中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2024-01-01から1年間の記事一覧

心に届く爽快さ『ピーチとチョコレート』(福木 はる)

軽々しく本音を見せないのは、自分の心を守るための戦略だ。(本文より) 講談社児童文学新人賞の佳作だった作品。 この年の新人賞は明らかに当たり年だわ。 大賞が凄かったのはもちろんのことだが 今回の紹介本も次に紹介する予定の本も クオリティーがハン…

その明暗はくっきりと『わたしたちは、海』(カツセ マサヒコ)

きっと全ての親はさ、純度百パーセントで目の前の子供を想うことなんかできなくて、どこかに過去の自分を、投影しちゃってるんだろうね。(本文より) これも入試で見たことのない著者の新作。 書店で目立ってたのでピックアップした。 大人向けの作品で子ど…

受け継がれる想い『いのちのつぼみ』(志津谷 元子)

好きな人の好きなものを、自分も好きになる。それが恋というものなのだろうか。(本文より) 入試では見たことがない著者の新作だよ。 作品数が少ない先生だが小川未明文学賞 大賞を受賞した実績もある作家だからな。 これといって熱くなれる物がない少女が…

喝采の起業計画『アーセナルにおいでよ』(あさの あつこ)

”アーセナル”はまだ小さいけれど、必要なんだ。今、生きている人たちに絶対に必要な場所だ。そう信じて創ったんだ。(本文より) わりと入試に出る作家の9月の新作だよ。 高3女子のもとに初恋の君から届く連絡。 それは思わぬ計画への誘いだったんだな。 …

【番外編】2025年高校入試 国語出典予想20選(2024年1月~2024年10月発売)

今度は高校入試版の予想を作ってみたよ。 去年作ったリストでは、中学でも出てた 『この夏の星を見る』が最頻出だったな。 中・高入試ともに選書の傾向は似てるが、 高校は秋発売の作品も割と出ているから、 中学入試版とは少し違う顔ぶれになるわ。 高校入…

文学×科学の醍醐味『藍を継ぐ海』(伊与原 新)

人類が最初に手にした鉄は、鉄隕石だと言われているんですよ。(本文より) 地学小説という新しいジャンルの開拓者、 聖光学院でも出題実績がある著者の新作。 今作でも科学の知識がごく自然な感じで ストーリーに絡んでくる仕上がりだよ~。 しかも北海道開…

例のリストを完成させた

2025年入試版出典予想ランキングに 15作品を追加してベスト100にした。 【2025年入試版】国語出典予想ランキング(2023年9月~2024年8月発売) 周りにやさしく。結局それが一番自分を救う。(本文より) 今回の追加作品リスト 26位『銀河の図書…

唯一無二のリアリティ『僕たちの青春はちょっとだけ特別』(雨井 湖音)

この学校に来てから架月はいきなりクラスのうちの一人として学級の当事者になった。お客みたいな特別扱いが終わったんだ。(本文より) あと2週間ほどで書店に並ぶ作品ですわ。 学園ミステリ大賞の受賞作ってことだが そこから想像する内容とは別物なんだな…

支持率は限界突破『ジンが願いをかなえてくれない』(行成 薫)

知ってます?動物園の動物って、野生動物よりも寿命が短いらしいすよ。(本文より) 中受界隈では手垢のついていない著者の ぶっ刺さる短編がギュッと詰まった本だ。 この作品は季刊飛ぶ教室紹介本でもある。 SFチックなのは2編であとは現実路線。 心の底…

出題されるかもしれない新刊本(2024年12月前後)

12月も熱い発売スケジュールになるよ。 いきなり凄い企画の3冊同時発売がくる。 さらに前期最頻出作のスピンオフを含む 村上雅郁先生の作品が出るし、紹介済の こまつあやこ先生の新作も超強力だった。 ま、以下のリストは未読の本が多いゆえ たぶん出題…

思わず手を合わせたくなる『介護の花子さん』(あさば みゆき)

こんなにたくさんお礼を言ってもらえる仕事なんて、そうそうないよ?(本文より) 子供たちに仕事の魅力と大変さを伝える 感動のお仕事シリーズの9月に出た作品。 児童文庫の売れっ子作家による新境地だ。 特段思いれもなく業界に入った主人公が 責任ある現…

肩の荷フワリ『白紙を歩く』(鯨井 あめ)

自分の費やしてきたものや、 身に付けてきたこと、継続してきたことを、自信に変えたいんだ。(本文より) まれに入試にでる作家の10月の新作だ。 対照的キャラの女子高生2人の価値観が 関わり合うことで揺れ動いていくんだわ。 簡単に染まらないところが…

思いのままに花ひらけ『チカクサク』(今井 恭子)

これが戦争なんだ。終わりはない。って 言葉が恐ろしいまでに胸に迫って来たよ。 わりと入試に出る作家の10月の新作だ。 描かれてるのは昭和28年からの数年間。 心に傷のある少年がその時代ならではの 経験や不思議体験を重ねて変わっていく。 子供には…

めぐり逢い、湧き出るモチベ『迷子のトウモロコシ』(嘉成 晴香)

わたしみたいに、夢が迷子になっちゃうこともあるし。(本文より) まれに入試に出る作家の9月の新作だよ。 煮詰まっていた少女が出会いに触発され 新しい自分に突き進んでいくストーリー。 合わないと思っていた子が実は、という 筋書きは王道展開だが俺は…

あなたは二月の勝者ロス?『問題。 以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』(早見 和真)

もう私お姉ちゃんの受験イヤだ。受験が近づいてから家の中がずっと変だもん。(本文より) 今期出典予想ランキングでは下位だけど 今年最も楽しんだ作品はコレなんだよな。 俺がノリノリでレビュー書いた翌月には 合不合判定テストの素材にもなっていた。 そ…

神出鬼没の凄いキャラ『朝読みのライスおばさん』(長江 優子)

みんなで同じお話を聞いても、感じ方はそれぞれちがうってところがおもしろいんだよねえ。(本文より) 2週間後に発売される作品を紹介するよ。 俺もいろいろとレビュー書いてきたけど、 これほど印象に残るキャラはいないわ~。 小5男子がミステリアスな…

匂い立つミラクル『大きな玉ねぎの下で』(中村 航)

爆風スランプってバンドを知ってるのは だいたい40代以上になるんだろうな? その人気グループの名曲の詞を元にして 想像を膨らませて描かれたのがこの作品。 8月22日発売なので作問向け選書には 厳しい時期だが出題者はズバリ世代かも。 切ない恋の物…

幸あれかし!『未来地図』(小手鞠 るい)

人に助けを求めることを恥じらってはいけないと思うんだ。(本文より) 児童書コーナーにある著書とは一味違う 昨年10月に出た大人の恋愛小説ですわ。 不勉強な俺は作者の道徳色の濃い本しか 知らなかったんだがこの路線もいいな~。 不遇な主人公への共感…

傍観者から当事者へ『東京ハイダウェイ』(古内 一絵)

逃げろって言ったって、一体、どこに逃げろっていうんだよ。家にも学校にも逃げ場なんてないじゃないか。(本文より) 去年作った出典予想ランキング41位の 『百年の子』は俺の最推しだったりする。 中学受験や発売日による補正抜きにして 好きな本を選ぶ…

興味の幅を広げてくれる『復活!まぼろしの小瀬菜だいこん』(野泉 マヤ)

伝統野菜っているのはね、ずっと昔から、限られた地域でつくられてきた野菜のことだよ。(本文より) 伝統や文化の継承に貢献しそうな作品は プラスアルファの価値があると俺は思う。 今回の紹介作品もそんな一つになるよ~。 F1種って言葉、俺は知らなか…

きらめく青さは流麗に『春のほとりで』(君嶋 彼方)

自分の本心から好きなものが理解され共感されるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。(本文より) 物語が予想外の方向に進んだりするとよ、 オォ!って驚かされることになるよな? ただし、思わぬ展開に行く際に説得力が 足りないと読者は取り残されち…

私は上手に笑えない『ちゃっけがいる移動図書館』(髙森 美由紀)

自分にはないものを得るための努力に、ゴールはあるのか。考えると深い穴に落ちていきそうになる。(本文より) 登場人物に自分を重ねることあるよな? そうなると作中の世界により入り込める。 俺はこの作品の上手に笑えない主人公に メチャメチャ共感しち…

出題されるかもしれない新刊本(2024年11月前後)

11月は凄い新刊のラッシュがくるよ~。 上旬から注目作家の作品が続いていくし 中旬には講談社児童文学新人賞の佳作本 2冊同時発売も控えていてかなりアツい。 さらに下旬には有力な出題候補作もある。 12月にも超ヤバい企画が控えてるな~。 以下のリ…

実話ベースゆえのリアル『あしたの笑顔』(横田 明子)

何それ。いくらほのちゃんに障がいがあるからって、犬と同じにしてほしくないんだけど。(本文より) 去年の11月に発売された作品なんだが アンジェルマン症候群はこの本で知った。 知的障害や発育遅延等の症状がある一方、 ニコニコしているってのも特徴…

小学生禁止?『小鳥とリムジン』(小川 糸)

がんばれば道は拓けるなんて大嘘だ。そんな戯言は、努力すれば何とかなる状況の人が、口先だけで言っているに過ぎない。(本文より) 醜い感情と美しい愛情のギャップが凄い たまに入試に出る作家の今月の新刊だよ。 これは小学生には見せられないかもな~。…

変化に富んだエピソード『くらくらのブックカフェ』(廣嶋 玲子, まはら 三桃, 濱野 京子, 工藤 純子, 菅野 雪虫)

物語は、登場人物の気持ちが自分とぴったり重なってくると、読むのが断然楽しくなる。(本文より) 児童文学界の大御所5人が揃い踏みだ! ユニークなのは、作家がリレーのように 短編のバトンを繋いでいく形式なところ。 かつSFや怖い話もあって盛りだく…

原風景を求めて『夢でみた庭』(長崎 夏海)

10年前に発売された坪田譲治文学賞の 『クリオネのしっぽ』の続編らしいけど 前作を未読でも違和感は覚えなかったよ。 先にコチラを読んでもたぶん大丈夫だわ。 ヤングケアラーばりに自分を犠牲にして 家族のためにとがんばる少女が主人公だ。 低温気味の…

読書に親しむ、はじめの一歩『だるまさんがころんで』(林 けんじろう)

こんな手ごろなところに全国への挑戦の場がある。その頂きに登りつめれば、一躍ニュースとしてとり上げられる。(本文より) だるまさんがころんだって遊びのことを 知らないってヤツはたぶんいないよな? でも、その子どもの遊びが磨き上げられ 極上のエン…

心に羽を『ハロハロ』(こまつ あやこ)

私の声は、今までの人生で一番遠いところに届いてるんだ。(本文より) 読めば明るく楽しい気持ちになれる新作。 デビュー作は講談社新人賞で最頻出作品、 2作目以降も割と入試に出ている作家の 12月上旬頃に発売される予定の作品だ。 内気な少女が楽しい…

成瀬と違う強めヒロイン『婚活マエストロ』(宮島 未奈)

どう考えても鏡原さんはもっと大きな企業で人材育成をしたほうがいい。(本文より、主人公がヒロインから受けた印象) 成瀬シリーズで本屋大賞などを受賞して いま勢いのある作家のもうすぐ出る本だ。 この先生が描く強い女の魅力はケタ外れ。 今作では、地…