中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

出題されるかもしれない新刊本(2024年7月前後)

7月発売の本はちょっと少な目のようだ。 いつも言ってるが、大部分が未読なんで 多分出題向きじゃない本も混じってるよ。 7/1発売 『いつか、あの博物館で。: アンドロイドと不気味の谷』(朝比奈 あすか) 4人の中学生男女の3年間を描く群像劇。 7/18発…

情熱よ、燃えうつれ『光の粒が舞いあがる』(蒼沼 洋人)

つらいときは、今までもたくさんあった。そのたびに息を吸って、歯をくいしばって、がまんしなきゃ、って自分にいいきかせてきた。(本文より) 前作のクオリティはハンパじゃなかった。 作問後の8月末に出たため中受界隈では 注目されなかったが2ヶ月早く…

疎外感と生きてゆく『あの空の色がほしい』(蟹江 杏)

ママは私をユニークな子だって言ってたけど、私だって本当は自分が仲間はずれにされるのが怖いんだ。(本文より) 頻出作家を追っていては気づけない新作。 画家が初めて描いた小説ってことなんで あんま期待してなかったが、超いいわ~。 所謂発達グレーゾ…

エピソードに宝あり『女の子たち風船爆弾をつくる』(小林 エリカ)

「ごきげんよう」は伝統あるこの学園発祥の挨拶なのだから。(本文の跡見学園を描いたパートより) 麹町学園の歩みを紹介する公式ページに 戦時中、雙葉や跡見の生徒たちとともに 風船爆弾の製造に従事したと書かれてる。 何を作っているのか知らされないま…

未来を照らしてくれる『いつか月夜』(寺地 はるな)

なんでわたしが親の都合で住む家をここまでコロコロ変えられなあかんの。(本文より) 『タイムマシンに乗れないぼくたち』や 『水を縫う』で有名な著者の8月の新刊。 ひとことで言うと、煮え切らない青年が 出会いをきっかけに変貌を遂げる物語だ。 道に迷…

終末のドラマ『それでも私が、ホスピスナースを続ける理由。』(ラプレツィオーサ 伸子)

人生は作者のいない物語だ。(本文より) 教師だった母は志願して病院内の学級に 赴任したが長くは持たず異動を願い出た。 教え子の命の灯が次々と消えていくのが 繊細な俺の母にはつらすぎたんだろうな。 さて、今回紹介する本は、死にゆく人に 向き合い、…

救いの泉『あなたの言葉を』(辻村 深月)

学校のテストと違って、実は世の中には「正解」がないことがほとんどです。(本文より) 毎日小学生新聞に連載されたエッセイ集。 子どもたちに上からではなく同じ目線で 語りかけるから共感を呼びまくりそうだ。 つらい気持ちを救ってくれるさまざまな エッ…

『きみの話』の快記録

『きみの話を聞かせてくれよ』といえば、 今年の入試で話題をさらった作品だよな。 現在わかっているだけで出題校数21校。 これは今年だけでなく、過去に遡っても 出題件数の新記録になるんじゃないかな。 【2024年中学入試出題21校リスト】 駒場東邦中学…

家族の絆が沁みてくる『みかんファミリー』(椰月 美智子)

割と入試で見る作家の8月に出る新作だ。 近年のこの先生の作品の中では多分最強。 中1女子の困惑に満ちた新生活ってのに 引き込まれ、家族の気持ちの移ろいには もう完全にノックアウトされちまったよ。 テーマも文章難易度も素材にピッタリで、 それでい…

そこかしこに人生訓『6days 遭難者たち』(安田 夏菜)

こんな山、どうってことないって思ってたのに・・・・・こんなことになるなんて。(本文より) 安田夏菜先生の先月発売された新作だよ。 現実に折り合いをつけることに悩んでた 3人の女子高生が山で絶体絶命に陥る話。 追い込まれた彼女たちがどう変わるか…

葛藤が心を射抜く『王様のキャリー』(まひる)

この俺が、わざわざお前のために嫌なこと我慢すると思うか?(本文より) 講談社児童文学新人賞の大賞受賞作だよ。 発売日は2ヶ月以上先の8月下旬ですわ。 eスポーツをめぐる友情を描いた新作だ。 ふだんは本に見向きもしない子たちさえ 振り向かせるよう…

その印象はどう変わる?『きらいなあの人』(工藤純子, 蓼内明子, 花里真希, 黒川裕子)

傷を治すためには、痛くても怖くても、ほんの少しだけ勇気を出さなきゃ。(本文より) 入試でおなじみの作家さん達が揃い踏み。 君色パレットシリーズ2期の注目作品だ。 タイトル通り嫌な誰かが登場するんだが もちろんそのままで終わらないんだな~。 各話…

令和のクラスメイツになるか?『6年1組すきなんだ』(吉野 万理子)

大人になるというのは、自分のすきなものにお金を使えるようになる、ってことだと思うな。(本文より) 一話10ページあまりでサラリと読める 6年男女15人の視点で描かれた短編集。 ここではあえて紹介してこなかったけど、 この短編小学校シリーズは5…

あきらめない、くじけない『浅草蜃気楼オペラ』(乾 緑郎)

帝劇でも、ローヤル館でもない。自分が一番輝ける場所は浅草だった。(本文より) かつて大正の頃、活動写真が流行る前に 浅草で歌劇ブームがあったってハナシだ。 大衆の中で燃え広がったオペラへの熱は 時代や世相に流されつつ冷めてくんだな。 その浮き沈…

脇役が舞台に!『なんでもないあの人』(濱野京子, 林けんじろう, 椰月美智子, 昼田弥子)

人間は、わからないことがそこにあるなら、わからないまま向き合うしかない。(本文より) 多様性をみつめるショートストーリーが うたい文句の君色パレットシリーズ2期。 豪華な作家陣がズラリと並ぶ凄い企画だ。 収録作品『レッドさん』(濱野 京子)『福…

こんな爽快なのアリ?『夜と跳ぶ』(額賀 澪)

そう、スケートボードはストリートで生まれたスポーツなのに、街では邪魔者なわけ。(本文より) 割と入試に出る作家の来月発売予定の本。 スケートボードって珍しい題材を扱うよ。 パリ五輪に無関心すぎる金メダリストと 五輪を撮りたくて仕方ないカメラマ…