中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

もう一度、あの場所で『八月の御所グラウンド』(万城目 学)

3ヶ月早く出ていれば2024年入試で 台風の目になっていたかもしれない作品。 入試ではあまり見ない著者の新作だけど 書店で目立ってたし出題者も多分気づく。 駅伝の話と草野球の話の二編が入ってる。 青春+駅伝=出題の公式に当てはまるし、 『十二月…

強烈にメッセージが響く『溺れながら、蹴りつけろ』(水瀬 さら)

あたしたちにとっては学校は世界のすべて。だからこの場所で生きづらくなったら、もうおしまいだ。(本文より) ラノベ寄りの作風だった著者の新作だわ。 中受界隈ではノーマークなんだろうけど この作品の訴求力は期待値を越えてたわ。 ただ、中盤までは結…

ヨソ者少女の真意『ぼんぼん彩句』(宮部 みゆき)

売れてる短編集等で主人公が子供の話は 大人向けの本でも入試でよく選ばれるよ。 ただ『ぼんぼん彩句』はベストセラーで 子供視点の短編も多いんで注目してたが あんまし素材の使い勝手は良くなさそう。 すごく惹かれるし面白くもあるんだけど、 サスペンス…

大輪の華『夜空にひらく』(いとう みく)

この界隈ではシリアスみくは注目度大と 断っておいたがさらに上をいかれたわ~。 純粋に物語として面白く得るものが多い。 かつ伝統文化の継承にも貢献しうる内容。 しかも花火にまつわる知識が増えるから 花火鑑賞をいっそう楽しめるようになる。 何かの賞…

これもイイネ『ひとっこひとり』(東 直子)

人は裏切るが、自分で身につけたものは自分を裏切ったりしない。(短編『覚えてる?』本文より) たまに入試に出る著者の7月の新作だわ。 歌人だけあって言葉選びがすごいっすね。 大人向けの作品だと思うが読みやすいよ。 品揃え豊富な12編が詰まった短…

ただでは終わらせない流儀『それは誠』(乗代 雄介)

こんなことして先生たちだましてんの、うちの班だけでしょ、絶対。(本文より) まれに出題される作家の新作なんだけど 芥川賞候補作なので注目度は高めだろう。 主人公が高校生って点も気になるところ。 大人向けの小説でも、学生視点の作品は 作問者に選ば…

出題されるかもしれない新刊本(2023年9月前後)

9月以降に出る作品はその年度の入試で 国語素材に選ばれることがほとんどない。 桜蔭中のようなごく一部の例外はあるが、 多くの先生方はもう作問に着手している。 そういう際どい時期の新刊本紹介ですわ。 なお、公立高校の入試問題では10月や 11月の…

知らない世界を感じさせてくれる『リスペクトR・E・S・P・E・C・T』(ブレイディ みかこ)

あたしたちは、弱いものを守らなきゃいけないときに初めて強くなれる。(本文より) 2023年入試向けの出典予想で6位の 『ぼくイエ2』は出題が確認できないが 1の方は今年も出てたし引続き要注目か。 さて、今回紹介するのは今週発売の新作。 女子学院…

コロナ禍に揺れる学生たち『おくることば』(重松 清)

もしもウイルスがなかったら、いま、どんな三学期なんだろう、って。そういうのをずっと考えてる。(短編『反抗期』の本文より) 読めばあとからじんわり来るのが重松節。 ただし、この本は早大の教え子たちへの 私信のような話が半分近くを占めている。 と…

新しい世界の扉がひらく?『物語の種』(有川 ひろ)

抜群の安定感を誇るあの有名作家による 好きをとことん突き詰めた短編集ですわ。 わりと入試に出てる著者ではあるんだが この作品はさほど使いやすそうではない。 10編には子供視点の短編も含まれるが 会話などのちょっとノリが軽すぎる印象。 書店で平積…

未来を信じさせてくれる『私たちの世代は』(瀬尾 まいこ)

『夏の体温』が2023年入試で最頻出。 そんな作家が先月出した注目の新作だわ。 子ども時代にコロナ禍を経験した2人の 大人時代と子ども時代を交互に描いてる。 はじめは時間軸の移ろいに戸惑うかもな。 ま、素材文適性が高い作品なのは確かだ。 全体を…