中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

未来を照らしてくれる『いつか月夜』(寺地 はるな)

なんでわたしが親の都合で住む家をここまでコロコロ変えられなあかんの。(本文より)

 

『タイムマシンに乗れないぼくたち』

『水を縫う』で有名な著者の8月の新刊。

 

ひとことで言うと、煮え切らない青年が

出会いをきっかけに変貌を遂げる物語だ。

 

道に迷ったとき決断を後押ししてくれる

このうえない地図が得られる本だと思う。

 

大人に振り回される中学生の嘆きだとか

心にズシリとくる部分もあったんだけど

そういうのがあるからこそ終盤がキラリ。

 

面白かったのは、女子は好きな人の話が

仲良しのファストパスになるってネタだ。

 

例の難易度分類では難しいになるだろう。

以下は出版社に送ったレビュー全文だよ。

 

「善く生きる」という言葉。

大切な場面で道を誤らないために私もその理念を心に刻みたいと感じました。

 

主人公は父を亡くしてから霊のようなぼんやりした何かを感じるようになった青年。

 

うす気味の悪さに慣れず、塞ぐ気持ちを紛らせるよう真夜中に出歩く日々の中で、彼は思わぬ出会いを重ねていきます。

やがて夜の散歩に加わっていく面々も、それぞれに深い苦悩を抱えながら、ままならない人生を歩んでいました。

 

出会いを大切にしたくなる一冊ですね。

 

確固たる自分がなかった主人公が、真夜中の邂逅を出発点として意志を貫けるようになっていく流れがまぶしくもありました。

正直、途中までは主人公のことを無感動なしょーもない奴だとか、軽んじられるのも無理はないだとか、思わないでもなかったのですが、最後には見事にそんな評価を打ち砕いてくれましたよ。

 

メチャメチャ魅力あるじゃん!

 

「善く生きる」という信条を生き方に落とし込む男の有り様が読者に波紋を投げかけてくる一冊。

 

読み手一人ひとりがその言葉を胸に刻むことで、みんなの明日がほんのり明るくなると信じられます。

 

書影が出たら画像を差し替えます(2024/8/8頃発売予定)

 

たとえばさ、クラスの子と話す時に、「好きな人おる?」みたいな話になるやん。その時、「おる」って答えるのと、「おらん」って答えるのとでは、やっぱり前者のほうが圧倒的に話が盛り上がる。いろいろすっ飛ばして一気に親しくなれる。(本文より)

 

終末のドラマ『それでも私が、ホスピスナースを続ける理由。』(ラプレツィオーサ 伸子)

人生は作者のいない物語だ。(本文より)

 

教師だった母は志願して病院内の学級に

赴任したが長くは持たず異動を願い出た。

 

教え子の命の灯が次々と消えていくのが

繊細な俺の母にはつらすぎたんだろうな。

 

さて、今回紹介する本は、死にゆく人に

向き合い、その願いを叶える職を求めて

渡米したナースの実体験を元にしている。

 

描かれるのは過酷で生々しい命の現場だ

これでよく続けられると何度も思ったわ。

 

病人だけでなく家族のケアでも前に出る。

ほんっとどこまでも頭が下がるお人だよ。

 

何が彼女をそうさせるかは本で確かめて。

 

日本では7割の人が家で最期を迎えたい

のに8割が病院で亡くなってるそうだよ。

 

ホスピスナースって、この国でももっと

普及すべきなんだろうって感じましたわ。

 

入試には髪を寄付するエピローグの逸話

あたりが使えるかもしれないと思ったよ。

 

俺のレビューの断片を以下に付けとくな。

 

夢を叶えるために渡米したナースの実体験をベースにした作品。

自宅での看取り支援という、行きつく先に必ず死がある現場で、使命感に燃える主人公が試行錯誤を重ねながら 奮闘していきます。

身近な人の死を経験したことのある人には、特に響くものがある作品だと思います。

 

『それでも私が、ホスピスナースを続ける理由。』感想・レビュー

 

エモすぎて心にグサグサくるかも(2024/4発売)

 

ひどい親だと思われるかもしれないけど、もう、いっときでも早く逝かせてあげたいんだ。これ以上、苦しませたくない。どうして神はこの子を迎えに来て下さらないんだろう。(本文より)

 

救いの泉『あなたの言葉を』(辻村 深月)

学校のテストと違って、実は世の中には「正解」がないことがほとんどです。(本文より)

 

毎日小学生新聞に連載されたエッセイ集。

 

子どもたちに上からではなく同じ目線で

語りかけるから共感を呼びまくりそうだ。

 

つらい気持ちを救ってくれるさまざまな

エッセンスがぎゅっと詰まってるんだわ。

 

綺麗ごとに終始しないところもGOOD。

 

注目したいのは自分自身に向き合う話が

生きていくため指針になりそうな第1章

 

しょっぱなから、これいいな!と感じて

2話目で技アリ選書になると思ったわ~。

 

2章以降にも興味深いネタが山盛りだし

著者のファンでなくてもそそられそうだ。

 

以下、オレが書いたレビューの一部だよ。

 

最初の話で心を鷲づかみにされ、二話目でとんでもない作品になると確信しました。

様々な切り口で描かれていますが、特に強調されていたのは、自分自身の思考や感性を大事にしようという著者の願いですね。

 

『あなたの言葉を』感想・レビュー

 

『他者との出会い』がイチオシ(2024/4発売)

 

どうか大人の教える正しさを一度飲み込んだうえで、皆さんには、いろんな場面を通じて、自分なりの考え方、それが嫌だと思った時の向き合い方を探してほしいです。(本文より)

 

『きみの話』の快記録

今年の入試で話題をさらった作品だよな。
 
現在わかっているだけで出題校数20校
 
これは今年だけでなく、過去に遡っても
出題件数の新記録になるんじゃないかな。
 
【2024年中学入試出題リスト】
横浜雙葉中学校(1期)
大妻中学校(2回目)
日本女子大学附属中学校(2回目)
昭和女子大学附属昭和中学校(A)
足立学園中学校
国立音楽大学附属中学校
武南中学校
専修大学松戸中学校(2回目)
関西大倉中学校(A2)
東山中学校(後期)
帝塚山中学校(2次A)
佐久長聖中学校(本校1回目)
 
【2024高校入試出題リスト】
福島県公立高校
宮崎県公立高校
 
各所で語り尽くされている作品の魅力は
もちろん選ばれた最大の理由なんだけど
もう一つ、発売日補正も重要な要素だよ。
 
出題者達が選書パトロールをする時期は
選ばれている素材文から逆算してみると
3月~7月がメインになると考えられる。
 
だから、この時期に書店の目立つ位置を
確保できるかどうかが運命の分かれ目だ
つまり、出版社の力というのも実は大事。
 
昨年4月7日に有力な版元から出ている
本作品はその点でも理想的だったワケよ。
 
ついこないだのサピックスオープンでも
B問題で『きみの話』が出たんだってな。
村上雅郁先生に流れが来ちゃってる~?
 
そんな先生の新作が今週発売されている。
 
アマゾンは瞬間蒸発で入荷待ちなんだが
俺が見た書店では平積みで目立ってたよ。
 

まばゆい魅力のある新作(6/14発売)

家族の絆が沁みてくる『みかんファミリー』(椰月 美智子)

割と入試で見る作家の8月に出る新作だ。

近年のこの先生の作品の中では多分最強

 

中1女子の困惑に満ちた新生活ってのに

引き込まれ、家族の気持ちの移ろいには

もう完全にノックアウトされちまったよ。

 

テーマも文章難易度も素材にピッタリで、

それでいて面白さって点でもバッチシだ。

 

作問選書シーズン終盤の発売ではあるが

これは選んでほしいとオレは感じたわ~。

 

同い年の少女との物理的・心理的な壁が

なくなる場面や母に感情をぶつける場面

などなど素材によさげなシーンは多めだ。

 

脇役だけど、まっすぐで偏見を持たない

主人公の友人の立ち回りもナイスだった。

 

変わった家族のカタチに触れられる本作。

いちおう俺のレビュー全文を貼っとくよ。

 

いきなりの古民家ぐらし?

しかもよくわからない人たちと一緒に?

 

子どもの事情などおかまいなしに

みえた大人たちの決断の裏には、

底抜けの気遣いがあふれていました。

 

主人公は母子家庭の中学一年生です。

二家族の共同生活という急展開に

戸惑う彼女の前に現れたのは、

絶対に関わり合いたくない学校の問題児。

 

女だらけ、トラブルだらけの

非日常な日常の先に見えてきたのは、

最初のイメージとは違った

それぞれの意外な一面でした。

 

血のつながりを超えた優しさに

癒される作品ですね。

 

感情を出さない少女がほんのり気持ちを

表わす場面に頬が緩み、激する場面には

手放しで揺さぶられました。

 

沁みすぎる!

 

とくに心の壁と部屋の仕切りが

いっしょに取っ払われる場面。

 

そして、お互いがいてくれてよかったと

思い合える瞬間。

 

これには本当にやられた!

なんってあったかいんだろう・・・

 

主人公と最悪の同居人の関係は

どのように移り変わってゆくのか?

 

突然はじまった共同生活の

本当の理由とは何なのか?

 

ぜひ、楽しみにしていてください。

 

どうなる?凸凹6人暮らし(2024/8/6頃発売予定)

そこかしこに人生訓『6days 遭難者たち』(安田 夏菜)

こんな山、どうってことないって思ってたのに・・・・・こんなことになるなんて。(本文より)

 

安田夏菜先生の先月発売された新作だよ。

 

現実に折り合いをつけることに悩んでた

3人の女子高生が山で絶体絶命に陥る話。

 

追い込まれた彼女たちがどう変わるかが

この作品のいちばんの見どころだろうな

 

終盤にかけてはもう圧巻というしかない。

 

友のため動く決意、メソメソからの脱却、

確固たる意志への目覚めなどが響く響く。

 

手厳しいことでもズケズケと言ってくる

教師の根っこに透ける優しさもいいわ~。

 

弱さを受け入れてこそ強くなれるという

言葉には普遍的な価値があると感じたよ。

 

勉強だって何だって、自分の至らなさを

自覚することがスタートラインだもんな。

 

ただのパニック小説ではないこの作品に

俺が書いたレビューはこんな感じですわ。

 

生への渇望がこれほどダイレクトに

響いてくる作品、ないでしょ?

 

主人公は3人の高1女子。

 

人には言えないものを抱える彼らが

日帰りのつもりで訪れた夏山で

思わぬ事態に見舞われる物語です。

 

何が起こるかドキドキしっぱなしで

ページをめくるのが止まらない

というのは中盤まで。

 

終盤には心を落ち着かせるために

休み休みしながらかじりつくことに

なりました。

 

極限状態の泣きっ面に

次々に降りかかるトラブル、

無慈悲な風雨、そして乱れる足並み。

 

途中「もうやめてぇ!って

何度感じたことか。

 

彼女たちは度重なるピンチに

何を思うのか?

限界を超えた先に何を知るのか?

 

ぜひとも体感してみてください。

 

山でやってはいけないことや、

こうしたらよかったのにという事例が

何パターンも出てくるので、

サバイバル教本にもなりそうですよ。

 

『6days 遭難者たち』感想・レビュー

 

このカバー考えた人、天才でしょ?(2024/6発売)

 

ほんとうに追い込まれたとき、人って強くなれるのかも。(本文より)

 

葛藤が心を射抜く『王様のキャリー』(まひる)

この俺が、わざわざお前のために嫌なこと我慢すると思うか?(本文より)

 

講談社児童文学新人賞の大賞受賞作だよ。

発売日は2ヶ月以上先の8月下旬ですわ。

 

eスポーツをめぐる友情を描いた新作だ。

 

ふだんは本に見向きもしない子たちさえ

振り向かせるような題材を扱ってるのに

頭の固い大人にも響くような物語だわ~。

 

やっぱ大賞作品ともなるとダテじゃない

 

問題文には主人公が自分自身の想像力の

足りなさを思い知る部分が特に使えそう。

 

場面的には、病院の前や教室での会話で

思わぬ流れになるところもいいだろうな。

親がかかわる会話にも注目シーンがある。

 

ネタバレ禁止なんでぼかして書いてるが

素材文適性はかなり高い作品だと思うよ。

 

難易度分類は平易でかな~り読みやすい。

出版社には以下のレビューを送ってある。

 

同情なんかじゃない。

哀れみでもない。

ただそうしたいから支えるんだ。

 

そんな主人公の心の声が

聞こえるようでした。

 

控えめで温和な中2男子が、

自己主張の塊のような少年との

関わりで思わぬ影響を受けていく

ストーリーです。

 

優柔不断だった主人公の

燃え滾る決意に胸を打たれ、

傲慢に見えた少年の

悲痛な叫びには心のど真ん中を

射抜かれました。

 

えげつないほど琴線に触れまくる

作品ですね。

 

ありありと浮かぶシーンの数々。

 

あこがれの配信者を前に

おたおたする主人公に笑いを誘われ、

ともに高みへと駆け上がるシーンでは

驚くほどワクワクが伝染してきました。

 

それだけ真に迫っていた。

 

だからこそ衝突シーンの迫力も

ラストの沁みかたも尋常じゃないんです。

 

心の奥までガツーンとやられました。

 

なんてハートフルなんだよぅ……

 

題材だけでなくユニークな友人関係も

目に新しい本作。

 

eスポーツを軽くみたり、

撃ち合うようなゲームに眉をひそめる

向きもあるとは思います。

 

けれど、まずは読んで欲しい。

 

食わず嫌いではなく、

彼らの歩みを見て、感じて、

この物語のすばらしさを

知ってもらいたい。

 

そう思わずにいられないほど

魅力の詰まった作品でした。

 

書影が出たら画像を差し替えます(8/20頃発売予定)