中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

家族の絆が沁みてくる『みかんファミリー』(椰月 美智子)

割と入試で見る作家の8月に出る新作だ。 近年のこの先生の作品の中では多分最強。 中1女子の困惑に満ちた新生活ってのに 引き込まれ、家族の気持ちの移ろいには もう完全にノックアウトされちまったよ。 テーマも文章難易度も素材にピッタリで、 それでい…

そこかしこに人生訓『6days 遭難者たち』(安田 夏菜)

こんな山、どうってことないって思ってたのに・・・・・こんなことになるなんて。(本文より) 安田夏菜先生の先月発売された新作だよ。 現実に折り合いをつけることに悩んでた 3人の女子高生が山で絶体絶命に陥る話。 追い込まれた彼女たちがどう変わるか…

葛藤が心を射抜く『王様のキャリー』(まひる)

この俺が、わざわざお前のために嫌なこと我慢すると思うか?(本文より) 講談社児童文学新人賞の大賞受賞作だよ。 発売日は2ヶ月以上先の8月下旬ですわ。 eスポーツをめぐる友情を描いた新作だ。 ふだんは本に見向きもしない子たちさえ 振り向かせるよう…

その印象はどう変わる?『きらいなあの人』(工藤純子, 蓼内明子, 花里真希, 黒川裕子)

傷を治すためには、痛くても怖くても、ほんの少しだけ勇気を出さなきゃ。(本文より) 入試でおなじみの作家さん達が揃い踏み。 君色パレットシリーズ2期の注目作品だ。 タイトル通り嫌な誰かが登場するんだが もちろんそのままで終わらないんだな~。 各話…

令和のクラスメイツになるか?『6年1組すきなんだ』(吉野 万理子)

大人になるというのは、自分のすきなものにお金を使えるようになる、ってことだと思うな。(本文より) 一話10ページあまりでサラリと読める 6年男女15人の視点で描かれた短編集。 ここではあえて紹介してこなかったけど、 この短編小学校シリーズは5…

あきらめない、くじけない『浅草蜃気楼オペラ』(乾 緑郎)

帝劇でも、ローヤル館でもない。自分が一番輝ける場所は浅草だった。(本文より) かつて大正の頃、活動写真が流行る前に 浅草で歌劇ブームがあったってハナシだ。 大衆の中で燃え広がったオペラへの熱は 時代や世相に流されつつ冷めてくんだな。 その浮き沈…

脇役が舞台に!『なんでもないあの人』(濱野京子, 林けんじろう, 椰月美智子, 昼田弥子)

人間は、わからないことがそこにあるなら、わからないまま向き合うしかない。(本文より) 多様性をみつめるショートストーリーが うたい文句の君色パレットシリーズ2期。 豪華な作家陣がズラリと並ぶ凄い企画だ。 収録作品『レッドさん』(濱野 京子)『福…

こんな爽快なのアリ?『夜と跳ぶ』(額賀 澪)

そう、スケートボードはストリートで生まれたスポーツなのに、街では邪魔者なわけ。(本文より) 割と入試に出る作家の来月発売予定の本。 スケートボードって珍しい題材を扱うよ。 パリ五輪に無関心すぎる金メダリストと 五輪を撮りたくて仕方ないカメラマ…

少女は学びに目覚めてく『グリーンデイズ』(高田 由紀子)

もっとがんばりたいという気持ちがふつふつと湧いていることに、自分でおどろく。(本文より) 割と入試で見る作家の先日発売された本。 この先生、佐渡島への思い入れがヤバい。 今作もその大好きな場所で勝負してるよ。 父を亡くした少女が、付属中受験予…

出題されるかもしれない新刊本(2024年6月前後)

高田由紀子先生の『グリーンデイズ』は 23日発売予定だったんだがまだ書店に 配本されておらずどこでも買えない模様。 →5月29日から店頭への陳列スタート。 小6女子が同い年の親戚と行った大学に 一目惚れして頑張ろうとする話のようで 期待値が高く入…

そうだ、風を切って進め『ブルーラインから、はるか』(林 けんじろう)

古いママチャリで家を飛び出すのも、最高にバカバカしくて、わくわくする。(本文より) ちゅうでん児童文学賞の大賞受賞作品だ。 この賞の凄いところはハズレがないこと。 しかも、入試で出題される可能性も高い。 実際ここ数年は発売年度に多数出ている。 …

凍える想いをあたためて『冷蔵庫のように孤独に』(村木 美涼)

十四歳だったわたしは自分のために、何もしないことを選んでしまった。(本文より) カバーが作問者の目にとまりそうな新作。 25歳の看護師が中学生の頃に出会った 恩人との日々をある出来事をきっかけに 鮮烈に思い出すっていうストーリーだよ。 自分にま…

なんでもない日々こそが尊い『川のある街』(江國 香織)

長年愛されてきた『つめたいよるに』等、 入試定番作品のある作家の期待の新作だ。 作問者がとりあえず手にしそうではある。 短編が3つ収録されているが素材文適性 という観点では2つに注目したいところ。 1話目の目立ちたくない小3女子の話は この短編…

敗者たちの気迫『俺たちの箱根駅伝』(池井戸 潤)

勝敗はどんなスポーツにもある。だが、勝者だけが輝くのではないはずだ。(本文より) 入試ではあまり見ない大物作家の最新作。 上下巻合わせ700ページには怯んだが、 頻出の駅伝モノなのでチェックしてみた。 『十二月の都大路上下ル』なども含めて この…

はずむ、ふくらむ恋心『ナカスイ!海なし県の海洋実習』(村崎なぎこ)

ナカスイの授業って、とても不思議。いままで国語数学英語・・・・・それが勉強というものだと思ってたから。(本文より) 今年の聖光学院で出た作品の続編ですわ。 より軽妙になりサラッと読めるテイスト。 女子ウケ全振りの乙女小説って印象だな。 前作と…

自分を貫く勇気『あしたをみがけ 姫川中学校みがき部』(横沢 彰)

どんな石ころだって、磨けば輝いてくる。(本文より) 今年の1月からこれまでに3冊出ている こんな部活ありますシリーズの1つだよ。 糸魚川中学に実在する研磨部がモデルだ。 どうやら日本に一つしかない部活っぽい。 ま、そんな世にも珍しい部活の物語だ…

青春のエール『アルプス席の母』(早見 和真)

一人の選手の野球生命は、もっと言うとその子の人生は、たかが高校野球のために潰されるべきじゃない。(本文より、少年の憧れ校の監督の言葉) やたらいい評判をきくので読んでみたよ。 家族愛という言葉だけでは言い表せない エモーショナルさ溢れる物語だ…

出題されるかもしれない新刊本(2024年5月前後)

出たばかりの『俺たちの箱根駅伝』だが 池井戸潤先生は界隈注目ではないものの 書店で存在感を示し続けることが確実だ。 駅伝は入試頻出テーマってこともあるし 作問者が手に取っても不思議じゃないな。 上下巻で約4千円は俺にはキツいんだが。 さて、5月…

わかり過ぎる親たちの葛藤『君の背中に見た夢は』(外山 薫)

中学受験?思い出すだけでゾッとする。いやもう考えただけでも無理、二度とやりたくない。(一章冒頭より、慶應中等部に息子を入れた母親の述懐) 小学校受験を描きあげた話題の新作だよ。 パワーカップルの妻がお受験にはまって 周囲が見えなくなっていくス…

最頻出作家が上野に降臨、そしてテレビでは・・・

5/5は村上雅郁先生に会えるチャンス。 前作の『きみの話を聞かせてくれよ』が 少なくとも15校で出たときの人ですわ。 今年入試問題に採用した15校 駒場東邦、海城、学習院中等科、立教女学院、横浜雙葉、大妻、日本女子大附属、昭和女子大昭和、栄東…

見よ、この魂の輝きを『再会の日に』(中山 聖子)

わたしは、自分の家のややこしい事情を、友だちや先生には知られたくない。(本文より) 受賞歴豊富だけど入試ではあまり見ない ベテラン作家の4月に出たばかりの作品。 中学受験界隈での注目度は低そうだけど これは稀に見るエモさのストーリーだよ。 しか…

美味しさぎっしり『要の台所』(落合 由佳)

周りとちがうからって仲間はずれにしたり、からかったりするやつらのほうが、どう考えたっておかしいだろ。なのになんでそいつらに合わせてやらなきゃならないんだい。(本文より) 何でもズケズケ言う老婆の物言いが爽快。 今年、普連土学園で出た作品の続…

待ってたのは、コレ!『やすらぎハムエッグ』(宮島 未奈)

こんなキャラ、うちの学校にいたら間違いなくいじめられてたと思うんだけど、これまでの人生なんともなかったんだろうか。(本文より) 成瀬は天下を取りにいくシリーズ最新話。 小説新潮5月号掲載の未刊行作品ですわ。 短編の話をあんまし詳しく書いちまう…

正義の声は高らかに『はなしをきいて: 決戦のスピーチコンテスト』(マギー・ホーン)

みなさんが、この本に書いたような経験をしていないことを心から願っています。(あとがきより) 海外作品はあんまし出題されないんだが テーマがよくて面白かったんで紹介する。 あと3週間ほどで発売される新刊本だよ。 同級生のハラスメントに、地味で孤…

未来につながる翼『同じ星の下に』(八重野 統摩)

わたしは、そんなお父さんとお母さんの姿を見てはいつもぞっとして、心底恐ろしくなって、学校ではとにかく必死に、家では隠れてでも勉強をする。(本文より) 『ペンギンは空を見上げる』著者の作品。 小学生が読むにはNGの部分があるんで ここで取り上げ…

行動力が駆けてゆく『アフリカで、バッグの会社はじめました』(江口 絵理)

失敗だと思ったらそこで終わるけど、次に何かをするときに生かせればそれは「失敗」とは言わない。(本文より) 前から思ってたけど、青少年って言うが 青少女って言わないのはなんでだろうな。 さて、青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部の2024…

心の壁を取っぱらえ!『透明なルール』(佐藤 いつ子)

自分の才能を恨んだ。普通でいいのに。普通がいいのに。(本文より) 『真実の口』とこの本は外せないっしょ。 明日発売の今期最注目といえる新作だよ。 おとなし目の主人公が、あれよあれよと 一軍女子グループに取込まれ無理するが やがてほころびが広がっ…

挑戦に欠かせないもの『マジックに出会って ぼくは生まれた』(涌井 学)

大丈夫。落ち着いてるよ。今の僕の全力を、完全に出し切ってみせるから。(本文より) 新作ではないが素晴らし過ぎるので紹介。 昨年の品川女子学院で使われた作品だよ。 伝記ベースなので素材で扱いにくいかと 思っていたが予想は大ハズレだったわ~。 優れ…

意表を突く展開の『天国からの宅配便 時を越える約束』(柊 サナカ)

やはりわたしは、数学が好きなんだ。一度しかない人生の中で、そういうものを見つけられたことはよかったと思う。(本文より) 『天国からの宅配便』シリーズ1作目は たしか前に栄東の素材文になってたはず。 今回紹介するのは本日発売の3作目だよ。 この…

生きる力と、踏み出す勇気『かなたのif』(村上 雅郁)

「友だちの助けに、なってあげなさい」ぼくはうなづいた。それ以上、大事なことなんて、きっとこの世界にはないもんね。(本文より) 先月開催の四谷大塚の入試報告会の席上、 ホールを埋め尽くす受験生の父母の前で 大スクリーンに映し出された本があった。…