中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

師の教えを胸に『天使と歌う』(愛野 史香)

世界はまだまだ可能性を秘めた音楽にあふれている。(本文より) 昨年デビューした作家の来月出る新刊だ。 前作でこの先生、美術に強いのかと思い、 今作では音楽にも強いのか!とたまげた。 心にフタをしていたチェロ奏者の少年が 自分を解き放っていく様に…

究極すぎる独創性『パズルと天気』(伊坂 幸太郎)

『逆ソクラテス』が中学入試頻出という 伊坂先生の先月発売されたアンソロジー。 驚きと楽しさが徹底して追及されてるわ。 読めば唖然とする話なんかもあると思う。 俺が特に気に入ったのは最初と最後の話。 これは連作的に少し繋がってるんだけど 特にお天…

心のままに生きられたら『若松一中グリークラブ 気になるあの子はトップテノール』(神戸 遥真)

出版ペースの早い作家の1月の作品だよ。 この先生ってばギャップを描くのが得意。 私立の中高一貫校の一年男子の本人すら 驚き戸惑う気持ちをしっとり描いた本だ。 タイトル通り合唱モノで定番曲とともに 進むパートでは頭のなかで歌が響いたよ。 そんだけ…

ターニングポイントの真ん中に『青い絵本』(桜木 紫乃)

勉強を重ねれば父の元から離れられることに気づいてからは、試験に受かる勉強しかしなかった。(表題作の本文より、揺れる13歳の心情) 昨年の灘中入試でエッセイが使用された 作家の2024年11月に出た短編集だ。 大人の女性たちの視点で人生の後半戦を…

憧れがフワリ『さくら前線急上昇! 高校受験で大逆転!?』(橋長 あこ)

その代わり、最後の一秒まで絶対にあきらめないでください。(本文より) 今月発売された新人作家の児童書ですわ。 思わず笑みがこぼれる受験ストーリーだ。 これといった取りえがないと感じていた 14歳がとあるショックを機に奮起する。 ひと言で表現する…

不確かな時代『普通の底』(月村 了衛)

母もやっぱり、中学受験の際にぼくが受けたダメージについては想像が及ばないのです。(本文より) あまりに凄惨な犯罪現場が出てくるから 絶対に子どもには見せたくない作品だよ。 じゃあ、なぜこれを紹介するかというと 帯に中学受験という文字が躍ってた…

出題されるかもしれない新刊本(2025年7月前後)

7月もたくさんの作品が来てくれるよ~。 瀧羽先生の新作『かわせみのみちくさ』、 額賀先生の『天才望遠鏡』に注目かな? 他にもそそられまくる本がズラリと並ぶ。 新人では愛野先生の二作目も強かったよ。 以下の新作リストは未読の本が多いので 問題文に…

決意、あらたに『中受 12歳の交差点』(工藤 純子)

偏差値が高くて有名中学であれば、どこでもいいと思っていた。(本文より) 来週発売される入試によく出る作家の本。 もうタイトルからして注目間違いなしだ。 児童文学で中学受験は色眼鏡で見られる ことがあるがこの作品の目線はフラット。 だからすんなり…

風味絶佳な『チョコレート・ピース』(青山 美智子)

模試の判定に一喜一憂し、不透明な進路の情報収集に追い詰められ、「未来を決める」という賭けのような作業に緊張している。(本文より) anan連載の12篇と書下ろし12篇。 6/26発売予定の頻出作家の注目作だ。 恋愛、友情、家族愛の粒が一杯詰ま…

読み継がれてほしい『君のせいだ、涙がでるのは。』(林 けんじろう)

中学生だったおじいちゃんが書いた文章に、少し興味があった。日記かもしれない。(本文より) ちゅうでん児童文学賞等の受賞歴のある 先生が新境地に挑んだ戦争文学が出るよ。 今の子供達にどうやって戦禍を実感して もらうかは本当に難しいところだよな? …

威容と美を湛えた『アカシアの朝』(櫻木 みわ)

朝鮮半島の北、南、そして海を隔てた日本。場所はちがっても、かつて国家の暴力によって生じた亀裂を、いまでも生きている。(本文より) 北朝鮮の兵役は10年だって知ってる? 10代から10年って世界最長らしいよ。 そのはじまりとは無関係じゃいられな…

無理しすぎない生き方『もし、自分に負けそうになったら』(日本児童文学者協会・編)

みんなさびしいのに、人間ってどうして仲良くくらせないんだろうね?(『もし、自分に負けそうになったら』の本文より) 人とのつながりこんなときはシリーズの 本作は自己主張への気づきが溢れている。 毎度おなじみでない作家の作品もあって 新鮮味たっぷ…

弱さと向き合う勇気『あなただけの物語のために ――どうすれば自分を信頼できる?』(あさの あつこ)

わたしの夢を嗤い、否み、呆れていたのは誰でもないわたし自身でした。(本文より) たまには物語文とは違うジャンルも紹介。 ちくまQブックスに頻出作家が大登場だ。 論説文風味のエッセイといった印象だよ。 自分自身の経験を踏まえて心の枷を外す ヒント…

遺したい記憶『少年が見た戦争』(宮川健郎・編)

もうすぐ新しい戦争文学の発売日が来る。 複数の受賞歴がある林けんじろう先生の 新作『君のせいだ、涙がでるのは。』は、 戦禍の記憶が物語の重要なカギを握るよ。 6/17に出るんで来週中に紹介予定だ。 さてと、今日紹介するのは古い戦争文学。 発売は…

エールを背に受けて『カーテンコールはきみと 幽霊部長の銀河鉄道』(神戸 遥真)

むずかしい。どんな勉強より登場人物の役作りより、よっぽどむずかしい。(本文より、志望校を決めかねる心情を引用) たまに入試で見る作家の2月の新作だよ。 絶対SFと間違うタイトルだが現実路線。 ユーレイなんて一度だって出てこないし 銀河鉄道は宮…

気分まで晴れわたる『雨上がりのスカイツリー』(高森 千穂)

どうせ、いろいろ変わったんだ。中学受験もしてみるかな。(本文より) 入試では見たことのない作家の1月の本。 かなり平易なので小4でも読めそうだよ。 両親が離婚してしまい父と暮らす少女が つらい時期を乗り越え変わっていく話だ。 勇気が伝染する流れ…

彩りあふれる人生観『月収』(原田 ひ香)

月収三十万には二十万の三倍の価値がある。(本文より) たまに入試で見る作家の2月に出た本だ。 年齢も収入も様ざまな女性6人の人生が 思わぬ場面で交差する連作短編集ですわ。 カッコよかったのは、ゆとりある生活を 手に入れた女性の賢さあふれる生きざ…

よどみをキレイに流し去る『もし、自分がブサイクだと思ったら』(日本児童文学者協会・編)

あのさ、ダサくてなにがあかんの。(『もし、親と好みが合わなかったら』の本文より) タイトルに惑わされるんだが外見の話は 全五話のなかの一つに過ぎないからな~。 人とのつながりこんなときはシリーズは 様々な子どものお悩みに寄り添う短編集。 実力派…

うれし楽しい共学生活『それいけ! 平安部』(宮島 未奈)

今までの人生、こんなに強く求められたことなんてなかった。(本文より) 米のとぎ汁が化粧品だったってご存じ? 難しいことを考えずに純粋に没頭できる 4月に発売された爽やか青春ストーリー。 この先生、運命的出会いのインパクトは 本作も成瀬シリーズ同…

立ち向かう知恵『もし、自分の居場所がない気がしたら』(日本児童文学者協会・編)

今回、ほんと怖くて。世界が敵になったみたいな。(『もし、インターネットでいやな思いをしたら』の本文より) 人とのつながりこんなときはシリーズは 有名作家と新人の作品が詰まった短編集。 タイトルは最終話から来ていて寂しさが テーマの作品集ってい…

弱さと向き合えたなら『この手はいつか』(中山 聖子)

いやちがう。たぶんぼくは、本当のことを聞くのがこわかったのだ。(本文より) 昔クラスに一人はこういう子がいたな~。 普段大人しいのに突如キレる少年の話で まれに入試で見る作家の3月の作品だわ。 見えない内面がきっちりと描かれていて 彼が暴れる理…

心のビタミンになる『もし、自分が平凡だと感じたら』(日本児童文学者協会・編)

学校ではリラックスしてすごしている。うん、女子だけって、ゆるくて心地いい。家のリビングがつづいてるって感じだよ。(『もし、緊張感のない女子校に入ったら』の本文より) 人とのつながりこんなときはシリーズは 今年1~2月にかけて発売された作品集…

心と心をつなぐもの『サヨナラは言わない』(アントニオ・カルモナ)

パパはママが死んでから、ママを憎んでるような気がするの・・・。(本文より) 海外の名作ってのもたまには紹介するよ。 フランスの文学賞を獲った作品なんだが 主人公の母が日本人で日本ネタが多めだ。 日本も舞台になるんで親しみやすいよ~。 ストーリー…

会計畑の成瀬『ぼきののか』(宮島 未奈)

いつかあたしの面白さに気付いてくれる人が現れるんじゃないかって心のどこかで夢見ていた。(本文より) 『成瀬は信じた道をいく』の続編3作目。 小説新潮2025年5月号掲載の短編だ。 1作目と2作目のレビューは以下の通り。 続編1作目『やすらぎハ…