中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2026-01-01から1年間の記事一覧

心にしまい込んだもの『SSRチルドレン』(百舌 涼一)

「―――おかあかさんもすごいよ。」いつだってそう返してあげたいのに、結局このセリフを口にしたことはなかった。(本文より) わりと入試に出ていた著作がある先生の 昨年11月に発売された児童書になるよ。 本心を内に秘めるタイプの中学一年生が 二人の仲…

ふんわりした癒し『カフェ・スノードーム』(石井 睦美)

そこの店主はちょっと変わっているらしい。でも、そのひとに会うと幸運がもたらされるんだって。(本文より) ちょっとしたSFの遊び心にぐっとくる 2024年12月に発売された作品だわ。 舞台はカフェではない一風変わった場所。 大きな店主が子どもを…

しっとり和歌に親しめる『今を春べと』(奥田 亜希子)

「・・・母親になった人の趣味は家族の得になるか、負担にならないものじゃないと許されないの?」(本文より) 昨年10月に出た大人向けの優良図書だ。 アラフォー主婦が趣味にのめり込む物語、 な~んて一言では片づけられない葛藤が 丁寧に描きこまれて…

不穏さが胸に沁みわたる『へび』(坂崎 かおる)

そのころの那津はまだ人形ではなく、生きて、動き、料理をつくり、洗濯物をたたみ、皿洗いをしていた。(本文より) いまの自分を大切に、と訴えかけてくる 直近の芥川賞候補作の一つで未刊行作品。 今回は文芸誌を取り寄せて読んでみたよ。 人ならざる何か…

謎めく心を解き明かす『双子のピアノ』(倉本 由布)

なにか変なことが起きているよな?あれ、夢じゃないよな?(本文より) かつて作られていたという二重奏専用の ピアノと双子の兄妹をめぐるストーリー。 9月に発売されたSF要素のある作品だ。 葛藤のあまり自分を見失ってた五年生が 自分の生き方を見出し…

紹介作品からの出題(2026年度中学入試の国語出典・随時更新)

ほぼ訪問者がいないここで紹介した本が どの程度入試に出てるか今年も見ていく。 俺なんかでは一部しか拾えないんだけど、 現時点で判明しているものは以下の通り。 全て俺が読んでレビューを書いた作品だ。 『問題。 以下の文章を読んで、家族の幸せの形を…

思考の幅を広げてくれる『図書だよりとひみつのノート』(赤羽 じゅんこ)

うーん。話したって、陶子にはわかんないよ。なんでもおかあさんにやってもらえるんだから。(本文より) これは超のつく優良作品だと感じたな~。 親友と交換日記をしている小6の女子が すれ違いを経て視野を一段と広げていく。 一言でいうならこんなスト…

困難をサラリとあしらう『黒ばら先生と秘密のはらっぱ』(木地 雅映子)

ほんとうに、その先生のいでたちは、一般的な保育園の先生とは、かけ離れていた。(本文より) まるで幼年童話のようなタイトルだけど 3・4年生あたりでは歯が立たない作品。 しかもファンタジーとも一味ちがうんだ。 辛い生い立ちの彼女が真っ暗闇のよう…

どこまでも跳べる星『ぼくがぼくであるために』(蒼沼 洋人)

誰かに助けを求めること。それが、どれだけ勇気が必要か、ぼくはよく知っていた。(本文より) あと5週間ほどで発売される超ド級作品。 先生の前作は3校以上の入試で出ている。 主人公はマッチョ志向のかわいい系男子。 コミカルなほど男らしさにこだわる…

想像力の結晶『新しい法律ができた』(講談社・編)

法律は、人の命や尊厳を守るためにあるんだと思っていました。(本文より) 新しい法律ができたという一文で始まる 25人の作家による楽しい競作短編集だ。 発売時期はちょっと前で2025年5月。 多士済々ゆえにジャンルは何でもありだ。 面白いんだけど…

オーホッホッホ『ティータイム』(石井 遊佳)

ぼくたち、いらない子供なんです。(本文より) 芥川賞受賞歴のある作家の奇想天外な本。 読者の想像力を暴力的なまでに凌駕する 著者の高笑いが聞こえるような短編集だ。 いちばん驚かされたのは旅館業の舞台裏。 仲居の日常とか解像度がありえない感じ。 …

吹きすさぶ逆風の先に『陽ちゃんからのそよ風』(山崎 ナオコーラ)

「自分は友情を築くために生きている」と、生まれたときからアマネは知っていた。(本文より) 自分は女の子ではないと思っている子の 小学校からの長い長い歩みを描いた作品。 これはジェンダーを扱った本のなかでも とくに当人の苦悩が刺さりまくったわ~…

もうひとつの命のビザ『おとうさんのポストカード』(那須田 淳)

あいつらはユダヤ人には何をしてもいいと思っているからさ。(本文より) キンダートランスポートを知ってるか? ナチスの魔の手からドイツの子供たちを イギリスに逃がしたって逸話なんだな~。 一万人救ったっていうから結構な規模だ。 本作は父親と離れて…

世渡り術まで身に付きそうな『未来への人生ノート』(清水 晴木)

今は就活の試験だとしたらという前置きをしましたが、これは日常の場でも使えることなので知っておいて損はありません。(本文より) 10月に出た生き方の指針になる本だよ。 前作で高校生たちのお悩みに寄り添った あの校務員がさらに重要な役割を果たす。…

情熱をコトコト煮込む『本読むふたり』(菊池 良)

ぼくは森の中に迷い込んだのかもしれない。ノルウェイの森じゃない。読書の森に。(本文より) 9月に出た読書の醍醐味が詰まった作品。 本を読まない大学生が物語の魅力に嵌り そこから思わぬ縁が生まれてく筋書きだ。 洗練されていない学生の恋は共感度高…

出題されるかもしれない新刊本(2026年1月前後)

年明け以降の情報はあまり出ていないが 2月の末ごろから新刊ラッシュが来るよ。 1月は例の新人賞作品が良かったことは 報告済だけど村上しいこ先生も良さそう。 毎回言ってるが以下の作品は殆どが未読。 出題向きじゃないのも混じってると思う。 1/23発売 …

自分史上最高の場所へ『ナカスイ!海なし県の水産列車』(村崎 なぎこ)

「やらなきゃ」フェンスの金網にしがみつくように、よろよろと立ち上がった。(本文より) 一作目が聖光学院で出ているシリーズの 第三弾にして完結編という触れ込みの本。 発売は2024年11月ゆえ今期入試で 出てくる可能性が微妙にあるかもですわ。 自…

理性を奪いかねない一皿『あつあつを召し上がれ』(小川 糸)

切なさがじんわりしみる話が多めの七篇。 2011年発売の入試でも定番の作品だ。 難易度の面ではやや難になるだろうな? 翳りのあるのも含めどの短編もいいけど とくに認知症の祖母の話が印象的だった。 子どもがえりした祖母の求めるなにかを 必死で手に…

天井知らずの痛快さ『普天を我が手に 第二部』(奥田 英朗)

これが人間の本性なのか。戦争は人間を鬼畜にする。(本文より) 昭和史三部作と銘打った大作の第二部だ。 前作の主人公たちの子ども世代が戦時を 駆け抜ける冒険活劇という趣だったわ~。 思想も境遇も異なる四人の風雲児たちが それぞれの流儀で難局に立ち…