中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

オトナの恋の物語『人魚が逃げた』(青山 美智子)

本当にやりたいことを見つけ、育て、その手につかんだ我が子を、自由にさせるのが親の務めなのではないか。(本文より)

 

例によって話がリンクしあう連作短編集。

 

先月のテレビ番組で、これまでの著作の

すべてが中学入試の素材に採用された

紹介された先生の1ヶ月後に出る本だよ。

 

たぶん作問者にもファンが多いんだろう。

となりゃあ注目しないわけにいかないな。

 

銀座の街に現れたミステリアスな青年が

脇役ながら面白い役割を演じる作品だよ。

 

テーマ注目度、素材文適性はともに〇印。

大人向け作品のわりには読みやすだろう。

子どもに見せられないシーンもなかった。

 

届くべき人のところに、届くべきものが

届きますように、という著者のねがいは

間違いなく現実になっていく気がするよ。

 

以下は出版社に送ったレビューの中盤だ。

 

これまでの作品にくらべ恋色が強めですね。

主要キャラの関係性は、恋人や夫婦、あるいは親子など。

それぞれにままならない思いを抱える主人公たちが、銀座の人魚騒動にかかわるなかで、何ものにもかえがたい気づきを手にしていきます。

 

思わぬ背景が明かされて物語が縦横無尽に躍動する5章の魅力が凄い!

1章の伏線がババババッと回収される妙技に息をのみましたよ。


なんて素敵すぎる奇跡。

とろけるような巡り合わせ。


夢が現実になっていく浮遊感が脳へダイレクトに響きわたりました。


恋愛や家族愛が柱となる作品ですが、それだけで終わらないところもいいですね。

この作品がくれるひらめきは、人生のあらゆるシーンで活きてくるんじゃないかな?

 

勇気をくれる一冊(11/14発売予定)

 

あなたが書いた一行で人生が変わる人がいるかもしれない。(本文より)

 

出題されるかもしれない新刊本(2024年10月前後)

10月に出る新作はちょっと少な目かな。

 

以下のリストは大部分が未読ってことで

たぶん出題向きじゃない本も混じってる

 

10/9発売 ☆先行レビュー済☆

『森と、母と、わたしの一週間』(八束 澄子)

疲弊した少女が自然の中で手にするもの。

 

10/9発売

『小鳥とリムジン』(小川 糸)

宣伝文句は「愛することは、生きること」

 

10/11発売

『チカクサク』(今井 恭子)

心の傷を越えて成長してゆく少年の歩み。

 

10/23発売

『晴れ、ときどき雪』(小手鞠 るい)

一粒で五度おいしい?十代の恋愛短編集。

 

10/23発売

『白紙を歩く』(鯨井 あめ)

陸上部と小説家志望、女子高生達の友情。

 

10/29発売

『銀樹』(森埜 こみち)

みなしごが引き取られたのは薬師の庵で。

 

11/6頃発売 ☆先行レビュー済☆

『雫』(寺地 はるな)

中学の卒業制作班のメンバーたちの人生。 

 

11/14頃発売 ☆先行レビュー予定☆

『人魚が逃げた』(青山 美智子)

5人の主人公と銀座の人魚騒ぎの関わり。 

 

11/14頃発売 講談社児童文学新人賞 佳作

『ピーチとチョコレート』(福木 はる)

ラップとの出会いが少女にもたらす衝撃。 

 

11/14頃発売 講談社児童文学新人賞 佳作

『15歳の昆虫図鑑』(五十嵐 美怜)

虫オタ転校生が悩める子にくれる気づき。 

 

11/28頃発売 ☆先行レビュー済☆

『ワルイコいねが』(安東 みきえ)

正直すぎて浮く転校生と少女の友情物語。

 

12/6頃発売

『ショコラ・アソート あの子からの贈りもの』(村上雅郁)

メモリアルスピンオフに黒野は来るの?

 

12/18頃発売

『あたたかな手 なのはな整骨院物語』(濱野 京子)

駆け出しの柔道整復師が弱さと向き合う。

 

10月の注目作の一つ

八束先生は癒しがたっぷりある作品だよ。

小川先生はベストセラーになりそうかな。

今井先生は素材適性が高そうなあらすじ。

小手鞠先生の恋愛小説には期待しかない。

森埜先生はおそらく新境地になるだろう。

 

当面の新作情報は、判り次第この記事に

書き加えるつもりなんで、宜しくたのむ。

 

出たばかりの作品では、伊与原新先生

短編集『藍を継ぐ海』の注目度がMAX。


発売済みで今後レビューしたい新作

『われは熊楠』(岩井 圭也)

『あなたを待ついくつもの部屋』(角田 光代)

『常夏荘物語』(伊吹 有喜)

『藍を継ぐ海』(伊与原 新)

『くらくらのブックカフェ』(廣嶋玲子、まはら三桃、濱野京子、工藤純子、菅野雪虫

 

【お薦め記事】

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入試問題の難易度を偏差値化する(算数編)

わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

ネットリテラシー的にもアリ『オンライン・フレンズ@さくら』(神戸 遥真)

悪気のないその言葉に対し、わたしはどういう感情を持つのが正しいんだろう。(本文より)

 

8月に同時発売された作品の2つ目だよ。

 

前回@ユナを先に読むように勧めたけど

女子が読む場合は先にこちらでもOKだ

 

浮き立つ少女の気持ちを描く書き出しは

つかみとして抜群の訴求力があるからよ。

 

素材文適性は相対的に@ユナの方が高め。

ただ@さくらは狙い目パートが複数ある。

 

保健室で苦手な子と本音で語る場面とか

終盤の母と腹を割って話す場面がよさげ。

 

ネット利用のルールを学ぶって視点では

@さくらの方が得るものが多いだろうな。

いいタイミングで親の助言が入るからよ。

 

以下はオレのレビューからの一部抜粋だ。

 

主人公は顔のアザと生きる中学一年生。

好奇の視線や同情に委縮しながら生きていた彼女が、同じマンガにのめりこむネッ友との交流で少しずつ羽を広げ、身近な困り事にも正対する勇気をもらいます。

葛藤ズズーン!な趣がありますが、その分だけ反動の飛翔が際立ちますね。

邂逅シーンは@ユナパートの方も読まないと損!

軽い文体で重いテーマを描き上げ、しかもワクワクしながら読める凄い一冊です。

 

軽すぎると予想して一旦スルーした俺は大バカでした(2024/8発売)

先に読むならコチラ『オンライン・フレンズ@ユナ』(神戸 遥真)

”友だち”なんてものは本当にあやふやで、すぐに形を変える。(本文より)

 

たまに入試に出る作家の8月に同時発売

された2冊のうちの一冊を紹介してくよ。

 

ネット上の友だち関係を双方の視点から

描いたとってもユニークなストーリーだ。

 

@ユナと@さくらはどちらから読んでも

OKということになっているんだけどよ、

オレとしてはユナを先にするのを薦める

 

@さくらは女子視点のワクワクな描写が

とくに男子には最初の壁になりそうゆえ。

 

その点、こっちを先に読んでさえいれば、

向こうの心理に興味がわくこと請け合い。

 

難なく書き出しの壁をクリアできる筈だ

 

素材文適性は3章の合唱部朝練パートで

女子部員と激しいやり取りをする場面や、

あえて空気を読まずに動く場面が高そう。

 

俺のレビューの中核を以下に付けとくよ。

 

主人公は私立中学の二年生。

小学校からの同志や部活の女子との友だち関係に思い悩んだ彼が、趣味つながりのネッ友と交流を重ねるなかで、リアルでも活かせる価値観を手にしていきます。

オンラインのやり取りが、いつしかお互いを高め合うものに発展していく流れにうっとりしましたよ。

そして、誤解や秘密の行方にはハラハラ。

さらには急展開で酸欠に!

楽しさ溢れる一冊ですが、友だち関係の複雑さには真実味がありました。

 

『オンライン・フレンズ@ユナ』感想・レビュー

 

主人公は目指した私立中に親友とダブル合格した(2024/8発売)

 

わかりあえないことを確認するために、話をすることも大事なのかもしれない。(本文より)

 

くたびれ女子のリブート『森と、母と、わたしの一週間』(八束 澄子)

人生って不思議よねえ。なにがターニングポイントになるか、わからない。(本文より)

 

たまに入試にでる作家の来月の新刊だよ。

発売日は約10日後の10/9の予定だ。

 

少女の成長物語の中に田舎の魅力が満載。

都会っ子の価値観を変えてくれるかもな。

 

森林資源の課題なども掘り下げているし

ユニークな教育法にも光を当てているよ。

 

それゆえ、かな~り勉強になるんですわ。

 

人付き合いに疲れた中学生は、別世界で

どんな出会いをしてどう変わっていくか。

 

転換点の前と後のギャップも楽しいよ~

 

文章の難易度は入試では標準的なレベル。

俺のレビューを少しだけ付けときまっせ。

 

子どもたちの躍動感が元気をくれる一冊ですね。

私も負けていられないって感じましたよ。

主人公は人間関係に疲弊した14歳。

祖母が遺した家に行ったきりの母を追い求めた彼女は、街の喧騒から逃れ、田舎の駅に降り立ちます。

ボロボロの少女に立ち直るきっかけをくれたのは、驚いたことに、ちっぽけな森の勇者たちでした。

 

林業が直面する課題にも触れる奥深さ(10/9発売予定)

 

山ってほんとうに豊か。なんで昔はここになんにもないなんて思いこんでたのか、自分でもあきれる。(本文より)

 

アレから一つ選ぶなら『今日も誰かの誕生日』(二宮 敦人)

ほどよい長さの短編が掲載されてるため

わりと入試に使われる季刊児童文学雑誌

飛ぶ教室の作品を今年も見ていくよ。

 

昨年10月発売の75号から今年の7月

発売の78号までの4冊が今回の対象だ。

 

連載スタートした去年も紹介したんだが

この1年に限っていえば最も注目なのは

『今日も誰かの誕生日』になるだろうな。

 

情けなすぎるエアコン修理屋の男の話や、

気難しいケーキ屋と女の子の話もいいが

77号の八百屋バイトの娘の話が最推し。

 

店主の爺の誕生日を祝おうとするものの

徹底して避けられた彼女はどうするのか。

 

詳細は本誌のほうで味わってみてほしい。

 

76号『魔法竜の由来』鉄人会さん

紹介されてたがタイトルの印象とは違い

ファンタジー要素がまったく無い短編だ。

 

由来不明の祖父の遺品に関心をいだいた

少年が職場体験でヒントを得るって話で

確かに素材文適性はありそうな感じかな。

 

缶ぽっくりの思い出『パカポコの話』

エッセイにも魅力的な作品が多かったよ。

 

やっぱし、これからも『飛ぶ教室』から

目が離せないとあらためて実感したわ~。

 

『今日も誰かの誕生日』は飛ぶ教室73号から78号に連載されていた

 

暗闇に光を『灯』(乾 ルカ)

お金や恋人は離れていくかもしれないけど、身につけた知識や資格は、ひとりぼっちの無一文になったとしても決して離れていかないわ。(本文より)

 

先日放映された番組でSAPIX調べの

今年の中学入試に出た作家ランキングを

紹介してたんだが乾先生は第8位4作品

 

そんな注目の作家の8月に出た作品だよ。

 

人と一緒にいるのが苦痛な女子高校生が、

思わぬ人と再会を果たし影響を受ける話。

 

親のエゴが搦め手のように少女を蝕むが

友人達との関わりが救いになってくんだ。

 

気づきを得た主人公の決然とした行動に

読者はたぶん驚かずにいられないだろう。

 

難易度はやや難といったレベル感だった。

以下は俺のレビューからの一部抜粋だよ。

 

歩み寄ることは大事だけど、それだけが答えじゃないと教えてくれる珍しいタイプの物語でした。

主人公はどこまでも孤独を愛する高校生。

世間との隔たりに暗澹たる思いでいた彼女が、心のよりどころを見い出し、その光明にむけ果敢に踏み出すさまを描いた作品です。

 

『灯』感想・レビュー

 

北海道で3~4番目という進学校が舞台(2024/8発売)

 

私は自分がこんなに勉強に打ち込める人間だということを知り、驚いた。(本文より)