「ありがとうございました!」
校舎の受付に喜びの声が響きわたりました。塾生親子の腹の底からの感謝に、その場にいた全員が弾かれたように立ちあがり、とびっきり大きな声で応じます。
「ありがとうございました!!」
歓喜で教室が満たされた瞬間です。
みんなの心が一つになったその場面。少女が最高の笑顔に包まれるその瞬間までの道のりは、決して平坦ではありませんでした。
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「自分の未来を変えたい!」
そう願った少女は、小5になる直前に早稲田アカデミーの門を叩きました。中学受験には遅いスタートだったこともあり、初めての組分けテストの偏差値は35。
しかし、母親の文字通り身を投げうつようなサポートもあり、必死で塾のペースに食らいつきます。
だんだん早稲アカ気質に染まっていき、おっとりした表面の下に隠れていた内なる情熱が目覚めはじめたのが小5前半の時期でした。
涙に濡れた答案用紙を「一生懸命、頑張ったのに・・・」とつぶやきながら差し出す日もあったといいます。この泣くほど悔しがることができる気質は、実のところ彼女の”成長の起爆剤”でもありました。
努力はやがて実を結びます。当初は最下位クラスだったものが、小5の後半には校舎最上位へのクラスアップを打診されるまでになったのです。
本来なら飛び上がって喜んでもおかしくないこの場面。しかし、彼女の家族が下した決断は意外なものでした。
「今は基礎固めが大事。先生との相性も抜群だし、環境は変えない方がきっと本人のためになる」
そう考えてクラスアップを辞退したのです。目先の誘惑に負けず、じっくり腰を落ち着けて学ぼうと決めるというのは、なかなかできることではありません。
この方針は正解だったようです。小6になってからも大小の波乱はあったものの、意欲を失わず、上り調子で本番を迎えられたのは、本人に合った環境を考え抜き、選び取った結果でしょう。
35から始まった偏差値は、最後の合不合判定模試で60台に乗せるところまできます。塾に頼み込んでクラスを降級させるという一幕もありましたが、直前期には最上位クラスに十分ふさわしい状態に仕上がってきたわけです。
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さあ、いよいよ入試本番です。受験のスケジュールは本人の性格を踏まえ、だんだんレベルを上げていくという方針で臨みます。
安全策をとった1月の前受校は、特待合格を含めての3連勝。幸先の良いスタートを切ったかと思われましたが、事件は2月1日の熱望校で起こりました。
国語の大問1の途中で具合が悪くなり、退出するという悲劇に見舞われたのです。その学校では途中退出の科目はそこで終了という決まりでした。元々ギリギリの戦いになるはずだった第一志望での中座。絶望に打ちひしがれてもおかしくない局面です。
受験生活を通じてさんざん不安に溺れたり、泣きはらしたりしてきた彼女でしたが、そのときは違いました。
午後の親子面接で「試験はどうでしたか?」と問われた少女は、はっきりとこう答えます。
「国語の試験では、途中で保健室に行くことになってしまいましたが、その他の科目では全力を尽くせたと思います!」
このときの彼女は清々しい位に凛としていて、まなじりを決した横顔は輝いてさえ見えたといいます。
トラブルにめげず、親も目を見張るような成長ぶりを見せた熱望校の受験。結果は残念に終わりましたが、それはこの家族にとってのかけがえのない貴重な経験でもありました。
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「あの日、保健室に行かなかったら私の人生は変わってた。乗り越えたから今がある」
その後、憧れ校の合格を勝ち獲った少女は、当時をこう振り返ります。
結局のところ、二月の受験結果は✕〇〇✕〇となりました。悔しさをバネに奮起した彼女は、最後の最後で6年次の成績を優に上回る学校の合格通知を得て、見事に有終の美を飾ることができたわけです。
未来を変えたいという少女の想いから始まった中学受験。だからこそ彼女は「これは自分の戦いだと思えた」といいます。
泣いても、倒れても、また立ち上がるという気概は、まさに”不屈の闘志”と呼ぶにふさわしいものでしょう。少女が見せたその想いの強さは、これから受験を迎える親子にも勇気を与えてくれそうです。
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※参照元:不屈の闘志 - 娘と私の2年間 偏差値35からの中学受験
母親の戦略が光る中学受験の回顧録でしたが、残念ながら現時点では参照元を見ることはできません。今回はお願いしてダイジェストを書かせていただきましたが、『全身全霊のママ塾』『父親の並走』『救世主は早稲アカ講師』『高め合えた塾友たち』など、紹介しきれなかった重要エピソードも無数にあります。
なお、第一志望以上の難関校に進んだ少女は、中2で英検2級を取得し、中学受験のおかげで好きになった数学にも、さらに磨きをかけているとのことです。
「随分と勇気が要ったし、頑張った。しかしその頑張りはこの受験を終えた後大人になっても、今後ずっと必要になる経験となったと思う」
(不屈の闘志ブログの本文より)
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