中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2024-01-01から1年間の記事一覧

未来につながる翼『同じ星の下に』(八重野 統摩)

わたしは、そんなお父さんとお母さんの姿を見てはいつもぞっとして、心底恐ろしくなって、学校ではとにかく必死に、家では隠れてでも勉強をする。(本文より) 『ペンギンは空を見上げる』著者の作品。 小学生が読むにはNGの部分があるんで ここで取り上げ…

行動力が駆けてゆく『アフリカで、バッグの会社はじめました』(江口 絵理)

失敗だと思ったらそこで終わるけど、次に何かをするときに生かせればそれは「失敗」とは言わない。(本文より) 前から思ってたけど、青少年って言うが 青少女って言わないのはなんでだろうな。 さて、青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部の2024…

心の壁を取っぱらえ!『透明なルール』(佐藤 いつ子)

自分の才能を恨んだ。普通でいいのに。普通がいいのに。(本文より) 『真実の口』とこの本は外せないっしょ。 明日発売の今期最注目といえる新作だよ。 おとなし目の主人公が、あれよあれよと 一軍女子グループに取込まれ無理するが やがてほころびが広がっ…

挑戦に欠かせないもの『マジックに出会って ぼくは生まれた』(涌井 学)

大丈夫。落ち着いてるよ。今の僕の全力を、完全に出し切ってみせるから。(本文より) 新作ではないが素晴らし過ぎるので紹介。 昨年の品川女子学院で使われた作品だよ。 伝記ベースなので素材で扱いにくいかと 思っていたが予想は大ハズレだったわ~。 優れ…

意表を突く展開の『天国からの宅配便 時を越える約束』(柊 サナカ)

やはりわたしは、数学が好きなんだ。一度しかない人生の中で、そういうものを見つけられたことはよかったと思う。(本文より) 『天国からの宅配便』シリーズ1作目は たしか前に栄東の素材文になってたはず。 今回紹介するのは本日発売の3作目だよ。 この…

生きる力と、踏み出す勇気『かなたのif』(村上 雅郁)

「友だちの助けに、なってあげなさい」ぼくはうなづいた。それ以上、大事なことなんて、きっとこの世界にはないもんね。(本文より) 先月開催の四谷大塚の入試報告会の席上、 ホールを埋め尽くす受験生の父母の前で 大スクリーンに映し出された本があった。…

スポーツの見方が変わりそうな『鳥人王』(額賀 澪)

最初に目指したものが実は自分には向いていなかった、なんて人間の方が大半なんだから、そこからの身の振り方が人生の見せどころだ。(本文より) たまに入試に出る作家の2月に出た本だ。 棒高跳びを描いた極めて珍しい作品だよ。 関心ゼロの題材だし大丈夫…

アクが強い、強すぎる?『サクラサク、サクラチル』(辻堂 ゆめ)

二つ違いの姉は、かつて、両親の自慢の娘だった。中学受験で第一志望校に受かり、両親を喜ばせた。(本文より) 名作『山ぎは少し明かりて』の著者の本。 毒親に東大合格を強要される少年の話を 東大出身の実力派作家がどう描くのか? 関心があって手にした…

どこまでも響け、そのメロディー『うたう』(小野寺 史宜)

わたしもこの数年で学んだわけ。牛後のときは重かったけどね、鶏口になると動きは軽いのよ。(本文より) 音楽にかかわる4人の男女が描かれてる たまに入試に出る作家の2月の新作だよ。 夢を応援する妻とか、人気者の先輩とか 登場する一人ひとりの魅力が…

心がほぐれてゆく一冊『学校に行かない僕の学校』(尾崎 英子)

今の学校は、考える前に与えすぎてるんやと、俺は思う。(本文より) 『きみの鐘が鳴る』で中学受験を描いた 著者の約1ヶ月後に発売される新作だよ。 これは多様な価値観を体感させてくれる。 今が辛い子どもたちに届いて欲しい本だ。 国語素材文としてもか…

合不合判定テストの国語出典(続 模試に出る作品は当てられる)

去年の合不合判定テストの物語文だけど 俺がレビューした作品からしか出てない。 一昨年はここまで当たってなんかないし たまたまだが、まぁ数撃ちゃあたるわな。 2023/04/09実施 合不合判定テスト 第一回 『給食アンサンブル2』(如月 かずさ) (2022/10/1…

荒波を超えて『遠い町できみは』(高遠 ちとせ)

誰かを責めるんじゃない。誰かに誇れるように胸を張ろう。(本文より) 3月14日に出たポプラ社小説新人賞の 特別賞受賞作ってのが今回の紹介本だよ。 海辺の田舎町を舞台にして3人の男女が 小5から中学時代を駆け抜けていく話だ。 過酷な運命にあらがう…

しあわせを願う意味『風に立つ』(柚月 裕子)

恵まれた人生と充実した人生って同じじゃないのかもな。(本文より) ミステリや推理モノで有名な作家の新作。 入試でほぼ見ない先生なんだがこの本は ちょっと使える要素が混じってるんだな。 地域一の進学校に入学したものの問題を 起こし南部鉄器工房に流…

リアルな小学生ライフ『小田くん家は南部せんべい店』(髙森 美由紀)

冷たい思い出より、温かい思い出の方が涙をこみ上げさせるのは、どうしてなんだろう。(本文より) たま~に出題される作家の先月の新作だ。 地元ならではの名産品作りが家業という 少年の小4~小5のあゆみを描いた物語。 これがまたMAXレベルでエモい…

出題されるかもしれない新刊本(2024年4月前後)

4月の新刊は現在判明分では少な目だが 注目作品が2つあり熱量は圧倒的に多い。 その後にも気になる作品がバンバン来る。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 多分出題向きじゃないのも混じってるよ。 4/11発売 ☆先行レビュー済☆ 『真実の口』(いとう …

響け、伝われ、先生の願い『ぼくの色、見つけた!』(志津 栄子)

ぼくは平気だよ。不自由なんかじゃない。そう伝えたいのにうまく伝えられない。(本文より) 今年の入試で少なくとも3校で出てた 『雪の日にライオンを見に行く』での ちゅうでん児童文学賞大賞受賞により 注目作家の仲間入りした先生の新作だ。 発売日は2…

大作家、久々の降臨『ともだち』(椰月 美智子)

弱いほう、人数が少ない側を大事にするのはわかります。でも、優遇するのは違うと思います。(本文より) 椰月美智子先生は児童文学界の大作家で 旧作が頻出だけどこれは今月発売の新作。 毎日小学生新聞連載作でかなり平易だし 小4あたりでも読めそうな印…

【本気レポート】わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

日頃のメンタルと受験本番のそれは別物だという言説を目にしたことがあります。 実力を発揮できるかどうかは、当日になってみなければわからないというのです。 今回紹介するのは直前期にも「受験が楽しみ♪」と言ってはばからなかった元気女子。 天性の陽気…

人間らしさってなんだろう『嘘吹きアンドロイド』(久米 絵美里)

その時、その瞬間は、真実だった気持ちや言葉も、あとから嘘になることもある。過去の言葉の意味は結局、その人が今をどう生きてるかどうかに左右されるんだ。(本文より) まれに出題される作家の先月発売の新作。 このシリーズは物語で起こる事件により ネ…

部活動の”三種の神器”『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子)

たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。 このタイトルはシリーズ化狙いなのかも。 かなり平易なんで小5でも十分に読める。 尊敬できる先生や、高め合えるライバル、 目標となる先輩などとの出会いを契機に 新入生の男女が変わっていくストーリー。 部活な…

燦然!これぞ金字塔『カラフル』(阿部 暁子)

「本当は誰にも迷惑なんてかけたくないよ、私だって」(本文より) 『カラフル』といえば森絵都先生だけど 今回紹介するのは阿部暁子先生の新作だ。 この先生は『パラ・スター』が頻出だな。 今作は車いすユーザーの少女に出会った 高1男子の意識が新生活の…

ボッチに訪れた春『17シーズン 巡るふたりの五七五』(百舌 涼一)

たった一文字、いや一音にそこまでこだわるのかと音々は驚く。同時に、たった十七音しかないのだから、一音一音にこだわり抜かないといけないのだと悟る。(本文より) 2024年2月に発売されたばかりの本。 出題実績ゼロの児童文学作家の新境地だ。 タイ…

スーパー校務員の流儀『17歳のビオトープ』(清水 晴木)

生死に直結しないことに対して、深く悩んで考えられるのは人間に許された贅沢の一つですよ。(本文より) 都立高校入試等で出題実績のある作家の 2023年11月に発売された作品だよ。 人気者の校務員が子どもたちを救う話だ。 校務員がキーマンってなか…

威風堂々たる『成瀬は信じた道をいく』(宮島 未奈)

やっぱり、あかりの入試が一筋縄でいくわけないのよ。(本文より) 豊島岡女子や栄東・東大特待での出題で 注目度上昇中の作家のシリーズ二作目だ。 本屋大賞候補作の一作目とともに書店の 目立つ位置を占め続けるのは確実だろう。 つまり、作問者が気づかな…

ラストがヤバイほど沁みる『答えは旅の中にある』(小手鞠 るい)

「人は死んでも、人の言葉は死なない」(本文より) たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。 詩人でもあるためか言葉選びがいいわ~。 冒頭に挙げたフレーズ以外にも百花繚乱。 日本文化が海外でどう見られているか等 米国在住作家だけに未知の話題も多いよ…

エンタメ万歳!『あいにくあんたのためじゃない』(柚木 麻子)

日本でははっきりした主義主張をすると、必ず大勢の敵を作る。(本文より) この著者は去年、開成で採用があったな。 恵泉女学園を描いた『らんたん』もいい。 さて、本作は極上のエンタメ小説ですわ。 ストレスがたまってたまって限界になり そこから胸のす…

出題されるかもしれない新刊本(2024年3月前後)

3月の新刊も現在判明分では少な目かな。 追加でわかったらこの記事に書き足すよ。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 出題向きじゃないのも多分混じっている。 2/26発売 『なんでもないあの人』(濱野 京子,林 けんじろう,椰月 美智子,昼田 弥子) 『き…

鳴りひびく警鐘『となりのきみのクライシス』(濱野 京子)

子どもの権利を守るのは、大人の責任です。でも、世の中には、いい大人ばかりではありません。(本文より) 割と入試に出る作家の先月発売の新作だ。 思わぬ気づきをくれる異色作という印象。 児童書でここまで子供達に警鐘を鳴らす 作品ってなかなかないん…

ジャケ買いアリの鷗友選書『お菓子の船』(上野 歩)

いいか、大事なものがあるから、生きる価値が生まれる。おまえたちも生きるに値する大事なものを探せ。(本文より) 鷗友学園での出題を機に出会った良本だ。 お仕事小説なんだが一生懸命な主人公が 力をくれるから幅広い層に薦めたくなる。 海軍時代の祖父…

エネルギー溢れる『オランジェット・ダイアリー』(黒川 裕子)

目標が無いんじゃなくて、目標を作りたくない。かなわないのに、努力するのが怖いだけ。(本文より) 悩める少女の心情がリアルに感じられる たまに出題のある作家の11月の作品だ。 序盤のノリの良さはこの著者の特色だな。 スッと物語に入り込めそうな作…