世界はまだまだ可能性を秘めた音楽にあふれている。(本文より)
昨年デビューした作家の来月出る新刊だ。
前作でこの先生、美術に強いのかと思い、
今作では音楽にも強いのか!とたまげた。
心にフタをしていたチェロ奏者の少年が
自分を解き放っていく様にグッとくるよ。
何より引き込まれたのは尖がった個性が
激突しまくるコンクールの圧倒的な熱気。
鮮やかなまでにドラマチックな展開だし
音楽に疎くってもかな~りに楽しめるよ。
欧州でいまも残る国家間の遺恨のような
普通に生きてると見えない事情なんかも
描き込まれていて深みも味わえる逸品だ。
素材文適性は『車椅子のヒーロー』の章。
進路に迷う高校生の葛藤が問題に良さげ。
面白さは後半の章にかけて爆上がりだよ。
難易度はいつもの分類でいえば難しいが
すぐに熱中できるんじゃないかと思うな。
以下、吐き出さずにいられない俺の感動。
前作で美術を鮮やかに描き上げた著者が、今度は音楽を舞台に奏で尽くします。
主人公は家の事情で音楽の道を断念しかけているチェロ奏者の少年。
日本で隠遁する世界的巨匠に師事し、ひそやかに腕を磨いてきた彼が人生のターニングポイントに立ち、驚きの経験を重ねていきます。
葛藤のあまり内向きになっているキャラが多めだったせいか、例の姉妹の陽気に救われた気がします。
そんな彼女たちの歩みも一筋縄ではありませんでしたね。
こういった人物描写の細やかさには、強烈なまでに魅了されましたよ。
絵にかいたような憎まれ役が見せるギャップも刺さりすぎ!
もう、途中まで大っ嫌いだったのに。
そして、終盤の主人公の熱量にはものの見事に持って行かれましたよ。
経験を糧にして未来を切り拓いてゆくさまには、思わずため息がもれました。
ふぅ、よかった~、と。
忘れられたり、遅れて来た才能に光をという理念には120%共感ですね。
これは著者の心からの願望でもあるように感じましたよ。
音楽が呼び覚ます感動。
繋がり広がってゆく世界。
この作品とともに時間を忘れ味わってみませんか?

自分の可能性を模索してる姿を見せ続けることで、それがいつか個性だと言われるようになる。(本文より)