中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2022-01-01から1年間の記事一覧

コロナ禍を生き抜く中学生たちを描く『マスク越しのおはよう』(山本 悦子)

わたしね、コロナのおかげで、自分にとって何が大切なのか、考えるようになったよ。(本文より) 『神隠しの教室』で有名な作家の新作だ。 この先生はわりと低・中学年向けが多い。 今回は少し上の層がターゲットのようだ。 主人公たちは中2だが年齢の割に…

お年寄りへの理解を深められる『エツコさん』(昼田 弥子)

来週の火曜日に発売予定の新作なんだが、 10歳あたりでも難なく読めそうなんで、 高学年の模試にピッタリなレベル感だわ。 本番入試で使うには易しすぎるっぽいが、 認知症の老婦と子ども達の交流の話だし、 テーマ的にはアリなような気もしている。 連作…

桜蔭の出題者に選んで欲しい3作品

通常、入試問題に使われるのは夏までに 出た作品だが、桜蔭は秋・冬の新作でも フツーに出題してくるから変わってるよ。 2020年出題 前年の7月25日発売『思いはいのり、言葉はつばさ』(まはら 三桃) 2021年出題 前年の11月14日発売『あしたのことば』(森 …

見て見ぬふりに一石も二石も投じる『だれもみえない教室で』(工藤 純子)

キレイな装画だがこれで決まりとは限らない?(NetGalleyにて読了) 来月26日発売予定の気になる新作だが、 先に読ませてもらえたんで記事にするわ。 少年4人と新米教諭が主人公という物語。 連作短編の視点が子供→大人へ切替わる ところや文章の難易度は…

こじらせ少年少女の転機を描く『給食アンサンブル2』(如月 かずさ)

2020年入試で出題校数10位だった 『給食アンサンブル』の続編となりゃあ イヤでも注目が集まるってもんだろうよ。 今回は中学2年生を描いた連作短編集だ。 中2だけあって迷いっぷりが激化してる。 ひとり悩みドツボにはまっている彼らが 様々なきっ…

実はスピカは5連星『水底のスピカ』(乾 ルカ)

人の秘密は借金みたいなものだよ。連帯保証人になる覚悟はある?(本文より) たまに入試に出る作家の10月発売の本。 5人の高校生男女を描いた群像劇だけど、 特に3人の女子に焦点を当ててる感じだ。 完全に別タイプで接点のなさそうだった 彼らがつなが…

親ガチャがハズレだと・・・『バンピー』(いとう みく)

「心温まるストーリーを見て感動できる人って、そこそこ幸せな人たちなんだよ」(本文より) まぁまぁ入試に出る作家の10月の新作。 ただ、この本は設定がぶっ飛んでるんで、 あんまし出題には向いてなさそうな印象。 描かれる子どもたちの背景はかなり重…

出題されるかもしれない新刊本(2022年12~2023年1月)

12月・1月は注目の作品が少ないな~。 オレが気づいてないだけかもしれないが、 いま判ってるのは以下の3作品のみだわ。 『エツコさん』(昼田 弥子)12/27発売 『だれもみえない教室で』(工藤 純子)1/26発売 『放課後の読書クラブ』(小手鞠 るい)1/…

初めての気持ちが新鮮な『ひこぼしをみあげて』(瀧羽 麻子)

期待していた頻出作家の今月発売の本だ。 「桜蔭の出題者に選んで欲しい3冊」で、 12月にも再度この本を取り上げる予定。 『たまねぎとはちみつ』も出題実績アリ なんだが、その続編にあたるのが今作だ。 前作を知らなくても全く問題はない感じ。 平易だ…

受験史に残る事件を描く『予備校のいちばん長い日』(向井 湘吾)

駿台も河合塾も解答速報が出せない!1998年の東大入試で実際に起きた「受験史に残る事件」を題材にした創作です。主人公は大手への対抗心に燃える数学講師。塾生想いの彼女が、弱小予備校の東大コースの存続をかけて、受験史上最大の難問に挑みます。 『予備…

国語出典予想ベスト50【2023年入試向け最終版】

※前回以降に追加した14作品 17位『空をこえて七星のかなた』(加納 朋子) 19位『宙ごはん』(町田 その子) 22位『両手にトカレフ』(ブレイディ みかこ) 28位『天の台所』(落合 由佳) 31位『パンに書かれた言葉』(朽木 祥) 34位『星屑すぴりっと』…

じんわり癒される読書『本が紡いだ五つの奇跡』(森沢 明夫)

開成が『おいしくて泣くとき』を出題し、 俄かに注目が集まってそうな作家の本だ。 開成は他校の先生も意識するだろうから。 この本が発売されたのは2021年9月。 始めの方はお仕事小説だが、だんだんと 家族小説の色が濃くなっていくんだわ~。 特に最…

歴史探索にワクワクできる『皆のあらばしり』(乗代 雄介)

『旅する練習』が今年の早実で使われた 乗代雄介の2021年12月発売の作品。 受賞はなかったが芥川賞候補だった本だ。 うさん臭い男に声をかけられた高校生が やがて男の面白すぎる生き方に惹かれて 生き方までも変えていくってストーリー。 おっさんと…

まだある出題に使えそうな『飛ぶ教室』掲載作品

『飛ぶ教室』は季刊の児童文学雑誌だわ。 ほど良い長さの短編がいくつか掲載され、 割と出題実績もあるんでチェックしてる。 2023年受験組には67号~70号が 狙い目っぽいんで使えそうなのを選んで ザックリあらすじを書いてみたのが以下。 2021/10/2…

揺れ動く中1女子の力関係『ココロノナカノノノ』(戸森 しるこ)

戸森しるこの『飛ぶ教室』連載中の作品。 いじめは止めたいけど自分自身の安全は 最優先にしたいっていう少女が出てくる。 グループ内での立ち位置の変化みたいな 中学生のリアルな日常を描いてて面白い。 家庭より級友との場面に注目したいな~。 この作家…

疎外感を消し飛ばす『夏休みの空欄探し』(似鳥 鶏)

出題実績のない著者だと思うが推す人が やたら多い話題作なんでチェックしたわ。 6月発売の新作だが作問者は見たかな? 面白いがエンタメ系の作風だと感じたわ。 出題に使えそうなところも多少あるけど 積極的に小学生に薦めたい作品ではない。 中学生の楽…

世界の広さを肌で感じられる『両手にトカレフ』(ブレイディ みかこ)

正義なんて恵まれた人間が信じるものだ。私には、私しかいない。(本文より) そこそこ入試に出る作家の6月の新作だ。 貧困や格差について深く掘り下げてるし、 特に中学生たちに読んで欲しい作品だわ。 俺のリストの中ではトップクラスの売上。 作問者も気…

助け合うってスバラシイ!『天の台所』(落合 由佳)

自分で台所に立つたびに、小さな発見がある。それを一つ一つ拾い上げて、胸にしまう。(本文より) 地元の図書館が大量に仕入れて推してる ノーマーク著者の2021年9月発売本。 あんま期待してなかったがこれが当たり。 ごはんを作ることの尊さを学べる…

開成だとか、女子学院だとか『きみの鐘が鳴る』(尾崎 英子)

こんなにも必死になったことなんて、十二年生きてきて、はじめてのことだった。(本文より) 昨日発売された十代向けの中学受験小説。 正直、小6の春あたり迄は退屈だったが、 夏からは面白さにエンジンがかかる感じ。 2月の修羅場とかもう凄いのなんのっ…

小学生には早いかな~『パンに書かれた言葉』(朽木 祥)

今この瞬間も、この地球上で、ものすごくひどい目にあっている人がいる。自分がその人じゃないのは、ただの偶然なんだ。(本文より) 今年最もホットなテーマは平和だろうな。 そこで、読友さんたちが高く評価してた この作品にも目をつけてみた次第ですわ。…

中受小説『きみ鐘』の話題など

中学受験小説『きみの鐘が鳴る』の 著者のインタビュー記事を見つけた。 受験に伴走した経験を活かしてんだ。 こいつは期待できそうな気がするわ。 ローティーンあたりがターゲットと 思うが親が読むにもいいのかもな? 『翼の翼』のときも書いたが、親の メ…

名門校で芽生えた友情『空をこえて七星のかなた』(加納 朋子)

どうしても中学受験を成功させたかった私は、正直に申告することを決めた。その下心の報いがこれなら、あんまりだと思う。(短編『星の子』の本文より) 入試出題実績はなさそうな著者であるが、 『飛ぶ教室』で紹介されてたんで読んだ。 ある宇宙飛行士に関…

読ませる『七星』、『きみ鐘』は二月の勝者っぽい?

かなり話題性のある新作に気づいたんで、 レビュー予定作品を3冊ばかし追加する。 『空をこえて七星のかなた』(加納 朋子) 2022/5/26発売済み 季刊『飛ぶ教室』最新号で紹介された本。 オモロそうなんで思わず衝動買いしたわ。 6年女子が主人公の章は読…

たぶん、先生は気づけない『星屑すぴりっと』(林 けんじろう)

大半の学校が出題作を決定済みであろう、 8/25という際どい時期に出た新作だ。 前にレビュー予告しておいた本なんだが、 鉄人会の出題予想にも入り注目度上昇中。 新人の登竜門といえる講談社の児童文学 新人賞で佳作だが大賞レベルの面白さだ。 佳作は…

しとしと、しとしと、胸に迫る『雨の日が好きな人』(佐藤 まどか)

ウソでも笑っていると、だんだん本当に気分が良くなってくる。小さいころから、そうやって嫌なことを乗り越えてきた。(本文より) そこそこ入試に出る作家の10月の新作。 9月以降発売の本は来年の表に使うんで、 2023年入試の出典予想には入れない。…

”繊細な海賊”が使えそうな『日向丘中学校カウンセラー室 十人十色、1匹?色の文化祭』(まはら 三桃)

カウンセラー室の中にいるよりも、ずっと大変でした。問題は、むしろ外の方にあるんですね。(本文より) 少し前まで頻出だった作家の7月の新作。 シリーズ2作目だが、前作は俺が珍しく 酷評するほど雑なストーリー展開だった。 今作は先に読んだ娘にうっ…

出題が予想される物語文『宙ごはん』(町田 その子)

自分が作ったもので、誰かと気持ちのいい時間を過ごせる、それはすごいことなのだ。そして多分、とても大事なことでもある。(本文より) 2021年本屋大賞作家の5月の新作だ。 出題実績のない著者だと思うが心温まる ストーリーが評判なんでチェックした…

未知なる現実にふれて『手で見るぼくの世界は』(樫崎 茜)

いつも言ってるが中学受験できるような 恵まれた家庭の子には想像しづらい貧困・ 障碍などを描いた作品は名門校で頻出だ。 ここから学校が求めている人物像が解る。 様々な問題を自分の世界と地続きと捉え、 想像を働かせ、他人を思いやれる子ども。 培った能…

子どもを潰さない学校選びにも『中学受験に勝つ!』(週刊ダイヤモンド2022年9月10日号)

集団での立ち位置は、真ん中よりも上でスタートさせてあげたほうが安心して頑張りやすいでしょう。(記事本文より小川大介氏のインタビューを一部要約) 低学年からの勉強法の特集ではあったが 高学年や中高生にも当てはまる内容だわ。 塾選びだけじゃなく志…

中盤以降で様変わり『ぼくたちはまだ出逢っていない』(八束 澄子)

焦ることはないよ。まだ若いんだから。時が来たら、出会うべき人に出会うし出会うべきものに出会う。それまではとにかく動き回ることだ。(本文より) たま~に入試に出る作家の10月の新作。 2024年以降受験組によさそうな本だ。 とはいえ、入試標準レ…