中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

響け!魂の調べ『パルティータを鳴らすまで』(せやま 南天)

無理だろう。僕らに私立の中学なんて。選ぶ権利、ないんだよ。(本文序盤より、里子仲間との対話)

 

中学入試では手垢がついていなさそうな

著者の11月に出た本だが、これは強い

 

昨日紹介した本は養子縁組里親の話だが

今回の紹介本は養育里親のストーリーだ。

 

この二つには大きな違いがあり後者には

期限があるゆえに別れの日がやってくる

 

そのタイムリミットの日に向け主人公が

揺れ動くさまが超リアルに描かれてんの。


環境に振り回されてようやく辿り着いた

安住の地が終わるとなりゃ動揺もするよ。


諦めの境地になっちまう気持ちもわかる。


そんな彼が素敵な廻りあわせで変わるの。

とくに後半の盛り上がりがいいんだわ~。


素材文適性は6章、次いで8章が高そう。


問題文に良さそうな箇所(一例)

二章終盤△祖母は少年の願いに正対する

三章終盤△父親に言えない本当の気持ち

六章全体◎公園で級友と出会う運命の日

七章序盤〇祖父母に語る心に決めたこと

八章序盤〇幼馴染の考えに触れての共鳴

八章中盤〇朝ジョグの会話で得る気づき

八章終盤△父、祖父の語りに高まる感情


こんな感じでかなり使い勝手は良さげだ


本作は大人視点でも学びの多い作品だよ。

 

養育者達の考え方は参考になりまくるし

大人も完璧じゃないと認める部分も良い。


難易度としてはやや難あたりの印象かな。

以下はマイレビューのロングバージョン。

 

少年の苦しむさまに圧倒的なリアリティがありました。

 

主人公は諦観に染まる中学二年生。

つらい生い立ちゆえに心に枷を付けたまま生きてきた彼が、育て親のもとを離れる期限が迫るなかで、感謝を形にしていこうと足掻きます。

 

里親でイメージするのとはまるで違う養育里親制度の存在を初めて知りました。

 

大好きな場所に居られる残り時間に葛藤する少年の感情が、爆音さながらに魂にまで響きましたよ。

 

序盤で内向的すぎる少年にモヤっとする瞬間もあったのですが、気づけば少年の心の動きにシンクロナイズド。

冷めきった少年が熱を帯びていく流れには、美しい調べに全身が泡立つような喜びがありました。

 

やさしさの化身のような両親や元気印の中学生二人なども魅力いっぱい。

じじばばも絶妙に物語を彩ります。

 

重い事情を抱えた主人公の成長ぶりを実感できるラストは超好み!

 

『パルティータを鳴らすまで』感想・レビュー

 

友情の芽生えにも注目(2025/11発売)


子が親に、べったり甘えられるのは、親は自分のことが大好きで、絶対いなくなったりしないと信じ切っているからだ。(本文より、”普通”の家族に向けられた少年の感情)