中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

妄想力が驀進中!『spring another season』(恩田 陸)

なんつう邪気のない笑顔を見せる奴なんだ。よっぽどおめでたい温室育ちなのか。(本文より) 入試に出たことのある作品のスピンオフ。 前作を知ってる前提で書かれているけど 知らなくてもある程度はついていけたよ。 第一話は主要キャラ集結の祭典なんだが …

秘密渦巻く『ルカとチカ』(長野 まゆみ)

その生徒はとてつもなく賢い。にもかかわらずそれを半分ほど隠ぺいしているの。(本文より) 微笑ましい家族愛とジェンダーを描いた たま~に入試で見る作家の2月に出た本。 世間一般で言う普通からド派手に外れた 個性のほとばしりに圧倒される一冊だわ。 …

出題されるかもしれない新刊本(2026年3月前後)

3月も惹かれる作品の登場が続きまっせ。 既読の本では川上先生の短編集がナイス。 寺地先生の新作は大人に薦めたい一冊だ。 一部既読では日本児童文芸家協会が強力。 如月先生、額賀先生も出ている企画だよ。 未読本では実石先生が強そうな予感アリ。 逆境…

堂々完結!新たな中学受験小説『トロフィーキッズ』(尾崎 英子)

「行ってらっしゃい」そう言ったとたん、美典は身体の深部に衝撃を覚える。胸の奥底に抑え込んでいた、静かな感情が破裂した。(本文より、志望校に送り出すパート) 以前、連載途中でレビューした中受小説。 今なら最後まで読めるので超お薦めだよ。 やっぱ…

くつろげる空気感『日向丘中学校カウンセラー室 向こう側も卒業式』(まはら 三桃)

深い意識の底に他者とつながる一筋がきっとある。それを探すのが自分の仕事だ。(本文より) わりと入試で見る作家の12月の作品だ。 さすが心理のプロ!みたいなのじゃなく ゆるいの雰囲気を持ったカウンセラーが 学校で起こる様々な問題に関わるって話。 …

しなやかに、したたかに『リヒト!』(イノウエ ミホコ)

何が「まあね」だよ。中学受験のことなんて、何ひとつ知らないくせして。(本文より) 特進クラスの受験生男子がまさかの旅へ。 全て計画的に進めたい落ち着いた少年が 大の苦手だった無軌道な青年に連れられ 異国の地で驚きだらけの日々を過ごす話。 凝り固…

少女漫画のメガシンカ『うまれたての星』(大島 真寿美)

日本の豊かさはここまでたどり着いたのだ。その楽しさ、その贅沢さに、彼女たちは気づいているだろうか。(本文より) マンガづくりの思わぬ舞台裏に興味津々。 1970年前後の少女マンガ誌編集部の 熱気をつまびらかに描いたお仕事小説だ。 理想と現実の…

男の子も笑顔になれる『女の子がハッピーに生きるための3つのこと』(福木 はる)

そっちは好きで母子家庭やってるかもしれないけど、こっちはちがうんだよ。(本文より) これ卑怯っしょ、すごくいい意味で卑怯。 パンチの効いたキャラがドーンと登場し 一気にハートを引っ掴んでいくからさ~。 デビュー作で話題をさらった新人作家の 約2…

渇きを満たす慈しみ『サインポール』(大谷 美和子)

おとなは子どもを守るとは限らない。ある日、裏切るかもしれない。(本文より) まれに入試で見る作家の11月の作品だ。 運命にもてあそばれるようだった少女が 夏休みの大阪滞在で心を取り戻していく。 ざっくり紹介するとこんな感じの話だよ。 年上の少年…

哀しいまでに響く『叫び』(畠山 丑雄)

こん中だけはどの国も平和っちゅうのが、なんかええわ。(本文の万博会場パートより) オレごときには芥川賞作品は難解だった。 読み返すまで何が主人公を駆り立てるか あんまし掴み取れていなかったからよ~。 ただ、郷土史や日本の大陸での暴挙など 興味深…

想定外だっ!『フェンシング部の王子さま』(石川 宏千花)

たぶん、全力でなにかをやるってことを、おれはしてみたかったんだと思う。(本文より) フェンシング部にかっこいい先輩がいて 思わず入部して青春する話だと思った? ところがどっこいそう単純じゃないのよ。 意外性の塊のようなストーリーが楽しい 昨年1…

運命の鎖とともに『レテの汀』(雛倉 さりえ)

もしかしたら自分は、訊いてはならないことを訊いてしまったのかもしれない。そう思うと怖くなり、余計に言葉が止まらなくなった。(本文より) 来週木曜日に出る静謐さを湛えた小説だ。 早逝した天才画家の母に囚われる青年の 後ろ向きすぎる感情の変化が刺…

彼方へのメッセージ『ここにいるよ』(真山 仁)

普段、考えたこともない、生と死が、突然切実に身に迫る。(本文より) 能登の大災害を教育現場視点で描いた本。 東日本大震災の際に応援教師をした男が 能登半島地震で混乱した学校を立て直す。 一言でいえばこんなストーリーになるよ。 「臆病は最強!」や…

さらば閉塞感『教室のハルモニア』(辻 みゆき)

四方を取り囲まれた、このスペース。ここに押し込められると、知らず知らずのうちに、スクールカーストのどこかに振り分けられてしまう。(本文より) シリーズ物に熱狂的ファンが少なくない 辻みゆき先生の12月に出たYA作品だ。 近未来のありふれた中学…

幸せってなんだろう『ぬすびと』(寺地 はるな)

「どうしても気持ちが明るくならない時、あなたはどうしてるの?」(本文より) 入試でおなじみの著者の来月の新刊だよ。 今作は45歳女性視点のストーリーだが 25歳パートもかなりの部分を占めてる。 生活にも汲々としてる主人公の存在感が 物語が進むに…

台風少女、見参!『わたしはシュシュ やりたいことしか、やっちゃだめ』(黒川 裕子)

この世には競争や順位なんて蹴っとばしてしまう人間がいる。(本文より) 本好きじゃない子にも推せる一冊だわ~。 コレ読み始めたら少しも止まれないだろ。 型にはまらないどころか全部ぶっこわす 誰よりも気ままな少女が闊歩する物語だ。 そのパワーはもは…

ミッションは総力で『うちのクラスに日本代表』(吉野 万理子)

最初って、楽しいのがいちばん大事だろ?(本文より) ラストが近づくほどにワクワクが高まる あと半月ほどで発売予定のアンソロジー。 短編小学校は作品ごとに話が独立してて どの巻から読んでもまったく問題はない。 前作が慶應中等部で使われたばかりだし…

未来を支えてくれるお守り『中学へ旅立つ君へ:13歳からの一番大切なこと』(おおた としまさ)

試行錯誤って時間がかかるけど、決して無駄じゃありません。むしろ自分で試行錯誤したものしか本当の意味では身につかないから。(本文より) あと5日ほどで発売される人生応援作品。 これって中学入試がひと段落つく時期に 狙いすましたように合わせてきた…

戦慄の扉『彼女たちは楽園で遊ぶ』(町田 そのこ)

たった数日で、町の雰囲気は様変わりしてしまった。(本文より) さ~て、あと9時間ほどで東京入試だな。 それぞれの健闘を陰ながら祈っているよ。 本作は町田その子先生の10月の作品だ。 びっくりするような新境地になっている。 メッセージ性って点では…

抑えきれないリスペクト『花売り姫』(長谷川 まりる)

本当は自分だって弱いのに、母は決してそれを見せまいとする。(本文より) 児童文学の精鋭が一般文芸書に殴り込み。 『この世は生きる価値がある』の著者が 別の角度から命の尊さを訴えた名作だよ。 16歳少女が日常をかなぐり捨てた末に とんでもない非日…

想像力の宴『30の短編小説』(小説トリッパー編集部)

「中受ガチ勢をなめないでください」(『世界を救ったことがある』の本文より) 文芸誌の30周年企画アンソロジーだよ。 多様性の塊の本作は有名作家が目白押し。 同じ課題からいかに違うものができるか みたいな観点でも楽しめると思うんだな。 ビミョーに…

すべてを照らすあかり『成瀬は都を駆け抜ける』(宮島 未奈)

ほんと成瀬さんと一緒だと思いがけないことが起こるよね。(本文より) 12月に出た成瀬シリーズの最終巻だよ。 成瀬の強烈な個性にあてられた人びとが 影響を受けまくるというお約束の展開に いかにも終幕らしいエピソードが加わる。 京大生らの新たな変人…

出題されるかもしれない新刊本(2026年2月前後)

2月は後半の新刊ラッシュがもの凄いな。 既読本では面白さも素材文適性も際立つ 蒼沼先生の作品に注目したいところだよ。 吉野先生の新作はシリーズ最強な印象で、 山本先生の心地よい不思議もありがたし。 毎度言うように以下の作品群はほぼ未読。 出題向…

夢にひた走る令嬢『つないだ手 沢田美喜物語』(植松 三十里)

俺、よく覚えてるんだ。捨てられた瞬間。雨の夜、傘をさす人が行き交う中で、母親が急に俺の手を振りほどいて、走り去ったんだ。(本文より) 昨年、桜蔭入試への採用で注目を集めた 植松三十里先生の9月に発売された作品。 今回の本は大きな志を持った女性…

それはオトナの恋の味『宙色のハレルヤ』(窪 美澄)

萎んだ紙風船のようだった私の生活が丸く膨らみ始めた。(本文より) 道ならぬ恋や愛する怖さなども描かれた 小学生にはちょと早そうな恋愛短編集だ。 バラエティに富んだストーリーなんだが 『風は西から』は子どもでもOKな印象。 運命論者の少年が激しい…

素敵なぬくもりに満ちた『万丸食堂、奇跡のソフトクリーム』(山本 悦子)

安全な高台にたどり着いて、海岸を見下ろしたときのことは、一生忘れないとサキは思う。(本文より) 2月下旬に発売される予定の連作短編集。 これは心をじんわりと温めてくれたわ~。 ほどよく不思議な要素が絡められていて 現実感から遊離しない味付けに…

よくぞ書いてくれた!『チーム・テスならだいじょうぶ』(カービー・ラーソン&クイン・ワイアット)

「友だちのためなら、なんだってするよ」わたしはいった。心の底から本気で。(本文より) さぴあ1月号のブックスコーナー推奨作。 このサピックスの塾内情報誌の選書って 毎度唸らされるから俺もチェックしてる。 本作は胃腸のせいでトイレが近い少女の 苦…

世界を知り、己を知る『バロアチー! 風香のバングラデシュ』(茂木 ちあき)

学校に行けない子どもは、世界に一億人以上いる。(本文より) 昨年9月に発売された視野が広がる作品。 学ぶことの大切さが沁みる一冊だったな。 世界に横たわる圧倒的格差を物語の力で 自分と地続きの現実と感じられるだろう。 誰にでも平等にあるはずの時…

いのちに寄り添うあゆみ『花丸先生、ありがとう』(本田 有明)

花丸先生はすごい!先生も神様だ。ぼくは本気でそう思った。(本文より) 多数登場する谷川俊太郎の名作詩たちが 物語を輝かせる本田有明先生の作品だよ。 個性派の友人二人といつも一緒の少年が 小児科医の先生と交流を深めていくよ~。 年齢の壁を超える温…

響け!魂の調べ『パルティータを鳴らすまで』(せやま 南天)

無理だろう。僕らに私立の中学なんて。選ぶ権利、ないんだよ。(本文序盤より、里子仲間との対話) 中学入試では手垢がついていなさそうな 著者の11月に出た本だが、これは強い。 昨日紹介した本は養子縁組里親の話だが 今回の紹介本は養育里親のストーリ…