中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

読み継がれてほしい『君のせいだ、涙がでるのは。』(林 けんじろう)

中学生だったおじいちゃんが書いた文章に、少し興味があった。日記かもしれない。(本文より)


ちゅうでん児童文学賞等の受賞歴のある

先生が新境地に挑んだ戦争文学が出るよ。

 

今の子供達にどうやって戦禍を実感して

もらうかは本当に難しいところだよな?


それを本作では祖父の古い手記を使って

ストーリーに入り込みやすくしているよ。

 

現代の小6女子と子供の頃の祖父視点で

語られる面でも感情移入がしやすいかと。


そしてのめり込んだところで驚きが来る。

 

人として生きたいという当たり前の願い。

それを当たり前にかなえられないさまは

きっと平和への想いを燃え上がらせるよ

 

これはぜひとも読んで欲しい一冊だわ~。


素材文適性は小学生男子が年上の少女と

心を通わせるシーンでとくに感じられた。

 

ここは中盤で最も美しい場面でもあるよ。

 

終盤の誓いには著者の決意も込められて

いるんじゃないかと俺なんかは思ったな。


この路線はできればまた見てみたいよ~。


難易度は現代が平易、過去パートは普通

以下はたぶん一号レビューになるだろう。

 

新たな戦争文学の金字塔。

 

エモい!みたいな言葉では言い尽くせないほど揺さぶられました。


琴線に触れる出来事を求めていた小6の少女が、琴線を貫かれるような体験をする物語です。

彼女は法事のあと祖父の古い手記を見つけたことで、思いがけない歴史の一幕に触れることになります。

 

迫力がエグイ!

 

人間を狂わせる戦争の哀しさが、息苦しさを覚えるほどの臨場感で胸に迫ってきました。

それでも、やはり、読んでよかったと心から感じています。


後半にかけて揺さぶられるエピソードが少なくないのですが、ついに感情の奔流が止まらなくなったのは、タイトルの真意がわかる手記の結び。

少年の日の祖父が書き残した決意に胸を打たれ、物語を振り返りつつ静かに涙しました。


このジャンルは読み込んで来たつもりでいましたが、未知の話も少なくなかったですね。

移動演劇隊の逸話などはこの作品で初めて知りました。


少しハードな部分もありますが、読み易さは折り紙付き。

もちろん著者が得意とする、やらかし男子の暴走のような笑えるくだりもあります。

 

時間とともに戦争の記憶が薄れていく今だからこそ、広く読まれてほしい作品。

 

ぜひとも、心ゆくまで親子で味わってください。

 

『君のせいだ、涙がでるのは。』感想・レビュー

 

手記が開かれる刹那の描写がまぶしい(2025/6/17発売)

 

あのとき、あの地に、叶えることのできなかった約束や夢は、いくつあったのか。(本文より)