ。 寺地先生の新作はかな~り強そうな予感。 中受未注目作家では日野先生が期待度大。 ま、以下のリストは殆どが未読なゆえに 出題向き…

痛いほどの向かい風でも『ツバメの親子はどこにいる』(樫崎 茜)

小六の夏休みの塾通いの目的といえば、ひとつ。中学受験をするためだ。(本文より) 名作『手で見るぼくの世界は』の著者が 描いた差別を考えるきっかけになる一冊。 『手で見る~』は今年少なくとも三校で 出題されていてテーマも近いものがある。 本作は視…

実り多き日々『ナビエ・ストークス方程式と僕らの最終定理』(コ・ジョンウク)

いいかい、みんな?まだはっきりとしないような小さな夢だって、口に出して言うことで、途端に現実味を帯びてくるんだよ。(本文より) 韓国の人気作家が学ぶ楽しさを描いた本。 とことん運命にいじめられる中学男子が 大人たちの大変さを身に染みて味わって…

他者理解って難しい『そういえば最近』(寺地 はるな)

本が連れて行ってくれる世界は無限に広く、神秘に満ちている。(本文より) 2020年に発売された『水を縫う』や 『タイムマシンに乗れないぼくたち』で 一躍注目を集めた作家の3月に出た作品。 ちょっとしたミステリっぽい空気がある。 同時期にデビュー…

世界の現実を直視せよ『スラムに水は流れない』(ヴァルシャ・バジャージ)

やっぱり、わたしの将来はわたしの手のなかにはない。(本文より) 2025年の読書感想文全国コンクール 中学生の部で課題図書だった海外作品だ。 インドのスラムに住む少女の物語だけど 子供たちの目を覚まさせる要素が満載で さすがの選書だと唸らされち…

夢へと駆ける『天馬の子』(高瀬 乃一)

みんな、自分が生きる場所よりも、暖かい場所があることを知らないのだ。(本文より) 貧しい家で暮らす少女の成長物語ですわ。 そんな仕事もできないと嫁にいけないと 毎日言われる12歳とか想像できるか? これを裁縫下手な主人公がやられんのよ。 まぁ、…

困難を越え、並び立て!『ぼくのシェフ』(長谷川 まりる)

毎週公園へやって来て、パンとスープを配るのは簡単だ。でも、それで何か解決するんでしょうか?(本文より) 児童文学の世界で脚光を浴びる先生の本。 この著者はSFの作り込みが超得意だよ。 本作は飲食店経営に携わる未熟な少年が 周囲の助けを借りなが…

境内の白熱教室『おれたちはギロンする』(安田 夏菜)

おれ史上、最強のボスキャラに出会ってしまった気がする。(本文より) 灘中入試で使われた名作『むこう岸』が 今年の都市大等々力中でも採用されてた 安田夏菜先生の来月中旬に発売される本。 タイトル通り議論がテーマの柱なんだが 言葉を武器に相手をKO…

先生にしか描けない『春の星を一緒に』(藤岡 陽子)

いまは自分にある力をすべてかき集め、あの子の夢を応援したい。(本文より) 入試頻出作家の先月発売された作品だよ。 医療小説、家族小説、受験小説などなど 多彩な側面をもった充実の一冊なんだな。 精一杯生きる母子の姿が胸を打ちまくる もの凄いドラマ…

種は蒔かれた『海は忘れない』(村上 しいこ)

僕がみんなに感じてほしいのは、戦争の更に向こう側に横たわっている恐ろしいものです。(本文より) たまに入試で見る作家の7月に出た作品。 67年前にタイムスリップした高校生が 反戦に目覚めていくってストーリーだよ。 まぁ、設定からして変わってる…

笑顔を咲かせる『花に風』(吉野 万理子)

そうだよ。華道って芸術なんだよ。(本文より) たまに入試に見る作家の来月発売の新作。 小4女子の日常を丁寧に描いた作品だよ。 これは華道への関心の入り口になる上に ハラスメントのイロハも学べる凄い本だ。 周囲の人々の抱える事情が互いの関係に 思…

私を超える勇気『まっしょうめん! 心をのこす』(あさだ りん)

このシリーズはたまに入試でも見かける。 あと10日ほどで書店に並ぶことになる 剣道物語『まっしょうめん』の5作目だ。 今回は仲間達との最後の試合が描かれる。 不思議なことに、俺、剣道経験ないのに 試合の打ち合いやぶつかり合いの場面が 息遣いまで…

巧みに狙ったライト感『わたしのbe 書くたび、生まれる』(佐藤 いつ子)

でも、自分の気持ちは、どんなに押し込めても抑え込んでも、勝手にあふれ出してくる。自分の思い通りにはならない。(本文より) 中学受験の女王の9月に出た最新作だよ。 ルッキズムについて考えさせられる話だ。 主人公は中高一貫校の内部進学の高1で 中…

湧き上がる万感を込め『春の雨にぬれて、獅子はおどる』(岳 明秀)

東京の子には、理解できないことなんやな。(本文より) 1ヶ月後に発売される2027年入試で 有力候補になると思われる新作をご紹介。 もう何年も連続して中学入試で出ている ちゅうでん児童文学賞大賞受賞作品だが 無論推すのは文学賞だけが理由じゃない…

【2026年入試版】国語出典予想ランキング(2024年9月~2025年8月発売)

相変わらず閑古鳥が鳴きまくるブログが 今年も懲りずにランキングを作成したよ。 作品の優劣ではなく出題者が選びそうか。 この点のみで順位付けしたリストが以下。 全てここでレビューを書いた作品たちだ。 表の説明は少し腰を据えて書いてみたわ。 出典予…

責任と呵責のはざまで『君の火がゆらめいている』(落合 由佳)

みんなとわたしのあいだには、透明で厚い壁がある。(本文より) 2025年の中学入試で『要の台所』が 少なくとも4校で出てる落合由佳先生の 来月終わり頃に発売される注目作品だよ。 家庭の事情が理由で普通に生きられない 主人公のやるせなさが響きまく…

彼女の真っ当な生き方『マッドのイカれた青春』(実石 沙枝子)

お金か偏差値。どちらかでいい、この手にほしい。ここから逃げ出したい。(本文より) 受験界で注目を集めはじめている作家の 9月に発売されたパワフルな新作ですわ。 なにしろタイトルからしてヤバいもんな。 中身にはさらに衝撃が詰まりまくってる。 外見…

想定外を超えてゆけ『龍の守る町』(砥上 裕將)

救急車がけたたましい音を鳴らしながら走りだし、回転灯は闇を切り裂くようにあたりを赤く染め上げていく。(本文より、緊迫の出動シーン) 『線は、僕を描く』シリーズが入試でも 人気の砥上先生の1ヶ月後に出る本だよ。 警官や自衛官と違い命を救うためだ…

創造的な人生を『パッチーズ: ぼくらがつなぐ小さな世界』(佐藤 まどか)

人をからかってなにがおもしろいんだろう。人を下に見ていないと、足元がぐらつくのか。(本文より) 名作『一〇五度』が何度も入試に出てる 佐藤まどか先生の先月の作品の一つだよ。 この先生は秋から冬にかけて少なくとも 4冊の作品を送り出すことがわか…

魂が高鳴る絆『花咲く街の少女たち』(青波 杏)

大人はいつもそう。できない理由を考えるのは得意なのに、やりたいって思いを叶えるために頭をまったく使わないのね。いいわ、見てらっしゃい。(本文より) 8月に発売された興味深い作品になるよ。 経歴を偽りながら女学校に通う主人公が 運命の奔流に飛び…

瞬きせずに焼き付けろ『ブレイクショットの軌跡』(逢坂 冬馬)

いいかい、個人がなすべきことは常に一つ。再現性の高い努力だ。将来の目標で考えるなら、それは勉強だよ。(本文より) 本屋大賞作『同志少女よ、敵を撃て』で 脚光を浴びた逢坂先生の3月に出た作品。 いや~、これメチャメチャ面白いですわ。 しかも壮大…

泣きたくなるほど美麗『美しくない青春』(小手鞠 るい)

子どもたちはことごとく、時間を奪われ、可能性を奪われ、希望も将来も奪われていた。(本文より) 凄い速さで作品を世に送り続ける作家の 8月に発売された反戦ストーリーですわ。 故・茨木のり子先生をモデルに創られた 文学少女の10代が真っ黒に染まる…

出題されるかもしれない新刊本(2025年10月前後)

秋から冬にかけてはまさに大豊作だよ~。 10月は高田先生のスポーツ物がよさげ。 舟崎先生の新作にもかな~り期待してる。 他にも注目作品がありすぎて鼻血出そう。 以下の新作リストは殆どが未読なもんで 問題向きじゃない物もたぶん含まれてる。 10/2発…

想像を軽々超えた未来像『恋の収穫期』(最果 タヒ)

まさか、あれ・・・・・・全員、彼女なの?(本文より) 全編に漫画的な世界観が浸透してる作品。 表紙に素材感があると思い手にした本だ。 一言でいえば高校生の恋愛を描くSF物。 前衛芸術のように好みが分かれそうかな。 正直、素材文適性はほとんど感じ…

歴史のうねり、鮮やかに『普天を我が手に 第一部』(奥田 英朗)

子供だけは巻き込むな。何の罪もないんだぞ。(本文より) ひときわ鮮烈な人々が昭和を駆け抜ける 最近第二部が発売されたばかりの大長編。 右翼の最右翼や極左のど真ん中、大陸で 活躍する興行師らの視点で時代の荒波が マクロ・ミクロの両面から描かれてい…

孤独への処方箋『ネバーランドの向こう側』(佐原 ひかり)

自分で自分にダメだと思うのはまだいいけれど、誰かに思わされるのは、本当にしんどい。(本文より) 最っ高の盛り上がりで楽しませてくれた 『スターゲイザー』著者の6月に出た本。 性格的にも生活面でも一人立ちが難しい 主人公が急な出来事で窮地に立た…

母たちを呑む中受の荒波『トロフィーキッズ』(尾崎 英子)

中学受験って残酷よね、親の未熟さまでもが炙り出されるんだから。(本文より) 中学受験が題材の『きみの鐘が鳴る』で 一躍注目を集めた著者が描く、今まさに 連載の佳境を迎えている中受小説ですわ。 今作は3人の母たちの視点で描かれるよ。 新小5あたり…

感受性を豊かにする『真昼にも星が光ると知ったのは』(梨屋 アリエ)

あのう、障害のある人は、障害のない人とは対等の友だちにはなれないと思いますか?(本文より) 今日は来月20日発売の作品を紹介する。 人間関係の困り感を抱える中学二年生の 世界が思わぬ流れで広がっていく話だよ。 視覚や聴覚の障害、それと発達系ネ…

自然体の親しみやすさ『短編小学校neo うちのクラスに天才子役』(吉野 万理子)

同じ六年生なのに、別世界から来た人みたいだ。(本文より) たまに入試で見る作家の出たばかりの本。 タイトル通り学校に芸能人が来ることで 巻き起こるちょっとしたドタバタの中で 子どもたちが解り合い、成長していくよ。 基本、クラスには心優しい子が多…

黒い雨と白い灰、その過ちに終止符を『翠雨の人』(伊与原 新)

先のことはわからないけれど、わたし、純粋に科学の勉強に打ち込んでみたい。勉強したことは、きっと社会の役に立ててみせます。(本文より) 科学のチカラを見直すきっかけになる本。 地学小説で知られる伊与原先生の新作だ。 女性研究者の先駆的な存在に光…