割と入試に出る作家の4月発売の作品だ。
前半エッセイ、後半連作短編という構成。
実際のところ短編狙いで手にしたんだが
エッセイのほうも期待以上に良かったわ。
岩瀬先生の幼少期の思い出が語られるが
その観察眼の鋭さには舌を巻くしかない。
で、吐き出される心情がまたいいんだわ。
親としてなんでも先回りしようとすると
子どもをどれだけ傷つけるか実感したよ。
素材適性アリなのは『戦争の夢』の後半、
転校生とのトラブルを描く小4あたりや、
歴代の飼い犬の思い出を語る『犬たち』。
父との記憶『百合の花』もいけるかな~。
連作短編パートでは働かない叔父が出る
最初と最後の短編がちょっと使えるかも。
ただ、この本は児童書棚に置いてないし
書店で見つけるのが難しいかもしれない。
著者の名で指名買いする作問者でないと
その存在に気づくこともできないだろう。
以下は俺のレビューのごく一部分ですわ。
物語の名手はエッセイもお手のモノなのですね。
印象的だったのは母の抑圧が長く刺さり続けた岩瀬先生の生い立ち。
自分は無価値と思い詰める心境や、静かに抗うふるまいに、共感しっぱなしでした。
だけど子どもにしてみれば、そういうのはぜんぶ、綿で体をぐるぐる巻きにされるような息苦しさだった。(エッセイの本文より、母の抑圧的な干渉について述べたくだり)