中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

その明暗はくっきりと『わたしたちは、海』(カツセ マサヒコ)

きっと全ての親はさ、純度百パーセントで目の前の子供を想うことなんかできなくて、どこかに過去の自分を、投影しちゃってるんだろうね。(本文より)

 

これも入試で見たことのない著者の新作。

書店で目立ってたのでピックアップした。

 

大人向けの作品で子どもに見せられない

短編『渦』を含むが一つ注目作があるよ。

 

『海の街の十二歳』は地味な少年たちが

クラスメイトの少女たちの秘密に近づく

心惹かれるショートストーリーなんだな。

 

誰にも言えない話を共有した後の彼らの

振舞いには想像力を搔き立てられまくり。

 

特に問題文にしやすそうだったくだりは

父のいない少年への雑過ぎる決めつけに

同じく父のいない子が助け舟を出す部分。

 

他の短編もダルい主人公の印象が変わる

話などが面白くって俺は夢中になれたよ。

 

教育熱について考えさせられる話もある。

 

難易度分類ではやや難に組み入れられる

この作品に書いたレビューはこんなんだ。

 

人の心と海のゆらぎが静かに沁みてくる連作短編集。

どことなく物憂げな香りが漂う人々に、ほんのり光を当てる作品が多めですね。

そんな中、ひときわ輝いていたのは、少年たちの溢れんばかりの好奇心を描きあげた『海の街の十二歳』。

この躍動感、そして意外な顛末、あまりの衝撃にすぐ読み返したのは私だけではないはず!

他の短編も面白かったのですが、とくに『渦』の妖しさに魅入られましたよ。

全体を通して、登場人物のささやかリンクの中に「あのときの子」の成長ぶりが感じられたりして、余計に楽しめましたよ。

 

『わたしたちは、海』感想・レビュー

 

イラっとする主人公にいつの間にか共感していたりするから不思議。(2024/9発売)

 

子供の頃は叶えてもらえなかったけど、大人になって、それを子供にしてあげられたときにね、自分の中で、何か救われた感じがあるんだよ。(本文より)