きっと全ての親はさ、純度百パーセントで目の前の子供を想うことなんかできなくて、どこかに過去の自分を、投影しちゃってるんだろうね。(本文より)
これも入試で見たことのない著者の新作。
書店で目立ってたのでピックアップした。
大人向けの作品で子どもに見せられない
短編『渦』を含むが一つ注目作があるよ。
『海の街の十二歳』は地味な少年たちが
クラスメイトの少女たちの秘密に近づく
心惹かれるショートストーリーなんだな。
誰にも言えない話を共有した後の彼らの
振舞いには想像力を搔き立てられまくり。
特に問題文にしやすそうだったくだりは
父のいない少年への雑過ぎる決めつけに
同じく父のいない子が助け舟を出す部分。
他の短編もダルい主人公の印象が変わる
話などが面白くって俺は夢中になれたよ。
教育熱について考えさせられる話もある。
難易度分類ではやや難に組み入れられる
この作品に書いたレビューはこんなんだ。
人の心と海のゆらぎが静かに沁みてくる連作短編集。
どことなく物憂げな香りが漂う人々に、ほんのり光を当てる作品が多めですね。
そんな中、ひときわ輝いていたのは、少年たちの溢れんばかりの好奇心を描きあげた『海の街の十二歳』。
この躍動感、そして意外な顛末、あまりの衝撃にすぐ読み返したのは私だけではないはず!
他の短編も面白かったのですが、とくに『渦』の妖しさに魅入られましたよ。
全体を通して、登場人物のささやかリンクの中に「あのときの子」の成長ぶりが感じられたりして、余計に楽しめましたよ。
子供の頃は叶えてもらえなかったけど、大人になって、それを子供にしてあげられたときにね、自分の中で、何か救われた感じがあるんだよ。(本文より)