子どもたちはことごとく、時間を奪われ、可能性を奪われ、希望も将来も奪われていた。(本文より)
凄い速さで作品を世に送り続ける作家の
8月に発売された反戦ストーリーですわ。
故・茨木のり子先生をモデルに創られた
文学少女の10代が真っ黒に染まるんだ。
すさむ世相、きしむ家族、絶望のなかで
心の底から自由と生への渇望が湧き出る。
そんなさまが美しい文体で描かれてるよ。
言葉の連なりに触れるよろこびが何より
救いになったという部分に共感したな~。
戦時中に陶芸家達が爆弾を作らされた話、
岡山無警報空襲の話などに学びもあった。
難易度の面では紹介作品の中で普通相当。
以下、マイレビューからの引用になるよ。
著者の戦争に対する憎悪が、直接、自分の中に流れ込んでくる読書体験でした。
ファシズムに染まってゆく時代に青春を奪われた一人の女性の生きざまを描いた物語です。
作中に登場する詩はどれも心の襞に触れるような情感に満ちているのですが、絶望のなかで希望をうたう『詩と死と雨』と、ラストの詩に込められた祈りがとくに印象的でした。

言葉や文章や物語は、つかのまであっても、曇った世界に射しこんでくる、ひとすじの明るい光のようだった。(本文より)