中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

その気骨、比類なし『ミナミの春』(遠田 潤子)

勇気という言葉は美しく尊い。しかし、勇気のない人、勇気が足りなかった人は責められても仕方がないのだろうか?(本文より)


中学入試ではほとんど見ない作家の新作。


もう、最初から最後まで素晴らしくって

自分でも笑っちまうほど揺さぶられたわ


ここぞって場面での登場人物の意志力が

まばゆいまでに輝いてたもんだからよ~、

最高の終幕なのに名残惜しくなったほど。


とくに響いたのは女の強さであり逞しさ。


心の傷やいくつもの困難を抱えながらも

人のために動ける気概に魅了されまくり。

 

初読みの作家さんだけどマジ驚かされた。


素材文適性は、読み始めて10分ほどで

高い場面にぶち当たることになるだろう。


問題素材向きかも知れない場面の例

一章◎11歳少女の意外な振舞いに父は

一章〇高3少女からこぼれでる本当の心

五章△医大を目指す高2の感情あふれる


まぁ、中受界隈で注目の作家ではないし

作問者に気づいてもらえないかも知れん。


しかし感動っていう点では今年最強だわ


いつもの分類では難しいというレベルで

小学生だと読書上級者でないとキツそう。


以下、心からの感謝と敬意とともに発信。

 

尋常じゃなく揺さぶられる読書体験でした!

 

対照的な姉妹の漫才師、チョーコとハナコがきっかけで人生が変わる人々に光を当てた連作短編集です。

 

真っ二つに毀誉褒貶の分かれる二人の人間性が、関わる人々の生き様を通して露わになっていくところがいいですね~。

惹かれに惹かれて、気づけば私も彼女たちの熱烈なファンになっていましたよ。

 

終盤なんて、喫茶店でチョーコが放つほんの一言で身体じゅう電気が走りましたもの。

よくぞ言った!って。

ハナコのつらい体験からくる優しさも魅力たっぷり。

 

考えさせられたのは、親の「良かれ」は、子の毒になりうるという部分ですね。

悪気があれば言わずもがな、たとえなくても一層危ういというエピソードがザクッと刺さりました。

私もそうならないよう固く心に誓った次第です。

 

この作品の主人公は姉妹の周囲の人々ですが、それぞれの歩みの中にもグッとくる瞬間が溢れていましたよ。

 

まず、娘の元・相方らの”あの子”への慈しみと姉弟の絆。

か弱い女の逆転劇は爽快でしたし、遅れて来た可能性の話は意外さも相まってラストで見事にズキュン!

道頓堀の思わぬ道連れには共感し鼓舞されて、異質な家族の葛藤には「親は愛情で子どもを壊せる」という言葉に引っ張り込まれました。

不穏さを吹き飛ばす締め方にも痺れましたよ。

 

そして長い時間を経たあとの最終話。

すべての感動が詰まっていましたね。

 

満たされ、余韻に浸りつつ、上を向いて念じましたよ。

感謝の気持ちを。

 

『ミナミの春』感想・レビュー

 

颯爽とした生き様に痺れる(2025/3発売)

 

人のプライバシーに平気で踏み込むデリカシーのない人間は嫌いだ。だが、今はその嫌な人間にならなければいけない気がした。(本文より)