ただのページの束に、壮大な知識の海が広がっていた。(本文より)
中学受験界隈で手垢のついてない著者の
9月に発売されたメガトン級の作品だよ。
今回の本は問題文に使えそうなくだりが
秋以降に出た新作では最多となる9箇所。
中受物語文は圧倒的に女性作家優位だが
ひさびさに凄い男性作家が登場したわ~。
ファンタジックな書き出しだけど本編は
ほぼほぼリアリズム路線のストーリーだ。
もし冒頭でギョッとしても読み進むべし。
小5女子の友情と中2男子の恋に要注目。
中1男子の変化も心惹かれるものだった。
素材文適性の面で謎要素は妨げになるが
切り取りやすさが抜群なのでOKだろう。
問題に使えそうな箇所の例
適性◎水族館での思わぬ人との再会場面
適性〇スナメリがみせる珍しい振る舞い
適性〇連れだってのつつましやかな行楽
適性◎皆の注目が集まるなかで火起こし
適性◎やさしい館員との突っ込んだ対話
適性△シーンは和菓子屋パート2箇所や
ねぷたパートなどの計4箇所を数えたよ。
冒頭とラスト以外はかなり使いやすそう。
ただ、過当競争の一般文芸棚にあるので
作問者が気づきにくいかもしれないな~。
文章の難易度はやや難といったレベル感。
以下、夜なべして書いた俺のレビューだ。
どんなに不器用で、人から蔑まれても、決して誰かを傷つけようとしない女の子の生き方に魅せられました。
青森、熊本、埼玉でそれぞれに苦悩を抱えながら暮らす少年少女が、夏休みの特別な出会いに背中を押され、人生の節目を乗り越えていく物語です。
3本のストーリーが並走しますが、とくに制約だらけのなかを精一杯生きる熊本の中二男子の経験が刺さりましたよ。
とびっきり「夏!」という感じで、しかも甘酸っぱいんだもの。
青森のカブスカウト少女が友のために踏み出す場面も好きですね。
ここで名言が来るか!と感嘆しきり。
埼玉のゲーマー男子のこぼす涙にもグッときました。
全体を通じて、大人も子供も決して自由ではないなと改めて実感しました。
ネバーランドに縁のない者としては、与えられた環境の中から光を取り出して大切に守ったり、育てたりすることこそが尊いのだと思うことにします。

それがなきゃ生きていけん。そがんもんが、みんなあるっさ。(本文より、熊本で暮らす少年の祖母のセリフ)