中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

出題されるかもしれない新刊本(2025年8月前後)

8月は珍しく新作があまり来ないようだ。 最注目は椰月先生の作品になりそうかな。 小手鞠先生の本は表紙がメッチャ美しい。 以下の新作リストは未読の本が多いので 問題文に向かない本も多分含まれてるよ。 7/28発売 『ぼくのシェフ』(長谷川 まりる) 料…

壊れた日々にグッバイ『チャリを盗んで、夜明け』(黒川 裕子)

俺らは親ガチャに失敗して、腹減りまくってるわけ。(本文より) あと4日ほどで書店に出回る作品の紹介。 最近わりと入試で見る作家の新作だよ~。 ぶっ壊れた家庭で生きるしかない少年の 日々を包み隠さず描き上げた凄い作品だ。 これは身近な世界がすべて…

次なる話題作!『きみがうたうとき』(桑原 亮子)

5年生の少年少女を活写した連作短編で 児童文芸誌『飛ぶ教室』連載中の作品だ。 誰?と思って調べたらNHKの朝ドラの 脚本を任されるような大物作家だったわ。 児童文学界隈にまた凄い人が現れたな~。 お手本のように編み上げられた物語には かの名作『…

心をなでる柔らかな風『かわせみのみちくさ』(瀧羽 麻子)

女子ばかりで過ごしていると、独特のきずなが育まれやすいものなのだろうか。(本文より、祖母の語りへの主人公の心情) 『たまねぎとはちみつ』の流れをくんだ 頻出作家の今月発売された注目作品だよ。 落ち着いてるけど熱量に欠ける主人公が 葛藤を抱えた…

日焼け対策の啓蒙書でもある『日下部くんには日傘が似合う』(神戸 遥真)

自分に正直になったら、毎日が楽しくなった。(本文より) 日傘にまつわるエピソード満載の作品集。 ギャップを描くことが多い先生の新作だ。 少年少女の心の機微を描き上げた良本で イロモノ系と思い込んで放っといた俺は 実のところバカ丸出しだったんです…

常人の感覚を華麗に跳び超える『踊れ、愛より痛いほうへ』(向坂 くじら)

「十二歳になりました。バレエの発表がんばります」(本文より) 発達障害と思しき少女が感情のやり場に 苦悩しつつもがく生きざまを描いた作品。 先月発売された芥川賞候補作の一つだよ。 支配型のバレエ講師や干渉したい母親へ 彼女が見せる激しい反応にも…

染められない強さをくれる『消えゆく街の秘密の友だち』(鯨井 あめ)

大人になることは、空想を忘れることだって、思ってたんだ。(本文より) まれに入試で見る作家の5月に出た本だ。 描かれるのは中学受験予定の少女の日々。 校舎トップの彼女の精神世界に惹かれる。 友達関係のゆらぎってのがまたいいんだ。 人は人、自分は…

出版文化への愛の結晶『さらば! 店長がバカすぎて』(早見 和真)

昨日までの自分が知らなかった世界にこそ、新しい自分との出会いがあるんです。(本文より) 『アルプス席の母』で注目度が急上昇の 早見先生の手になる人気シリーズ最新作。 発売は来月末頃ってのが現時点の情報だ。 人間の底が知れない男の元で働く有能な …

信じられる自分へ『わたしは、跳ぶ!トランポリン部』(濱野 京子)

わたしにとってのトランポリンの魅力。それは地上では絶対にできないことができること。(本文より) トランポリンっていいことずくめかも? そんな気にさせられる愉快な一冊だわ~。 たまに入試に出る作家の3月の作品だよ。 ひかえめな少女が引っ越し先の…

粋な挑戦がたまらない『ちるるのシンフォニー』(佐和 みずえ)

わたし、老人って、ただ息をしてるだけだと思ってた。(本文より) 5月に発売された中学年向けと思しき本。 同居する祖母のピアノ熱に戸惑っていた 少女がその事情に触れ心を動かさる話だ。 畳みかけるような終盤が心地良かったわ。 暗雲が思い切り吹き飛ぶ…

『もし、親友をねたんでしまったら』(日本児童文学者協会・編)

今、あたしが感じているのは「捨てられた」という言葉でしか言いあらわしようのない気持ち。(本文より) 人とのつながりこんなときはシリーズは 既刊5冊なんで紹介はこれで最後になる。 本作のタイトルだが前にも書いたように 収録作の一つから来ていて、…

思いを言葉にして『花の子どもたち』(小手鞠 るい)

今、この教室において、沈黙には、一粒の砂ほどの価値もない。黙っているということは、意見がない、ということだ。(本文より) アメリカ在住作家の先月の新刊本の一つ。 もう一つのほうも後日紹介する予定だよ。 いかにも日本人という少年が母と渡米し カ…

心地よい熱を浴びながら『踊れ、かっぽれ』(実石 沙枝子)

人生っていうのは祭りだ。死ぬまで終わらない祭りだ。(本文より) 『17歳のサリーダ』で注目度上昇中の 著者が地元愛を目いっぱい展開した作品。 地域の祭りで踊る変わった部活が題材だ。 清水市の魅力と高校生達の挑戦の熱気が ストーリーの中にギュッと…

日常が別物になる『灰とダイヤモンド』(東 曜太郎)

今さらお前が俺に道徳を説くのか?勘弁してくれよ。ここはヤミ市だぜ。小学校じゃねえんだ。(本文より) 日本の過去をフィクションで体感できる カトリシリーズで知られる作家の新境地。 戦後混乱期のヤミ市で暮らす少年の目で 過酷でままならない現実を描…

全ての司書様へ『まるみかん大一番』(まはら 三桃)

案外、相手のふところに入った方が有利になるかもしれないよ。(本文より) 図書館と本への愛が詰まったストーリー。 わりと入試に出る作家の先月の新作だよ。 道徳要素が強めで、小学生がごく自然に 政治を学べてしまう珍しい小説だったな。 これはかなり勉…

許された気になれる『不完全宣言』(林 けんじろう)

よぉし、もう五月五日を「こどもの日」なんて呼ばせないぞ。(本文より) たまに入試に出る作家の発売間もない本。 テンション高めなドジっ娘の東京行脚が 軽快なノリで描かれたストーリーだよ~。 やっぱしこの先生は旅の描写に滅法強い。 惹かれすぎて現地…

鮮やかなまでの解像度『ぼくたちの卒業写真』(天川 栄人)

そう、僕の中学生活は、何の問題もなく、うまくいっていた。この日、彼に声を掛かけられるまでは。(本文より、ボッチ男子の心情) 今年の読書感想文コンクール課題図書に 著書が採用され注目度上昇中の天川先生。 そんな作家の6月に発売された新作だが 今…