中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

友情を超えたキズナ『雫』(寺地 はるな)

正解か不正解かを決めるのは、選択したあとの自分の生きかただ。(本文より)

 

割と入試に出る作家の2ヶ月後に出る本。

2026年組は特に注目じゃないかな?

 

今月の日能研模試でもこの先生の作品が

使われたがそれ以上に素材文適性は高い

 

物語は人生の岐路に立つ45歳パートで

始まるんだが大人小説が難しい場合には

15歳パートから読むのもアリだろうな。

 

中学生活は親しみやすく読みやすい上に

面談シーンや卒業制作シーンがいいから。

何にいいかは言わなくてもわかるよな?

 

この作品、先生がめっちゃ魅力的だよ~。

 

中学生の意見にちゃんんと耳を傾けるし、

子どもが未来に希望を持てる話をするし、

アッとおどろくような情熱を体現するし。

 

4人の中学生は30年の間に成長を遂げ

全く違った関係性をみせてくれるんだわ。

 

その移ろいも一つの見どころだと思うよ。

 

サブテーマにジェンダーや発達系があり

考えさせられる要素もたっぷり含んでる。

 

つまり、面白いだけじゃないっていう話。

 

全編難易度は難しいだが、中3編だけは

例の分類ではやや難で少し読みやすいよ。

 

出版社には以下のレビューを送ってある。

 

中学の卒業製作班で一緒だった4人の、30年にわたるあゆみを描きあげた作品です。

 

端正に張り巡らされた伏線が、鮮やかに活かされる瞬間が少なくありませんでした。

味わい深いわ~。

地元の美容師の意外な素性など、読み返して初めて気づく仕掛けにも心が躍りましたよ。

かめばかむほど美味しい、何度でも楽しめる逸品ですね。

 

主人公は一見パッとしない脇役タイプ。

自分には何も特別なことがないと思いつつ日々を過ごしていた彼女に、実は人とは違うものがあると明るみになっていくストーリーです。

 

4人の不器用な生き様に、のっけから釘付けでしたよ。

なかなか本心を明かさないけれど、いざというときには手を差し伸べる友情を超えたつながりが沁みる!

 

脇役の美術の先生にいたっては何もかもが最高でした。

特に自然体で生徒を圧倒する場面。

のちの結婚とは何かを語った言葉は思わずメモしましたよ。

もう、この先生が登場するとキターッ!って鼓動が跳ねましたもの。

 

こんなふうに、脇を固める陣容がバッチリ魅力的で盛り上げてくれるのも寺地先生の作品の魅力のひとつですね。

 

15歳だった4人の関係性は時間の経過とともにどう移ろうのか?

迷える主人公が45歳で辿り着くのはどういった境地なのか?

すべて持ってるように見えた男の意外な葛藤とは?

 

ぜひ作品を手にして物語に思い切り身を投じ、その中に潜むあらんかぎりの熱を体感してほしいと思います。

 

『雫』感想・レビュー

 

名言多数!物語に理想の教師像を見た。(2024/11/6頃発売予定)

 

こんなふうに、自分の持っている何かをそっと手渡すように、あとからこの世に生まれてきた人に、なにかひとつでも伝えることができたら。(本文より)