どうして前の年まで注目されていなかった作家の作品が、いきなり多くの中学で出題されるのか?
『君たちは今が世界(すべて)』(朝比奈あすか)が開成、海城で出たのはなぜか?『朔と新』(いとうみく)はなぜ栄光、ラ・サールで採用されたか?『むこう岸』(安田夏菜)が灘で使われたのはなぜ?
その謎の答えの一端が『飛ぶ教室』にあるようです。
『飛ぶ教室』は児童文学の季刊誌ですが、実力派作家のちょうど良い長さの文章が多く掲載されることから、本誌の短編からの出題が珍しくないことは知られています。しかし、本の紹介コーナーで掲載された作品が入試でよく使われることは、あまり知られていないのではないでしょうか?
実際、バックナンバーを調べたところ、前述した作品群だけでなく『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』(こまつあやこ)のような何の前触れもなく出題数トップに躍り出た作品も、当時『飛ぶ教室』で紹介されていたことがわかりました。
やはり、素材探しで『飛ぶ教室』に目を通した作問者が本の紹介コーナーにも着目した結果、出題が集中することになっているという仮説には説得力がありそうです。
ちなみに『飛ぶ教室』最新号では『あしたの幸福』(いとうみく)が大きく扱われています。
※本の紹介コーナーの活用法
児童書・YA分類でそれぞれ4作品が紹介されています。細かく分けると、扱いが大きい本が1冊、小さい本が3冊です。邦訳本、エンタメ作品、および中・低学年向け作品を除外すると中学受験対策でチェックしたい作品として残るのは毎号2~3冊程度になります。余裕がない場合は、大きく扱われている本だけでも見ておくといいかも知れません。