がんばったって、耳のせいでどうせうまくいかないんだったら、がんばる意味なんてないって思うようになった。(本文より)
10月の期待の一冊に選んだ作品の紹介。
主人公は小学校時代から難聴が始まって
大好きなバドミントンをやめた中二女子。
聴こえないことで諦観に染まった彼女が
希望を取り戻すまでを活写した物語だよ。
これはグッと引き込まれる作品だったな。
身につまされるエピソードがありすぎて
俺なんかもまるで目が離せなかったわ~。
子どもたちに是非勧めたい作品なんだが
内容的に課題図書にも向いてそうな印象。
素材文適性は、止まった時間が動き出す
三章から上がり始め、不穏な五章で上昇、
変化の七章でピーク、八章以降も高そう。
つまり問題文としての使い勝手は良いよ。
ま、中学入試ではあまり見ない著者ゆえ
この作品に作問者がたどり着けるかは謎。
難易度は入試では普通といってよさそう。
以下、久々の2パターンレビューになる。
(レビュー1)
現実をただ嘆くより変えていこう。
そう訴えかけてくるストーリーでした。
主人公は難聴に苦しむ中学二年生。
徐々に進行する症状に戸惑い、孤独を深めていた彼女が、素敵な巡りあわせで変化の糸口を掴みます。
聞き返すことへのためらいや、現実を受け入れられない葛藤への共感が止まりませんでした。
だから物語の暗転が辛かったですし、気づきからの流れには身を任せてフワッと浮き立つことができました。
ピースがバシバシはまるような終盤は最高すぎ!
本作は難聴少女の話ですが、気づきの応用範囲は広いと思います。
(レビュー2)
耳に異常を感じたらすぐ医者に行きましょう。
私の弟は耳鼻科に行くのが一足遅かったことで、難聴が常態化してしまったので。
本作の子たちとはレベルが違いますが、私もいま耳のことでつらさを抱えています。
聞き取れた断片的な情報から想像を膨らませ、勘で受け答えする大変さ。
わかっているフリをしてしまう気持ち。
その通りすぎて泣きそうで、何度も読むのを中断したほどです。
けれどこの物語は私に勇気を与えてくれました。
ひとり嘆くよりも、前に進むためにどうあるべきなのか?
ストーリーの中で躍動する人々が、その生き様をもって教えてくれたのです。

みんなもがき苦しんでいる。でも、乗り越えた先にちがった景色が見えるんだ。(本文より)