中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2026-01-01から1年間の記事一覧

癒えるか、心の致命傷『蜃気楼と恋人たち』(水庭 れん)

光と風と海と、たくさんの条件が重なって、その瞬間にだけ見ることのできる、自然が描いた印象派絵画みたいなものなんです。(本文の蜃気楼を説明するパートより) 森先生もマンガのハンターXハンターが 好き過ぎるって物語から伝わってきたが 水庭先生もガ…

冷めない熱にあてられて『たぶん、恋しい』(一穂 ミチ)

始まりたての人生に用意されていたたくさんの扉は、いつしかぱたんぱたんと閉じられていく。(本文より) たまに中学入試で見かける直木賞作家の 来月中旬ごろに発売されるアンソロジー。 主人公は年代も性別も心模様も実に多彩。 どこかに自分や近しい人の…

きらめく青春の結晶『ぼくには笑いがわからない』(上村 裕香)

なんでそういうときだけ前向きなんだよ。女子の前ではヘタレなくせに。(本文より) 今年の海城で使われていた作品の著者が 12月に出した京都を舞台にした物語だ。 京大らしき国立大学のクソ真面目学生が 対極にありそうなお笑いにはまっていく。 簡単にい…

ひらけ!恋の扉『見た目で好きになるってダメですか?』(神戸 遥真)

興味ある人は聞いてください、時間は取らせます!(本文より) 精力的に作品を出し続けてる神戸先生が この作品で描いたのは受験生たちの恋愛。 こまやかでグッとくる心理描写が凄いよ。 特に女子の感情のジェットコースターが グワングワンと揺さぶってくる…

それも私と赦せたら『ひまわり食堂の忘れ物』(西村 友里)

こんなこと、パパやママが知ったらどうするだろう。(本文より) 来月中旬に発売される新作を紹介するよ。 子どもの心の中で膨らむ相反する感情を 鮮度そのままに掬い取った物語だったわ。 主人公は自分自身の黒い部分に悩む少女。 人付き合いに消極的になっ…

ワクワク純度120%『ばんざい!ぼくらのフシギ島』(辻堂 ゆめ)

ここにいると、自分の不安がちっぽけな気がしてくるよ。(本文より) 一般文芸で活躍する先生が児童書初挑戦。 ミステリ図書室と銘打ったシリーズだが 全然怖くないところが俺は気に入ったな。 ワルぶってる少年が魅力あふれる環境で 仲間たちとともに成長す…

出題されるかもしれない新刊本(2026年5月前後)

5月も魅力的な作品の発売が続いてゆく。 佐藤先生の新作はもの凄い力のある物語。 柴野先生はやさしさを育むストーリーだ。 未読本は村上先生と柊先生が強力な予感。 ただし、毎度断ってるようにリストには 出題向きじゃない本も入っているだろう。 5/8発売…

ポジティブさの感染アラート『花屋さんが夢見ることには』(山本 幸久)

孤独が最良の友だと信じていた。(本文より) 複数の中学で入試に使われた作品の続編。 前作から2年あまり時間が経過した街で 主人公は店長から美大女子に切替えてる。 まさかの事態にショックを受けた彼女が バイトの日々で貴重な経験を重ねるよ~。 今作…

守るべき記憶『しずくと祈り 「人影の石」の真実』(朽木 祥)

夏の日がゆっくりと暮れ落ちるなか、基町スラム、別名「原爆スラム」が広がっているのが見えた。(本文より) 爆心地の近くでは人間が一瞬で蒸発して 影だけが残ったって聞いたことないか? 原爆被害を紐解いた経験があれば人影の 残された石の逸話を知って…

終わらせるなと物語は叫ぶ『君の不在の夜を歩く』(窪 美澄)

私は明日を生きていく力を本から吸収して成長してきたのだ。(本文より) 前作が少なくとも3校で出題されていた 窪美澄先生の先月発売された本のご紹介。 最初に断っとくがこれは小学生には禁書。 やばい描写は少ないが威力が空前レベル。 だったら紹介すん…

はじめて知る痛み『ぼくのいうことを、きかないぼく』(柴野 理奈子)

本人に言えないことは、カゲでも言うなよ。(本文より) あと三週間ほどで発売される予定の作品。 トゥレット症の少年を軸に広がる物語は 道徳面を強く意識した作りになっている。 読みはじめたら激しい葛藤の渦に捕まる。 そうなるともう抜け出せなくなるか…

スペクトラムな正邪『13人の魔女への扉』(長谷川 まりる)

「いい子」じゃない私は、「いい人」ばかりの村人たちの中で「おまえはふさわしくない」って、いつも言われているような気がしていた。(本文より) 受賞や映画化で勢いのある作家の真骨頂。 独特の捻りを加えた作風がメチャ素敵な 長谷川先生のもうすぐ発売…

音楽の力みせつける『明日、あたらしい歌をうたう』(角田 光代)

くすかにとってその人の歌は友だちだった。はげまし、笑わせ、かなしみを分かち合ってくれる友だちだった。(本文より) 旧作が入試によく出てる作家の新作で 音楽が彩る青春が爽やかなストーリー。 これは主人公のトンデモなやらかしに イラっとするかもだ…

この国のあゆみを知る『普天を我が手に 第三部』(奥田 英朗)

戦争って負けないと反省会はしないでしょう?(本文より) 昭和をユニークな視点で描き上げた一冊。 第一部から追ってきた大長編の最終巻だ。 文字通りに切った張ったがありまくるし チャンバラ劇の現代版みたいに超ド派手。 かといってふざけているわけじゃ…

誠実な人柄にじみでる『言問ラプソディ』(小野寺 史宜)

言葉は自分の脳、もしくは心から生まれなきゃダメ。(本文より) 世代を超えて続いてゆく街の魅力感じる たまに入試に出る作家の2月発売の作品。 舞台が大好きな浅草なので一層楽しめた。 知ってる名所がバンバンでてくるもんよ。 これで熱くならなきゃ嘘っ…

行間から溢れるぬくもり『つくろうひと』(村山 早紀)

あたしは親友のためなら、牙をむく女なのだ。(本文より) ありふれた日常の価値に気づかされる本。 たまに入試に出る作家の2月の作品だよ。 空想の話が現実の生き方を変えるような パワーを秘めた物語だと俺は感じたわ~。 自己肯定感がかな~り強かった女…

人生を変える出会い『世界の終わりが来るまえに』(アンナ・ウォルツ)

いったいどんな大人が、十一歳の子にスマホをわたすのを、いい考えだと思ったわけ?(本文より) ネットリテラシーをはぐくむストーリー。 事件で田舎に逃がされた13歳の少女と 田舎の不可思議な14歳の少年が出会い 驚きの事態に直面するっていう話です…

慈愛をまとう生き方『晴れの日の木馬たち』(原田 マハ)

学びなさい。あきらめずに学びなさい。あきらめるのは簡単です。だからこそ、簡単にあきらめないで。(本文より) 昨年12月に発売された凄い名作ですわ。 不遇な文学少女が思わぬ巡り合わせから 憧れてやまない職業への道に身を投じる。 ワンフレーズで言…

澄んだ心に近づける『青のナースシューズ』(藤岡 陽子)

楽に生きている人なんていない。なにかを望めば苦しいこともついてくるんだよ。(本文より) アタマん中が尊敬で塗りつぶされるうぅ。 今期頻出の『オリオンは静かに詠う』に 比肩する素晴らしさが詰まった感動作だ。 男子が看護師を目指すことでぶち当たる …

大正の街で平和を祈る『ユリの便箋』(森川 成美)

なんでも最初にやる人は、変に思われるんです。ばかだって言われるんです。(本文より) 入れ替わり物と聞いて思い浮かべるのと まるで違ったストーリーなんでビックリ。 ありがちな展開とは別物の楽しさがある。 しかも愚かな国家の闘争に巻き込まれる 市井…

出題されるかもしれない新刊本(2026年4月前後)

4月もよさげな作品が多くって血が滾る。 伊与原先生の新作はメッチャ素晴らしい。 福木先生も刺さりまくる内容だったよ~。 未読のも楽しみすぎるものが続々登場だ。 女子学院がらみの作品とかも面白そうだ。 ただし毎回言うように以下のリストには 出題向…

未来を守るために『はるを呼ぶ』(実石 沙枝子)

もしここで、自分が泣きだしたら、喚いたら、だれか助けてくれるだろうか。(本文より) 先月発売されたミステリ色のある作品だ。 主人公は名門大学の指定校推薦を狙って 実力以下の高校に進学するような女の子。 不安定極まりない母親の世話をしながら 孤軍…

異国情緒が心地よく薫る『リデルハウスの子どもたち』(佐原 ひかり)

知識は手足だ。世界に触れ、世界を歩き回るための。(本文より) 悪魔的に面白い著作なんかもある作家の 昨年秋に発売されて話題を呼んでいる本。 特殊能力を持った子どもたちを軸にして ミステリアスな学園の秘密に迫ってゆく。 選抜生たちの特権の使い方が…

魂を白球に込めて『キャッチボール』(松井 尚斗)

大切なことは、いつも、仲間が教えてくれた。(本文より) 熱く楽しい野球を描き上げたストーリー。 12月に出た人気ユーチューバーの本だ。 自信過剰な選手が挫折を乗り越えるため 思い切った変化を受け入れていくんだわ。 神様的待遇の監督や理不尽な上級…

夜の保育園でキラリ『まどろみの星たち』(菰野 江名)

先生、幸せなおうちで育ったでしょ。お勉強して保育士になったんでしょ。だからわかんないんだよ。(本文より) 今月発売された話題性に富んだ作品だよ。 保育士って仕事の尊さにマジ震えたわ~。 24時間預けられる新宿の保育園が舞台。 苦悩を抱える二十…

特別への第一歩『おやすみ、悩み糸』(久米 絵美里)

自信にあふれた母親ほど、おそろしいものはない。(本文より) 著者の嘘吹きシリーズは勉強になったわ。 疑わしい情報ほど拡散されやすいだとか マジでここんとこ実感させられているし。 さて、今日紹介するのは年末に出た本だ。 ほんのり不思議要素が混じっ…

世界の中心にコトコ『古都琴子は好きに生きるので、あしからず』(汐見 夏衛)

「その和訳、私がやっていいですか?反抗的な態度とっちゃったんで、挽回させてください。これで態度点プラマイゼロですよね?」(本文より) やりたいことしかやらない転校生女子が 我が道を闊歩しつつ周囲を巻き込む話だ。 好かれたり嫌われたりと忙しいそ…

トー横幻想をぶちのめす『少女と毒』(佐藤 まどか)

あんたさ、このままここにいると、人生終わるよぉ?(本文より) イタリア在住作家の2ヶ月後に出る本だ。 軽い気持ちで危険な場所に流れつく子を 物語の力で救いうる作品だと感じたわ~。 主人公はヤバ過ぎキラキラネームの中2。 父を亡くし母に邪魔者扱い…

だれもが語り部になれる『わたしが戦場にいる』(小手鞠 るい)

祈っているだけでは、平和は実現できません。(本文より) 凄い勢いで執筆されている小手鞠先生が 古今東西の戦争作品を紹介する企画だよ。 断片的な引用でも綺麗に繋ぐ解説があり 各作品の主旨がすんなりと沁み込むよ~。 この本のお陰で意外な作家さんが戦…

学びの神髄ここにあり!『コズミック・ガール 宙わたる教室』(伊与原 新)

あの男は、もう恩師じゃない。裏切り者だ。(本文より) 直木賞受賞などでいま勢いのある作家の 約1ヶ月後に発売される本を紹介するよ。 ドラマ化され話題を呼んだ前作はなんと 先月の東大の地学入試に使われたそうだ。 今作では例の科学部が廃部になってん…