中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

世界が塗り替わる瞬間『雨色のキャンバス』(七海 まち)

私はずっと、見ないふりをしてた。私が、「普通」じゃないこと。(本文より)

 

トラウマまみれで自信ゼロという少女が

別室登校の教室のヌシとの関わりにより

大切なものを取り戻してくストーリーだ。


視点が変わることでまるで違った景色が

眼前に現れるってのが衝撃過ぎてヤバい


このまさかはまったく予想できなかった。


幅広い視野をもって知ることの大切さや

偏狭な視点で思いこむことのおろかさが

物語を通じてジュワ~っと浸透するよ~。


素材文適性は最初のノートや例の子への

距離感が初めて変わるあたりに微量かな。


難易度普通の本作への感想はこんな感じ。

 

主人公はトラブルで教室へ行けなくなった別室登校の少女。

心に深い傷を負った彼女が、変わり者との出会いをきっかけに、自分のあり方を見つめ直していきます。

 

名画の見方って面白いんですね。

絵画の決まり事を知ることで、一定の解釈が生まれたり、想像力が膨らんだりするさまは興味深いものでした。

 

そこから身の回りの世界の見方まで変わるところが本作のユニークなところ。

 

世界からはぐれていた二人に芽生える気持ちが、きっと未来を支えてくれると思えるストーリーが美しいです。

 

『雨色のキャンバス』感想・レビュー

 

自分を変える気づき(2026/6発売)

 

教室は海だ。友達は、その中でうまく泳いでいくための浮き輪。浮き輪がなくなったら、沈んでしまう。(本文より)

 

遠く思いを馳せるとき『白い犬──あの日の行方』(おおぎやなぎ ちか)

のどかだな。この人達は、津波を見なかったんだな。(本文より)

 

子どもの時にだけ訪れる不思議な出会い。

 

これはトトロの主題歌の一節なんだけど

そういった夢のある話って救われるよな

 

成長するにつれて失われた大切な物への

郷愁を感じさせてくれる物語だったわ~。

 

心に傷を負った少年少女の深層も凄いの。

 

様々な不幸に見舞われて追い詰められた

子どもたちが想像を超える経験に恵まれ

心を解き放っていくさまは素晴らしいよ。

 

不思議をあるがままに受け容れるような

おばあちゃんの温かい言葉も胸に沁みる。

 

大切なものを守ってくれるナニカの存在。

俺もそれを信じたくなっちまったほどだ。

 

みちのくとは道の奥、すなわち僻地的な

意味合いを持つ言葉からきているそうな。

 

これはこの作品のおかげで得られた知識。

 

ストーリーは平易で文章難度は普通寄り

思い描く力を刺激された俺の感想は以下。

 

幼い頃にしか感じられなかったもの。

いまは記憶の彼方でも、それは確かにあったのだと、子育てをしながらしみじみ思うことがありました。

 

主人公はつらい現実にさいなまされる小学六年生たち。

心が一杯いっぱいな彼らが、奇跡のような出会いを支えにして、安らげる時間を手繰り寄せていきます。

 

哀しみに染まる子供心が切なすぎる!

どんな形でも救いが湧き出てくれてよかった~と思いましたよ。

 

少年の胸の中で炎のように煌めく優しさとひたむきな想いにもグッときました。

 

これは自由に想像を膨らませる幸せを思い出させてくれる一冊ですね。

 

贅沢な時間をありがとう!

 

『白い犬──あの日の行方』感想・レビュー

 

迫真の震災描写も(2026/6発売)

 

あの日の記憶は頭の中に沈殿したままだ。一日一日を生きるのが精いっぱいだった。(本文より)

 

誰よりも気儘で正直な『けんちゃん』(こだま)

働き始めて一ヶ月だけど、これまでの七年が霞むくらい毎日が濃い。(本文より)

 

特別支援学校に通う一人の少年に出会い

圧倒的な存在感に惹きつけられた面々が

それぞれの道をあゆむヒントをもらうよ。

 

助けられたり支援してもらう存在という

先入観をかっ飛ばす18歳男子がいいわ

 

彼の自由さからまったく目が離せないの。

 

本作は人と違うことを特別視する世間の

風潮にちょっと待てよと語りかけてくる

 

それでいて障害にまつわる負の部分まで

描く誠実さがあり、しかもガチで面白い

 

これほどの小説にはなかなか出逢えない。

 

来年の本の甲子園で北海道代表になれば

相当勝ち上がると思うんだがどうだろう。

 

素材文適性は誰にも言えなかった感情が

溢れ出る中で自身の気持ちに気づく夜や、

新米記者の感情の振れ幅のあたりに少々。

 

魅力あふれる本作の難易度はやや難かな。

以下、彼の自由さに憧れた俺の感想っす。

 

ただ生きているだけでみんなの関心を集める天真爛漫なけんちゃんにかかわり、心を動かされる人々を描いた短編集です。

 

障害にまつわる様々な論点をあますことなく伝えてくれる稀有な一冊でした。

 

障害を美談に仕立て上げる風潮に一石を投じる言葉たちは鮮烈そのもの。

 

なぜ「私が支援学校なんかに?」という心理が描かれた話では、当事者が最も幸せになれる選択について考えさせられました。

 

主人公は支援学校の先生やローカル誌記者、コンビニ店員、下級生などさまざま。

彼らが抱え込む悩みや葛藤に、何もかもオープンなけんちゃんのありようが光明を与えるさまがとびっきりスマイリー!

 

個性の見方が変わる!(2026/1発売)

 

あたしは「ふつうじゃない側」の人間なのだと明確に線を引かれた気がした。(本文より)

 

街の魅力も香り立つ『海のほとりのプラネット』(義井 優)

それは下校のチャイムが鳴った直後に、さっさと一人で校門を潜り抜けていた頃には知り得なかったものだった。(本文より)

 

これがデビュー作って先生の連作短編集。

 

若い引きこもり女子や、流される中年男、

家事に燃える少女などさまざまな個性が

こじらせ人生を乗り越えていく物語だよ。

 

『晴れ時々、曇天娘』は家族とすれ違う

寂しさに染まっていた女性が迎える転機。

 

過ちと向き合う勇気にグッとくるうえに

娘に歩み寄るさまも胸に染みてくるのよ。

 

『家庭科室の三惑星』は中学生達が躍動。

 

つぶれそうな地学部の助っ人に乞われた

二人の少女が理科の魅力を知ってく話で

不器用な少年へ感情移入しまくったわ~。

 

しかも知識面でもかなり勉強になるんだ。

 

潮の満ち引きに月以外も影響するだとか

土は地球にしか存在しえないってネタは

どこかで使えそうだからしっかりと記憶。

 

素材文適性はわりとあったように思うな。

とくに上記の二つの短編は多めかな~と。


問題文に使えるかもしれない箇所

△サーファー女子に体験談を語りかける

△奮闘に触発されて湧きあがる感情の波

△職人のこだわりに触れて変わる人物観

〇地学の面白さに触れた少女たちの日々

〇少年が語るフィールドワークへの思い

△まさかの勧誘からのほほえましい歩み

 

難易度はやや難といった水準になるかと。

以下、初めましてのごあいさつレビュー。

 

迷える人びとのささやかな気づきと前進が力をくれますね。

鎌倉の魅力がこれでもかと詰まった作品でもありました。

 

視点の切り替えで登場人物がちょっとずつ繋がるなかで、馴染んだ彼らの変わりように出会えるのが嬉しかった!

 

親視点の話には、自分と重なるところがあっていっそう入り込めましたよ。

 

とくに面白かったのは家事プロ少女の一筋縄でいかない青春ですね。

気づけば、心やさしい彼女が自分の人生を楽しむ方向に舵を切るのを、祈るような気持ちになっていました。

 

やたら強引だけど憎めない老婆の生き様にも注目ですよ~。

 

『海のほとりのプラネット』感想・レビュー

 

あたたかな視線がくれる癒し(2026/6発売)

 

花が土の中の養分を吸い上げるように、この子達は自分に必要だと思った何かをどんどん吸収していける。(本文より)

 

困難の先にある『可能性を信じて』(日本児童文芸家協会 編)

かなわないってわかってても、願いたいことがあるよね。(本文より)

 

10分後にココロに効く短編集の第三弾。

 

サクサク読めるけどテーマに芯があって

ひらめきや発見に出会えること請け合い

 

何度も読み返したくなるアンソロジーだ。

十代が共感できる新鮮なネタもたっぷり。

 

『カノープス』は傷ついて心から好きと

思えることに向き合えなくなる少女の話。

 

憧れの人との関わりで動き出す気持ちが

読むほうの心も揺さぶってくるんだわ~。

 

何が凍りついた感情をとかすか要注目だ。

 

『言ってよ、栗ちゃん』は漫画家志望の

少女の燃える感情がぶっ刺さる話だった。

 

ちゃんと向き合うことで気持ちが動いて

前向きな行動に繋がるさまが爽快なんよ。

 

やはり子供を子供扱いしない方がいいと

ストーリーが目を逸らさずに訴えてくる。

 

素材文適性っていう観点だとこの2篇が

9つの作品の中では高かったように思う。

 

あと不器用女子の『ありのまま宣言』

愉快なドタバタシナリオに差し込まれる

気づきなんかにもあるかもしれないな?

 

彼女が失敗を重ねつつ導き出した結論は

メッチャ微笑ましくって気持ちが緩むよ。

 

他にもオチが最高だったり不思議要素に

惹かれたりと彩り豊かで楽しさが大渋滞

 

平易で幅広い層に薦めやすいのもウリだ。

以下はレビューを少し手直ししたものだ。

 

歯がゆい現実への苦悩がまるで自分事のように響いてきました!

細やかな人間関係の機微にも吸い寄せられましたよ。

 

なんて揺さぶって来るんでしょう。

 

『金曜日のやきそばフォカッチャ』では悪い方へ膨らむ想像、妄想、暴走に共感しっぱなしでした。

この悪循環は身に覚えがありすぎて。

煮詰まっていた主人公に声掛けしてくる意外なキャラはまるで著者の分身のようでニンマリ。

感謝を伝えることの意味が、好循環のきざしが、胸にジュワ~っと沁みる作品でした。

 

『愛され顔になりたい』は、大人も子どもも、多くの人が抱えるだろうコンプレックスを白日の下に晒します。

友だちの意外な言葉からの気づきと、芽生える想いが清々しいですね。

そしてパパのうざったい優しさにほっこり。

イギリスで「かわいい」は子どもっぽくて残念って意味、みたいに、どこかで使えるネタもあってフムフム。

 

『ディア・ダンデライオン』は、向う見ずな少女のちょっとした冒険。

彼女のことをわかってくれる友人のピンチにしゃしゃり出る瞬間が最高すぎる!

いい人との出会いも心に効くんです。

終幕に向けてじわじわ口角が上がる物語でしたよ。

 

その他にも人生を好転させてくれそうな気づきが盛り込まれた作品が多く、一読してハイおしまいにならない骨太なストーリーがてんこ盛り。

 

どこから読んでも楽しめるこのシリーズは、どれも強気でお薦めできます。

 

収録作リスト

『金曜日のやきそばフォカッチャ』(戸森 しるこ)

『言ってよ、栗ちゃん』(佐原 ひかり)

『真実の鏡』(望月 麻衣)

『ありのまま宣言』(松素 めぐり)

『イレギュラー・バウンド』(山本 省三)

『愛され顔になりたい』(安田 夏菜)

『カノープス』(蒼沼 洋人)

『感情ソムリエ』(村上 しいこ)

『ディア・ダンデライオン』(天川 栄人)

 

心をくすぐる言葉たち(2026/6発売)

 

人生をかけたこのチャレンジに、あたしはついに乗りだすことにした。(本文より)

 

酸いも甘いも糧にして『それでもまた誰かを好きになる~うまくいかない恋 アンソロジー~』(光文社 編)

私は弱い人間だから、誰かに勝手な期待を抱いてしまう。(本文より)

 

朝比奈あすか先生一穂ミチ先生などの

有力作家8人が大人の恋を描いた作品集。

 

恋の色は星の数ほどさまざまにあるから

テーマが固定でもバラエティは豊かだよ

 

明るいテイストで締める話も少なくない。

 

やっぱし思い通りにならないことにこそ

成長の種があるんだと気づかされたわ~

 

踏み出すかどうかさんざんに迷う話では

自信のない主人公への共感が溢れまくり。

 

一目ぼれから日常が彩られていく短編は

読んでいて幸せな気分が感染してくるの。

 

まあ、難しい上にあんま子供向けでない

エピソードもあるわけだけど面白い本だ。

 

以下、物語に惚れちまった俺のレビュー。

 

大好きな作家さんたちがズラリ居並ぶ恋愛アンソロジー8篇。

 

このままならなさ、どうしようもなさ、共感がありすぎる!

合理的じゃないってわかってるのに、わかってないような行動をするさまとか見せられると、同志のような感情さえ湧きましたよ。

 

特に好きなのは『出会い』のピュアな振る舞いと清々しい決意。

ガツンと引っ張り込まれたのは『不機嫌依存症』の突き抜けたエキセントリックさですね。

 

他にも感傷、憧れ、嫉妬心、自棄、拙速などが、もれなくのたうちまわる面白さが詰まった短編だらけ。

 

うまくいく恋よりも断然読ませます。

 

最も人を動かすものは恋?(2026/2発売)

 

私の現実逃避じみた考えは、もう自分ではコントロールできないくらい加速してしまっていた。(本文より)

 

しなやかに生きるひと『湾』(宮本 輝)

「中学生になったら男と女は喋ったらあかんのや。そんなこと、常識やないか」(本文より)

 

入試ではあんまし見ない大作家の新作だ。

 

74歳の男が過去を振り返るストーリー

というとインパクトに欠けるかもだけど

目が離せないキャラが出てくるんですわ。

 

主人公の姉にあたるその女性の生き様や

一族の波乱に満ちた歩みに惹かれすぎる。

 

脇役でも少年の導き手になる塾の先生や

集落の問題児など魅力あるキャラが多数

 

当時の地方の暮らしや、時代を象徴する

出来事の数々も関心を惹くものだったな。

 

舞鶴の模擬原爆エピソードは自分自身で

調べて知識を深めるきっかけになったよ。

 

抗ガン剤絡みの吐露にも考えさせられる。

 

素材文適性は6章が際立って高そうかと。

 

伊勢湾台風で被災した学友を交えた対話、

姉の進路話に揺れる子供心あたりがアリ。

 

重厚な大作なので小学生には難しいかな。

以下、感慨とともに綴ったレビューやさ。

 

老境に差し掛かった男がみずからの人生を振り返る物語。

その記憶の多くは、半分血のつながった姉・皐月との特別な絆に彩られていました。

 

主人公の少年時代から描かれていますが、皐月の放つ異彩に見事に絡めとられましたよ。

容貌や性格だけでなく、置かれた微妙な立場の惹きも強力。

 

さらには家族のとんでもない秘密もあって、すっかり物語の世界へ連れていかれましたよ。

 

時代背景の描き込みも丹念で、舞鶴を襲った模擬原爆、伊勢湾台風、原発立地による騒動のみならず、市井の目線で地域を支えた産業の変遷にまで浸れる”濃密な読書時間”となりました。

 

しなやかな強さの吸引力(2026/5発売)

 

皐月ちゃんも、何かを知っているのだ。ぼくの知らないことを知っていて、ずっと隠していたのだ。(本文より)