中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

聲なき天の『オリオンは静かに詠う』(村崎 なぎこ)

記憶にある札の場所を渾身の力で払った。手から星が散り、彗星のように札が飛んでいく。(本文より、競技かるたの鮮烈な描写)


聖光学院で出たことがある作家の新作だ。


聴覚障害にまつわる本人や周囲の葛藤が

さまざまな角度から丹念に描かれてるよ。


深刻度の違いによる友人とのすれ違いや

家族も含めた無理解による苦悩がグサリ。


これは著者の最高傑作だという気がする。

心のバリアフリーに役立つ貴重な一冊だ。

 

競い合い火花を散らすライバルの思わぬ

ふるまいなんかもあってグッときたわ~。


かつ、百人一首絡みの知識も満たされる

 

競争激しい一般文芸棚の片隅にあるため

作問者が気づけるかって問題はあるけど

この作品の素材文適性はかなり高い印象。


素材によさそうな箇所の一例

二章中盤〇頑張り少女の感情があらわに

二章終盤〇ライバル少女への意外な言動

三章中盤◎家族との関わりに思わぬ変化

四章序盤△小6の女王は友情をはぐくむ


ま、使えそうな部分はもっとあるだろう。

 

文章難易度は例の4段階でやや難に分類。

俺のレビューはまとめるとこんな感じだ。

 

聴覚障害当事者や家族、教師などの視点で描かれた競技かるたストーリー。

 

負けん気の強い人々の熱い戦いに、どっぷり漬かることができました。

さまざまな制約に直面して、諦めることに慣れてしまった彼らの葛藤にもリアルを感じましたよ。

 

これはぜひ、中高生の課題図書にしてほしいです。

 

最初に百人一首にない序歌を読むなど、競技かるたの決まりごとも興味深かったですね。

しかも、その和歌がまたいいんです!

 

聴覚障害の困難や、そこから派生する周囲の大変さには、予想外のものも少なくありませんでした。

つまり、ふんだんに学びがある。

 

何ごともまず知ることが大事ですし、まわりの人々が抱える苦悩に関心を持つ入口としても最適な一冊になるのではないかと思います

 

『オリオンは静かに詠う』感想・レビュー

 

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笑顔、笑顔。笑っていれば、辛い気持ちも逃げていく。唇が震えてくるのを噛みしめて耐え、口角を上げた。(本文より)