中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

戦火のもと、不可能に挑む『タスキ彼方』(額賀 澪)

自分のことを、小説の主人公だと思い込むんです。すると不思議なもので、自分の意識と体が切り離される感覚がして、緊張せずに言いたいことがすらすら出てくるんですよ。(本文より) たまに入試に出る作家の12月発売の本。 新旧両方の箱根駅伝の魅力を味…

学びをトコトン楽しんで『線は、僕を描く』(砥上 裕將)

成功を目指しながら、数々の失敗を大胆に繰り返すこと。そして、学ぶこと。学ぶことを楽しむこと。失敗からしか学べないことは多いからね。(本文より) わりと入試で出ている2019年の旧作。 旧作の推奨リストに入れなかった理由は 映像化され回避される…

驚きが止まらない『ずっとそこにいるつもり?』(古矢永 塔子)

陽キャにばっか愛想笑いして、自分がターゲットにされないように振る舞うだけで精一杯なんですよ。(最終話『まだあの場所にいる』の本文より) 入試では見ない作家の10月の新作だよ。 短編集で大人視点の話が多くて子供には 共感しづらいだろうな~とは思…

みなぎる活力『風が吹いたり、花が散ったり』(朝倉 宏景)

なんで、俺たちはもっと器用に生きられないのだろう?(本文より) 『あめつちのうた』が頻出な作家の旧作。 文庫化を機に読んでみたが大当たりだわ。 過ちを犯した少年が負い目を隠しながら 目の不自由な少女のサポート役になって マラソン走破の手助けをす…

短歌少女が駆け抜ける『わたしたちの歌をうたって』(堀 直子)

稀に出題される作家の2022年の作品。 小4あたりからいけそうなレベル感かな。 つまり紹介本の中ではかなり平易な部類。 オレは軽い気持ちで読み始めたんだけど、 主人公が自分の殻を破る場面で涙目だよ。 泣いてるのがバレないよう必死で堪えた。 これ…

知識欲までそそられる『はじまりは一冊の本!』(濱野 京子)

ちがうタイプだからいいのかな、とも思うの。自分には考えつかないようなことを言ったりするから、新鮮っていうか。(本文より) たまに入試に出る作家の昨年9月の新作。 この先生は明日発売の本にも要注目だよ。 今回の紹介する作品の主人公は小6男子。 …

紹介作品からの出題(2024年度中学入試の国語出典・随時更新)

相変わらず笑っちゃう程アクセスが無い 寂れ切ったサイトからお知らせしますよ。 俺の情報網では一部しか拾えないんだが、 旧作も含めて紹介本から出た学校のうち、 現時点で判明しているものは以下の通り。 『きみの話を聞かせてくれよ』(村上 雅郁) 駒場…

決意を胸に『優等生サバイバル: 青春を生き抜く13の法則』(ファン・ヨンミ)

プレッシャーもかけすぎると逆効果だよな。大人はそういうところをわかってない。(本文より) 海外作品はそれほど頻出にはならないが 去年の『5番レーン』みたいに複数校で 出題された韓国文学なんかもあるからな。 今回紹介するのは昨年7月に発売された …

可能性を無駄にしないために『毒をもって僕らは』(冬野 岬)

昨年3月発売のポプラ社小説新人賞作品。 少年視点の物語だけど、中学受験界隈で 話題になっていないのはダークさゆえか。 いじめの凄惨さなんかちょっと引くもん。 主人公の心情の危うさも教科書的でなく そこが読者を惹きこむ要因でもありそう。 毒が強く…

少年の本気度『アオナギの巣立つ森では』(にしがき ようこ)

身近にある物を見直すきっかけになる本。 たまに出題される作家の10月の作品だ。 素材文適性はそれなりにありそうな印象。 文章難易度は5年生でも読める水準だよ。 オオタカや刀鍛冶がいる土地が舞台ゆえ 非日常な暮らしぶりが新鮮に映るだろう。 自然界…

弓の素晴らしさも伝わってくる『たまごを持つように』(まはら 三桃)

一歩一歩しか歩けないのなら、長い間歩いていればいい。(本文より) 2009年に出た優先度Aランクの旧作。 これも長年にわたり愛されてきた小説だ。 努力し続けることの大切さを訴えかける 青春小説なんであらゆる層に薦めたいよ。 弓道を扱うけど斜面と…

月並みじゃない青春『ナカスイ!海なし県の水産高校』(村崎 なぎこ)

中学入試で出題実績が無さそうな著者の 昨年3月に発売された10代向け小説だ。 読みやすい文章で知らない世界のことを 身近に感じさせてくれるストーリーだよ。 素材文適性は程々だが学びは多そうだわ。 12月に続編も出てるから気に入ったら そちらのほ…

まぶしさ溢れる夏の日々『14歳の水平線』(椰月 美智子)

『しずかな日々』で知られている作家の 2015年に出た優先度Aランクの旧作。 この本もまだまだ入試で見ることがある。 ありふれた新刊より先に読むべき名作だ。 すべてにムカついていた主人公の少年が 父の故郷の島でどう変わるかに注目だよ。 読めばキ…

アイデア冴える『満月のとちゅう』(はんだ 浩恵)

興味がない。だからやる、見る、聴く。発見がある。(本文より) コピーライター兼作家の10月の新作だ。 フレーベル館ものがたり新人賞で大賞の 『ソラモリさんとわたし』の続編ですわ。 この先生が紡ぐ言葉はとてもユニークで ちょっとしたフレーズにも煌…

ようこそ、活字の世界へ『さがしもの』(角田 光代)

開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか本しかないだろう。(本文より) 『この本が、世界に存在することに』は 2005年にでた作品集だが、改題して 『さがしもの』になったっていう話だよ。 優先度Aランクの旧作だが今も人気抜群。 同じ作品で…

抑圧と混乱のさなかで『尊敬する人はいません(今のところ)』(中山 聖子)

「その人たちは僕じゃない」(本文より、他人を引き合いに諭そうとする親に対して少年が放った言葉) まれに出題される作家の10月の作品だ。 母と暮らす普通の少女と優等生然とした 少年の視点で子どもの抱えるモヤモヤを 思い切ったストーリーで露わにし…

採用、引きも切らず『サクラ咲く』(辻村 深月)

断れない、はっきり言えない人は、誰かが傷つくのが嫌で、人の傷まで自分で背負ってしまう強い人だと思う。(本文より) 2012年に出た優先度Aランクの旧作。 ファンブックによればこの作品は頻繁に 著作権絡みの許諾申請が来るんだそうだ。 つまり入試…

多彩なテーマを綺麗に織り交ぜた『わたしに続く道』(山本 悦子)

わたしはさ、差別されるのが黒人だけってとこが気に入らない。白人は差別されないのに。(本文より) 発売日が11月下旬だったんで外したが 桜蔭向けの企画に入れるか迷った新作だ。 かなり平易だけどテーマ注目度がMAX。 主人公の揺れる心情も問題で問…

未来の可能性を信じて『君たちは今が世界』(朝比奈 あすか)

親や先生が護ってくれる世界は、いつか終わってしまうからね。(本文より) 2019年に出た優先度Aランクの旧作。 この作品も長く使われている印象ですわ。 目先のことにばかりとらわれる子供達に、 自分を俯瞰するきっかけをくれる物語だ。 今がつらい人…

鮮やかに伏線が活きてくる『小公女たちのしあわせレシピ』(谷 瑞恵)

好きな本からはきっと、いろんな影響を受けて、成長期の心には深く刻まれているんでしょうね。(本文より) 『神さまのいうとおり』が2022年に 出題されて注目された作家の10月の本。 桜蔭の企画に入れるか迷った本でもある。 ま、作問者が相当アンテ…

白いほうの代表作『島はぼくらと』(辻村 深月)

好きなことを続けるためには、好きじゃないこともたくさんやっといたほうがいいよ。(本文より) 2013年に出た優先度Aランクの旧作。 辻村深月先生の作風は黒いのと白いのに 大別できるけど、これは頻出の白い方だ。 地方に住む高校生たちの瑞々しい日…

人生を豊かにするアイデア『今日もピアノ・ピアーノ』(有本 綾)

自分で考えて、自分で決めたほうが、後悔しないし、なにより一生懸命になれるからね。(本文より) 小川未明文学賞大賞作品がついに出たよ。 この賞は受験界でも注目度高めだろうな。 嫌々受験塾通いしている少年の話だから ああ、後半で自己主張して撤退す…

読書が初級の高学年には『クラスメイツ』(森 絵都)

あたしを不安にさせる影は、他の誰でもない、あたし自身がこしらえたものだ(本文より) 2014年に出た優先度Sランクの旧作。 これも受験生にはお馴染みの作品だろう。 これまで何度も入試で使われてきてるが 近年も出題がありチェックは外せないよ。 平…

変幻自在な筆さばき『椿ノ恋文』(小川 糸)

「ありがとう、って言葉で人生を終えられたら、幸せだよね」(本文より) たまに出題される作家の11月の新刊だ。 久しぶりに代書屋の鳩子が帰ってきたよ。 今作でも人の心を動かす手紙の書き方が 小説を読みながら楽しく学べちまうわ~。 ま、今作は微妙に…

新星きらめく『私が鳥のときは』(平戸 萌)

それぞれが自分の場所で、受験生として全力を尽くそうと約束していた。(『私が鳥のときは』の本文より) この作品がデビュー作っていうことだし 中学受験界隈では多分ノーマークだろう。 氷室冴子青春文学賞の大賞作品がこれだ。 受賞作『私が鳥のときは』…

まだまだ使われそうな『大きくなる日』(佐川 光晴)

「ご両親から支持されていないと思ったら、子供が自分の力を伸ばせるわけがないじゃありませんか」(本文より) 2016年に出た優先度Aランクの旧作。 これはテキストや模試でお馴染みだろう。 入試でも忘れたころに出てくる作品だし 普通の新作より先に…

アメリカの自由さが際立つ『空と星と風の歌』(小手鞠 るい)

わたしが生まれ、育ってきた日本に、こんなふうに生まれて、こんなふうに育って、こんなにも悩み、苦しんできた人がいたなんて、想像したこともなかった。(本文より) たまに出題される作家の11月の新作だ。 この先生は発刊のペースがものすごいな。 アジ…

定番の駅伝小説『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ)

自分の力が発揮できる場にいるって大事だろ。(本文より) 2012年に出た優先度Sランクの旧作。 頻出の瀬尾まいこ先生の本では最注目だ。 やっぱしチームの心を合わせる話になる 駅伝や合唱モノは素材の定番中の定番よ。 この作品では先生の役どころも面…

解りあうことの難しさ『アナタノキモチ』(安田 夏菜)

わりと入試に出る作家の先月に出た作品。 この先生は『二月の勝者』の参考文献に なっている 『むこう岸』にも要注目だよ。 今作は相手の気持ちを掬い取ったうえで 尊重することの難しさと大切さを訴える。 物語のキーマンになるのは支援級の少年。 このテー…

出題されるかもしれない新刊本(2024年1月前後)

1月の新刊はそれなりにある感じですわ。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 1/10発売 『風に立つ』(柚月 裕子) 傑作の予感!少年の更生を描く家族小説。 1/18発売 『となりのきみのクライシス』(濱野 京子) どうなる?トラブルまみれの6年生たち…