中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

親の大変さを知る意味で『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(せやま 南天)

4月に発売された朝日新聞出版賞受賞作。 一流企業を退職した主人公が再就職先に あえて家事代行を選んで奮闘する話だよ。 子供5人のシングルファーザーの家庭で 失敗を重ねながら成長していく主人公に 共感が止まらないって声が続出しそうだ。 掃除機のか…

正しさいっぱいの『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(椰月 美智子)

うそみたいだ。この街でそんなことがあったなんて・・・(本文より) かつての小学館児童出版文化賞の受賞作。 今年の入試でもよく使われていた旧作だ。 夏にはNHKでドラマ化されてもいたよ。 スケボー大好きな少年が神社の管理人の おじいさんと交流を深…

普通って何だろう『世界のすべて』(畑野 智美)

命をかけて産んでもらい、人生をかけて育ててもらった。それなのに、申し訳ないと考えてしまうことは、よくある。(本文より) 入試で見たことのない作家の9月の新作。 LGBTQだけじゃない多様性の裾野を 悩める青年の視点で描くストーリーだよ。 すこ…

ゆるぎない信念と箴言『生きるぼくら』(原田 マハ)

これも今年の入試で出た定番の旧作だよ。 やはり定番作品は選ばれる理由があると 読み返してしみじみ感じる物語だったわ。 学生時代のいじめで引きこもりになった 主人公が人生で最大の危機に見舞われて すがった相手は意外な人物だったんだな。 傷つき固ま…

例の事故を想起させる『海のなかの観覧車』(菅野 雪虫)

いつも大人の甘い見込みで、酷い目にあうのは子どもだ。(本文より) ミステリ要素を含んだドキドキできる本。 YAの有力作家が4月に出した作品だよ。 企業の社会的責任を扱う珍しい児童書だ。 サラッと読んでおしまい、とはならない 考えさせられる部分が…

何度でも読み返したい『よろこびの歌』(宮下 奈都)

これも名作中の名作で2009年発売だ。 旧作なのに今年少なくとも3校で出てる。 マイナー新作より優先度は高いだろうな。 今この学校にいる私は仮の姿。誰にどう思われようと構わない。(本文より) こんな風に雑に高校生活を過ごしていた 少女が合唱をき…

百番のかつてない破壊力『ダキョウソウ』(洛田 二十日)

口車は時に、どんな車よりも遠い美しい場所まで運んでくれる。(本文より) 年の瀬なので、今年最も笑った本を紹介。 放送作家兼作家という著者の短編集だが20編の過半数はSFテイストが濃いぃ。 想像力の暴走っぷりがものすごくってよ、 入試に出るかと…

色褪せない青さ『ぼくのとなりにきみ』(小嶋 陽太郎)

2017年2月発売の元・頻出作品だよ。 とはいえ、今年の入試でも俺が知る限り 2校で使われているので引き続き要注目。 作問のための選書って大変な手間だから 複数回入試がある学校は旧作も出やすい。 あと地方校も旧・定番作品がよく出てる。 新作を追…

ダークホースはエース級『新しい春』(藤岡 陽子)

私立の中高一貫校に通うことができるのも弦太が一人っ子だからで、ぎりぎりの経済状況であることは知っている。(本文より) たま~に出典予想ランキング出した後に もの凄い優良素材を見つけることがある。 今回紹介する藤岡陽子先生の短編小説は 素材文適…

堂々と生きるために『ドヴォルザークに染まるころ』(町田 その子)

知ってる?シンデレラは王子様と結婚した後に姑の王妃様からいびられるし、眠り姫は姑が人食い魔で王子との間に授かった子どもたちが食べられそうになるんだよ。(本文より) たまに入試に出る作家の11月の新作だ。 一行目でもう子供に見せられないと確信…

真摯に人と向き合う『あたたかな手 なのはな整骨院物語』(濱野 京子)

器用じゃないから、よけいに努力するってこと、なにごとにもあるでしょう?(本文より) 割と入試に出る作家の1月に出る新作だ。 医者や看護師以外にも人々を健康にする 仕事があるってのは子どもには新鮮かも。 柔道整復術は柔術が起源で、殺法が柔道、 活…

出題されるかもしれない新刊本(2025年1月前後)

年明けにも面白そうな新作がてんこ盛り。 特に入試頻出作『駒音高く』の姉妹編の 『見えなくても王手』は期待値が高いよ。 1月末には豪華作家陣の作品集もあるし。 以下の新刊リストは未読の本が多いんで たぶん出題向きじゃないのも混じってる。 1/6発売 ☆…

美しい心をはぐくむ『銀樹』(森埜 こみち)

生きものはな、おそらくみんな、もちつもたれつじゃ。(本文より) 阿部暁子先生、川上弘美先生らとともに 今年度の入試で脚光を浴びそうな作家の 新境地となる10月に発売された作品だ。 辛酸をなめ続けてきた少年が目標を定め 一所懸命に努力して夢に近づ…

いつか、誰かの方舟に『ショコラ・アソート あの子からの贈りもの』(村上 雅郁)

いつまでもいっしょにいられるわけじゃない。手を伸ばせるなら、伸ばせるときにちゃんと伸ばせ。(本文より) 『きみの話を聞かせてくれよ』によって 2024年中学入試で一躍注目を集めた 村上雅郁先生が今月6日に出した短編集。 過去作品の登場人物たち…

健やかに、爽やかに『きさらぎさんちは今日もお天気』(古都 こいと)

戦争って同じ世界で起きていることなんだ。戦地にいなくても、戦争でつらい思いをする人はいるんだ。(本文より) 世界保健機関(WHO)って国連組織が 身体の361のツボを認定してるそうだ。 このネタは来月出る濱野京子先生の本に 書いてあるんだが今…

キングの帰還『夜と跳ぶ Re:東京ゴールデン・エイジ』(額賀 澪)

子どもに親のメンタルケアさせるな。(本文より) わりと入試に出る作家の明日発売の新作。 未知の世界に近づけるストーリーだった。 前作も躍動感がハンパじゃなかったけど この続編はさらなる盛り上がりを見せる。 ピンチの連続や想像を超えるライバルに …

意欲と努力で突き進め『11ミリのふたつ星 ~視能訓練士 野宮恭一~』(砥上 裕將)

次の一手が見当たらないなら、あらゆることを試さないと。(本文より) たまに入試に出る作家の本日発売の新作。 このシリーズは前作も入試に出ているよ。 視能訓練士ってSF物か何かに出てくる 架空の職業と思ってたが大間違いだった。 眼科の検査技師にな…

桜蔭の出題者に選んで欲しい名作たち【2025年入試版】

桜蔭は他校が選べない出たばかりの本を 素材に使うことがあるとは前にも書いた。 実際、11月発売の本なんかも出ている。 作問とチェックには時間を要するゆえに これはよそではできない芸当なんだな~。 2020年出題 前年の7月25日発売 『思いはいのり、言…

やんごとなき世界へ『あなたを待ついくつもの部屋』(角田 光代)

どうして人は、きれいなもの、おいしいもの、おもしろいもの、心をきらめかせる何かに触れると、誰かと共有したくなるのだろう。(本文より) 帝国ホテルの会報誌に連載された42編。 わりと入試に出る作家の7月に出た本だ。 味わい深いショートショート集…

殻を破って歩み寄れ!『15歳の昆虫図鑑』(五十嵐 美怜)

小学校中学年くらいまでは、理科の授業でわたしはヒーローだった。(本文より) これも講談社児童文学新人賞の佳作だよ。 児童文庫で実績のある作家による新境地。 空気を読めない虫好きな少女を柱にして 悩める子供達の胸の内を掘り下げていく。 人気者の意…

心に届く爽快さ『ピーチとチョコレート』(福木 はる)

軽々しく本音を見せないのは、自分の心を守るための戦略だ。(本文より) 講談社児童文学新人賞の佳作だった作品。 この年の新人賞は明らかに当たり年だわ。 大賞が凄かったのはもちろんのことだが 今回の紹介本も次に紹介する予定の本も クオリティーがハン…

その明暗はくっきりと『わたしたちは、海』(カツセ マサヒコ)

きっと全ての親はさ、純度百パーセントで目の前の子供を想うことなんかできなくて、どこかに過去の自分を、投影しちゃってるんだろうね。(本文より) これも入試で見たことのない著者の新作。 書店で目立ってたのでピックアップした。 大人向けの作品で子ど…

受け継がれる想い『いのちのつぼみ』(志津谷 元子)

好きな人の好きなものを、自分も好きになる。それが恋というものなのだろうか。(本文より) 入試では見たことがない著者の新作だよ。 作品数が少ない先生だが小川未明文学賞 大賞を受賞した実績もある作家だからな。 これといって熱くなれる物がない少女が…

喝采の起業計画『アーセナルにおいでよ』(あさの あつこ)

”アーセナル”はまだ小さいけれど、必要なんだ。今、生きている人たちに絶対に必要な場所だ。そう信じて創ったんだ。(本文より) わりと入試に出る作家の9月の新作だよ。 高3女子のもとに初恋の君から届く連絡。 それは思わぬ計画への誘いだったんだな。 …

【番外編】2025年高校入試 国語出典予想20選(2024年1月~2024年10月発売)

今度は高校入試版の予想を作ってみたよ。 去年作ったリストでは、中学でも出てた 『この夏の星を見る』が最頻出だったな。 中・高入試ともに選書の傾向は似てるが、 高校は秋発売の作品も割と出ているから、 中学入試版とは少し違う顔ぶれになるわ。 高校入…