中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2026-01-01から1年間の記事一覧

想定外だっ!『フェンシング部の王子さま』(石川 宏千花)

たぶん、全力でなにかをやるってことを、おれはしてみたかったんだと思う。(本文より) フェンシング部にかっこいい先輩がいて 思わず入部して青春する話だと思った? ところがどっこいそう単純じゃないのよ。 意外性の塊のようなストーリーが楽しい 昨年1…

運命の鎖とともに『レテの汀』(雛倉 さりえ)

もしかしたら自分は、訊いてはならないことを訊いてしまったのかもしれない。そう思うと怖くなり、余計に言葉が止まらなくなった。(本文より) 来週木曜日に出る静謐さを湛えた小説だ。 早逝した天才画家の母に囚われる青年の 後ろ向きすぎる感情の変化が刺…

彼方へのメッセージ『ここにいるよ』(真山 仁)

普段、考えたこともない、生と死が、突然切実に身に迫る。(本文より) 能登の大災害を教育現場視点で描いた本。 東日本大震災の際に応援教師をした男が 能登半島地震で混乱した学校を立て直す。 一言でいえばこんなストーリーになるよ。 「臆病は最強!」や…

さらば閉塞感『教室のハルモニア』(辻 みゆき)

四方を取り囲まれた、このスペース。ここに押し込められると、知らず知らずのうちに、スクールカーストのどこかに振り分けられてしまう。(本文より) シリーズ物に熱狂的ファンが少なくない 辻みゆき先生の12月に出たYA作品だ。 近未来のありふれた中学…

幸せってなんだろう『ぬすびと』(寺地 はるな)

「どうしても気持ちが明るくならない時、あなたはどうしてるの?」(本文より) 入試でおなじみの著者の来月の新刊だよ。 今作は45歳女性視点のストーリーだが 25歳パートもかなりの部分を占めてる。 生活にも汲々としてる主人公の存在感が 物語が進むに…

台風少女、見参!『わたしはシュシュ やりたいことしか、やっちゃだめ』(黒川 裕子)

この世には競争や順位なんて蹴っとばしてしまう人間がいる。(本文より) 本好きじゃない子にも推せる一冊だわ~。 コレ読み始めたら少しも止まれないだろ。 型にはまらないどころか全部ぶっこわす 誰よりも気ままな少女が闊歩する物語だ。 そのパワーはもは…

ミッションは総力で『うちのクラスに日本代表』(吉野 万理子)

最初って、楽しいのがいちばん大事だろ?(本文より) ラストが近づくほどにワクワクが高まる あと半月ほどで発売予定のアンソロジー。 短編小学校は作品ごとに話が独立してて どの巻から読んでもまったく問題はない。 前作が慶應中等部で使われたばかりだし…

未来を支えてくれるお守り『中学へ旅立つ君へ:13歳からの一番大切なこと』(おおた としまさ)

試行錯誤って時間がかかるけど、決して無駄じゃありません。むしろ自分で試行錯誤したものしか本当の意味では身につかないから。(本文より) あと5日ほどで発売される人生応援作品。 これって中学入試がひと段落つく時期に 狙いすましたように合わせてきた…

戦慄の扉『彼女たちは楽園で遊ぶ』(町田 そのこ)

たった数日で、町の雰囲気は様変わりしてしまった。(本文より) さ~て、あと9時間ほどで東京入試だな。 それぞれの健闘を陰ながら祈っているよ。 本作は町田その子先生の10月の作品だ。 びっくりするような新境地になっている。 メッセージ性って点では…

抑えきれないリスペクト『花売り姫』(長谷川 まりる)

本当は自分だって弱いのに、母は決してそれを見せまいとする。(本文より) 児童文学の精鋭が一般文芸書に殴り込み。 『この世は生きる価値がある』の著者が 別の角度から命の尊さを訴えた名作だよ。 16歳少女が日常をかなぐり捨てた末に とんでもない非日…

想像力の宴『30の短編小説』(小説トリッパー編集部)

「中受ガチ勢をなめないでください」(『世界を救ったことがある』の本文より) 文芸誌の30周年企画アンソロジーだよ。 多様性の塊の本作は有名作家が目白押し。 同じ課題からいかに違うものができるか みたいな観点でも楽しめると思うんだな。 ビミョーに…

すべてを照らすあかり『成瀬は都を駆け抜ける』(宮島 未奈)

ほんと成瀬さんと一緒だと思いがけないことが起こるよね。(本文より) 12月に出た成瀬シリーズの最終巻だよ。 成瀬の強烈な個性にあてられた人びとが 影響を受けまくるというお約束の展開に いかにも終幕らしいエピソードが加わる。 京大生らの新たな変人…

出題されるかもしれない新刊本(2026年2月前後)

2月は後半の新刊ラッシュがもの凄いな。 既読本では面白さも素材文適性も際立つ 蒼沼先生の作品に注目したいところだよ。 吉野先生の新作はシリーズ最強な印象で、 山本先生の心地よい不思議もありがたし。 毎度言うように以下の作品群はほぼ未読。 出題向…

夢にひた走る令嬢『つないだ手 沢田美喜物語』(植松 三十里)

俺、よく覚えてるんだ。捨てられた瞬間。雨の夜、傘をさす人が行き交う中で、母親が急に俺の手を振りほどいて、走り去ったんだ。(本文より) 昨年、桜蔭入試への採用で注目を集めた 植松三十里先生の9月に発売された作品。 今回の本は大きな志を持った女性…

それはオトナの恋の味『宙色のハレルヤ』(窪 美澄)

萎んだ紙風船のようだった私の生活が丸く膨らみ始めた。(本文より) 道ならぬ恋や愛する怖さなども描かれた 小学生にはちょと早そうな恋愛短編集だ。 バラエティに富んだストーリーなんだが 『風は西から』は子どもでもOKな印象。 運命論者の少年が激しい…

素敵なぬくもりに満ちた『万丸食堂、奇跡のソフトクリーム』(山本 悦子)

安全な高台にたどり着いて、海岸を見下ろしたときのことは、一生忘れないとサキは思う。(本文より) 2月下旬に発売される予定の連作短編集。 これは心をじんわりと温めてくれたわ~。 ほどよく不思議な要素が絡められていて 現実感から遊離しない味付けに…

よくぞ書いてくれた!『チーム・テスならだいじょうぶ』(カービー・ラーソン&クイン・ワイアット)

「友だちのためなら、なんだってするよ」わたしはいった。心の底から本気で。(本文より) さぴあ1月号のブックスコーナー推奨作。 このサピックスの塾内情報誌の選書って 毎度唸らされるから俺もチェックしてる。 本作は胃腸のせいでトイレが近い少女の 苦…

世界を知り、己を知る『バロアチー! 風香のバングラデシュ』(茂木 ちあき)

学校に行けない子どもは、世界に一億人以上いる。(本文より) 昨年9月に発売された視野が広がる作品。 学ぶことの大切さが沁みる一冊だったな。 世界に横たわる圧倒的格差を物語の力で 自分と地続きの現実と感じられるだろう。 誰にでも平等にあるはずの時…

いのちに寄り添うあゆみ『花丸先生、ありがとう』(本田 有明)

花丸先生はすごい!先生も神様だ。ぼくは本気でそう思った。(本文より) 多数登場する谷川俊太郎の名作詩たちが 物語を輝かせる本田有明先生の作品だよ。 個性派の友人二人といつも一緒の少年が 小児科医の先生と交流を深めていくよ~。 年齢の壁を超える温…

響け!魂の調べ『パルティータを鳴らすまで』(せやま 南天)

無理だろう。僕らに私立の中学なんて。選ぶ権利、ないんだよ。(本文序盤より、里子仲間との対話) 中学入試では手垢がついていなさそうな 著者の11月に出た本だが、これは強い。 昨日紹介した本は養子縁組里親の話だが 今回の紹介本は養育里親のストーリ…

心にしまい込んだもの『SSRチルドレン』(百舌 涼一)

「―――おかあかさんもすごいよ。」いつだってそう返してあげたいのに、結局このセリフを口にしたことはなかった。(本文より) わりと入試に出ていた著作がある先生の 昨年11月に発売された児童書になるよ。 本心を内に秘めるタイプの中学一年生が 二人の仲…

ふんわりした癒し『カフェ・スノードーム』(石井 睦美)

そこの店主はちょっと変わっているらしい。でも、そのひとに会うと幸運がもたらされるんだって。(本文より) ちょっとしたSFの遊び心にぐっとくる 2024年12月に発売された作品だわ。 舞台はカフェではない一風変わった場所。 大きな店主が子どもを…

しっとり和歌に親しめる『今を春べと』(奥田 亜希子)

「・・・母親になった人の趣味は家族の得になるか、負担にならないものじゃないと許されないの?」(本文より) 昨年10月に出た大人向けの優良図書だ。 アラフォー主婦が趣味にのめり込む物語、 な~んて一言では片づけられない葛藤が 丁寧に描きこまれて…

不穏さが胸に沁みわたる『へび』(坂崎 かおる)

そのころの那津はまだ人形ではなく、生きて、動き、料理をつくり、洗濯物をたたみ、皿洗いをしていた。(本文より) いまの自分を大切に、と訴えかけてくる 直近の芥川賞候補作の一つで未刊行作品。 今回は文芸誌を取り寄せて読んでみたよ。 人ならざる何か…

謎めく心を解き明かす『双子のピアノ』(倉本 由布)

なにか変なことが起きているよな?あれ、夢じゃないよな?(本文より) かつて作られていたという二重奏専用の ピアノと双子の兄妹をめぐるストーリー。 9月に発売されたSF要素のある作品だ。 葛藤のあまり自分を見失ってた五年生が 自分の生き方を見出し…

紹介作品からの出題(2026年度中学入試の国語出典・随時更新)

ほぼ訪問者がいないここで紹介した本が どの程度入試に出てるか今年も見ていく。 俺なんかでは一部しか拾えないんだけど、 現時点で判明しているものは以下の通り。 全て俺が読んでレビューを書いた作品だ。 『オリオンは静かに詠う』(村崎 なぎこ) 渋谷教…

思考の幅を広げてくれる『図書だよりとひみつのノート』(赤羽 じゅんこ)

うーん。話したって、陶子にはわかんないよ。なんでもおかあさんにやってもらえるんだから。(本文より) これは超のつく優良作品だと感じたな~。 親友と交換日記をしている小6の女子が すれ違いを経て視野を一段と広げていく。 一言でいうならこんなスト…

困難をサラリとあしらう『黒ばら先生と秘密のはらっぱ』(木地 雅映子)

ほんとうに、その先生のいでたちは、一般的な保育園の先生とは、かけ離れていた。(本文より) まるで幼年童話のようなタイトルだけど 3・4年生あたりでは歯が立たない作品。 しかもファンタジーとも一味ちがうんだ。 辛い生い立ちの彼女が真っ暗闇のよう…

どこまでも跳べる星『ぼくがぼくであるために』(蒼沼 洋人)

誰かに助けを求めること。それが、どれだけ勇気が必要か、ぼくはよく知っていた。(本文より) あと5週間ほどで発売される超ド級作品。 先生の前作は3校以上の入試で出ている。 主人公はマッチョ志向のかわいい系男子。 コミカルなほど男らしさにこだわる…

想像力の結晶『新しい法律ができた』(講談社・編)

法律は、人の命や尊厳を守るためにあるんだと思っていました。(本文より) 新しい法律ができたという一文で始まる 25人の作家による楽しい競作短編集だ。 発売時期はちょっと前で2025年5月。 多士済々ゆえにジャンルは何でもありだ。 面白いんだけど…