新たな知識が、朝露の清冽な冷たさのように、脳に染み込んで刺激する。(本文より)
昨年10月に出た角川春樹小説賞大賞作。
美術品の模写や修復を描いた珍しい本だ。
ハンパな自分を思い知り塞いでた青年が
従兄の誘いで新しい世界に踏み込むよ~。
先輩らと難題に挑む中で関係性が深まり
その過程で大切な気づきも獲得していく。
彼の熱量の変化にぜひ注目して欲しいな。
美術用語が壁になるが素材文適性もある。
特に4章と5章の人間ドラマがよいかも。
問題文に使えるかもしれないシーン
四章前半〇名前の由来を知らされるまで
四章後半△セリフに決意がにじみでる日
五章前半△様々な言葉を浴びて浮き沈み
五章後半△ピンチの折にあふれ出る感情
まぁ、これは一例だしまだあるだろうな。
俺はこの作品で芸術道の過酷さに触れて
作り手にも想像を膨らませることを知り
芸術鑑賞する際の楽しみが増えまくった。
子供が読んでも何かを感じられるだろう。
ただし、紹介作品の中ではかなり難しい。
一応俺のレビューを以下につけておくよ。
美術にからっきし疎い私でも楽しめました。
主人公は自分を見失っていた美大生。
休学し無聊をかこっていた彼が、いわくつきの襖絵の模写製作に引っ張り込まれ、軽んじてきた領域の本当の魅力に気づいていく物語です。
高難度のアートに挑む熱量に圧倒された!
異世界ばりに知らない分野の話なのに、作品の向こう側にいる絵師の息遣いまで感じられましたよ。
これからは違った目で美術鑑賞を楽しめそうです。
先人の歩みを徹底してなぞることで、客観的に自身を見つめ直せるというのは私にも大きな発見でした。
古くはオリジナリティより模倣の腕が求められたなど、ビックリするような美術知識もたっぷり。
面白いほど好奇心が満たされましたよ。
未知の世界の扉を開けてくれる本作。
そこには心の琴線に触れ、ライフスタイルにさえ働きかける力が漲っていました。

そういう未練や執着は、熱に変換できなければ、何の役にも立たない。(本文より)