「きみ、中学受験するんだ。それも、けっこう難しい学校目指してるでしょ」(本文より)
割と入試に出る作家の約一ヶ月後の新作。
読書感想文に一家言のある中三の少女が
夏休みに小学校の図書室に入りびたって
訪れる高学年の子たちと関わっていくよ。
感想文にまつわるさまざまなアイデアが
ストーリーの中に幾層も織り込まれてる。
これほど夏休みの宿題の助けになる本は
そうそうないんじゃないかと俺は思うな。
この作品の効用はそんなもんじゃなくて
世間の荒波を生き抜く知恵も得られるよ。
気持ちを文章化するメリットの話とかな。
だからタイトルから自分には関係ないと
思わないほうがいいのがこの本の特色だ。
色んな子が登場するが塾の上位クラスで
必死に勉強する少年の話に共感したわ~。
これは特に受験生やその親に刺さりそう。
素材文適性は中学生と教師の対話も含め
結構あるんじゃないかというのが所感だ。
難易度は入試出題作品との比較だと普通。
以下、休日返上のガチレビューになるよ。
以前読んだ額賀先生の本に、読書感想文のコツを語るこんなフレーズがあって強烈に印象に残っていました。
「あれは本の内容を紹介する作文じゃなくて、自分のことを書く作文なの」(『モノクロの夏に帰る』本文より)
だから本作が出ると知ったときの喜びといったらなかった!
ワケあり中学生が小学校の図書室で、読書感想文に絡む生徒たちの困りごとを鮮やかな手際で助けるストーリー。
読書感想文の極意を掘り下げ、惜しみなく伝えてくれていますね。
一人ひとりの物語が背景まで丁寧に描き込まれているから、スッと入り込めました。
特に、かかわりたがりの司書の卵みたいな子が神がかってて最高!
あなたのことはお見通しという体で、勝手に話を進めるわ、本を薦めるわ、ゴリ押しするさまが愉快でしたよ。
まるで図書室に天使、じゃなくて軍師が舞い降りたみたい。
そもそも本が選べない、書けないといった悩みへの助言はドンピシャ!
書けるけど方向性に難がある場合も見事にさばく手腕は尊敬モノでした。
一番惹かれたエピソードは、効率一辺倒の中学受験生が登場する章。
わ、こういう子、知ってると思ったら感情移入が止まらなくなりましたよ。
親を亡くした子への、教師だったら絶対に言わないようなアドバイスには驚かされ、そして感じ入りました。
感想文の書き方みたいなノウハウ本は少なくありませんが、この物語ほど役立つものは少ないと思います。
課題への確かな足掛かりをくれる本作は中高生にもお薦め。
親や教育関係者の立場でも、子どもの作文対策の一助になるでしょう。
謎要素まであってとびっきり楽しい一冊でした!

「ぼくのこと、親に無理矢理勉強させられてるとか、いい学校に行くことだけにとらわれたかわいそうな子だと思ってる?」(本文より)