中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2023-01-01から1年間の記事一覧

際立って美しい心根『リラの花咲くけものみち』(藤岡 陽子)

十二歳で一度終わった自分の人生が、こんな広い道に続いていたことに身震いした。(本文より) わりと入試に出る作家の7月発売の新作。 先週までタイトルに仮とついてたんだが 『リラの花咲くけものみち』に正式決定。 『金の角持つ子どもたち』と似た語感…

色褪せぬ名作、入試定番作品8選より『逆ソクラテス』(伊坂 幸太郎)

入試で使われ続けてる2020年の作品。 小学生の日常が軽快に描かれた短編集だ。 これがメチャメチャ愉快な作品なんだわ。 本好きでない子にもウケそうな感じだよ。 大人も夢中になっちまうストーリーだし、 出題者に選ばれ続ける理由も読めば解る。 この…

あの夏を忘れない『薄明の流れ星』(辻村 深月)

秋以降の作品が滅多に入試に出ないのは 前から書いてるが、実際、7月~8月の 新作もその年度の入試にはあまり出ない。 故に2024年組にとって最後の大作は 『この夏の星を見る』になりそうですわ。 何せ6月30日に発売される予定だしよ。 入試定番化…

心に残る戦争の傷跡『ぼくはうそをついた』(西村 すぐり)

ポプラ社から来週7日に発売される新作。 バレーボールにのめり込む高学年男女が 思わぬきっかけで戦争のかなしさを知る。 一言で言っちまうとこんなストーリーだ。 母の戦争体験を聞いた著者が30年間も 温め続けてきた話を元にしてるそうだよ。 17歳の…

胸を張れ、少年たち『ふたりのえびす』(高森 美由紀)

オレだけじゃない。ほとんどの子はキャラをかぶっている。演じている。素で生きられるほど、小学生ライフはあまくない。(本文より) 小5レベルでも十分に読めるお楽しみ本。 今年の入試で使った学校もあったんだが、 課題図書になり一層注目されそうな感じ…

アノ先生も再降臨『ジェンダーフリーアンソロジー TRUE Colors』(小林 深雪 、にかいどう 青 、如月 かずさ、水野 瑠見 、菅野 雪虫)

抱き合わせアンソロジー?と思ってたが 今じゃそんな自分を責めてあげたい気分。 文学賞受賞作家がズラリと並ぶ短編集だ。 読書が苦手な子も食いつきやすそうだよ。 主に女の子向けなんだが、女子の心情を 問われたらお手上げな男子にもいいかな。 ジェンダ…

心もリノベされていく『ステイホーム』(木地 雅映子)

いろんなものであふれかえった部屋っていうのは、うっかり踏みたくなるリンクがあちこちにうめこまれていて、本文がちっとも読みすすめないページに似てる。(本文より) 受験界では知名度のない作家だと思うが、 高学年によさそうなんでチェックしたよ。 コ…

友情のピンチを描いた『人魚と過ごした夏』(蓮見 恭子)

駅伝小説で有名な著者の来月の新刊だわ。 以前はシンクロと呼ばれてた競技が題材。 3人の高2女子を柱とした青春群像劇だ。 友情をテーマに繊細な心情が描かれてて 素材にしやすそうな箇所が結構あったわ。 とくに、9月の章の終わりのあたりから 11月に…

栄光の選書も凄かった『5番レーン』(ウン・ソホル)

今年の栄光学園の入試問題を見たときさ、 は?海外作品?日本にいいのがあんのに、 とか思ってちゃんと見なかったんだけど、 それが今年の課題図書にもなってんのな。 そんなスゲーの?って思いつつ読んだら、 ものの見事にノックアウトされちまった。 ぶっ…

むしろ心があたたまる『真昼のユウレイたち』(岩瀬 成子)

割と入試に出る作家の今月発売される本。 怖くない4つの中編が詰まった作品集だ。 不思議要素は出題の妨げになりやすいし、 この作品はスルーしようかとも思ったが、 試しにチェックしてみたらこれがアタリ。 特に、小6女子がいじめに真っ向いどむ 『対決…

出題されるかもしれない新刊本(2023年6月前後)

6月前後の新作で気になってるのは以下。 追加で判明したらこの記事に加えてくよ。 5/24発売 『物語の種』(有川 ひろ) 子ども視点の章もあり注目したい短編集。 5/25発売 『文通小説』(眞島 めいり) 親友の急な転校で始まるほんとうの文通。 5/29発売 ☆ …

【本気レポート】入試問題の難易度を偏差値化する(算数編)

今年も日能研オン・ザ・ロードの資料『学校別・分野別難易度一覧』を元に問題の難易度を偏差値化してみました。国語は納得感の薄い数値が出るので、今回は算数のみを対象とし、ブレを抑えるため過去3年の平均を取る形としています。 集計対象は、2021年~202…

すこし不思議な新境地『はるか、ブレーメン』(重松 清)

嫌な思い出よりも、むしろ楽しい思い出の方が、いまの自分を苦しめてしまうことだってあるんだ。(本文より) 頻出だが新作よりも旧作の方がよく出る 重松清の4月に発売された最新作ですわ。 重松清は6月にも気になる作品が出るよ。 『はるブレ』はSF的…

人気シリーズは侮れない『世界は「」を秘めている』(櫻 いいよ)

ぼくの好きなものは、まわりに認めてもらわないといけないものなの?(本文より) 入試や模試でも稀にだが出はじめている 読みやすさ抜群の作家の2月発売の新作。 ジェンダーフリーもテーマのひとつだわ。 正直またかって思わないでもなかったが。 軽~い気…

嫌いなアイツの素顔とは?『ノクツドウライオウ 靴ノ往来堂』(佐藤 まどか)

ブランド名とそのデザインを選ぶか、最高に履き心地が良くて世界にひとつしかない自分のためだけのくつを選ぶかの違いですよ。(本文より) 割と入試に出る作家の4月の新作2冊目。 『スクランブル交差点』より平易な感じ。 中学入試の出題標準レベルの難易…

頻出作家たちに会える!

上野公園のイベントにあの先生が登場だ。 子どもブックフェスティバルのサイン会、 そこに国語素材文でお馴染みの作家達が、 ゾロゾロやって来るっていうハナシだよ。 特に5/5の著者ブースが気になるとこ。 読書大好きな子には刺激になりそうだな。 サイ…

さわやか青春群像劇『スクランブル交差点』(佐藤 まどか)

塾や予備校に行ってるヤツがうらやましい。(本文より) たまに入試に出る作家の4月の新作だわ。 留学生がやってきて低温テキトー男子が かきまわされ熱くなってくのが面白いよ。 異文化交流は割と注目したいテーマだし、 主人公が家計を心配するあたりも大…

今度の辻村作品は超ヤバい

先行レビューリクエスト中って状況だが、 あらすじ見ただけでも要注目なのは解る。 黒いのや空想的なのは入試に出にくくて、 白いのが頻出なのが辻村深月なんだけど、 6月30日発売予定の新作は白い方だよ。 しかも中高生の部活を描く作品だもんよ。 こん…

せつなさが心に沁みる『おはようの声』(おおきやなぎ ちか)

今も心に残る声がわたしに勇気をくれる。 少女がそういう心境に至るまでの物語だ。 6年生が3年前の日々を回想する筋書き。 この作品も序盤は出題要素が薄い感じで、 いじめ目撃で物語が転調するあたりから 要注目シーンがチラホラ出てくる印象だ。 ただ、…

解りあえない、だとしても『セントエルモの光 久閑野高校天文部の、春と夏』(天川 栄人)

よく勘違いされるけど、星座っていうのは星をつないだ「形」のことじゃなくて、正しくは「領域」。(本文より) この人に最初に注目したのは鉄人会かな。 中受では新顔の著者の今月発売の新作だ。 SNSにどっぷり漬かっていた女の子が 新たな出会いで変わ…

リアルな学童物語『あえてよかった』(村上 しいこ)

子どもの見守りなら、気楽にできると簡単に考えていたのに、自分までもがこんなに息苦しい気持ちになるなんて思っても見なかった。(本文より) たまに入試に出る作家の今月発売の作品。 58歳の男が学童で働くストーリーだわ。 学童保育が舞台って作品は珍…

少年の思いやりに癒される『奉還町ラプソディ』(村中 李衣)

稀に出題される人の昨年11月発売の本。 登場する人物やお店はフィクションだが、 岡山に実在する商店街を舞台にしている。 老人と少年達のかかわりを描いた作品だ。 全6話の短編集だが3話以降がいい感じ。 特に4話の博多に老婦を連れていく話は 出題要…

馴染みの本が次々と出る『27000冊ガーデン』(大崎 梢)

本から得られるものは無限であり、それは誰にとっても平等だと信じていたい。(本文より) たまに出題される作家の本日発売の本だ。 学校司書が出る話だし割と出題のあった 『教室に並んだ背表紙』も連想したけど 謎解きに重きを置いててあんま似てない。 的…

テーマ的にも大アリな『金曜日のあたしたち』(濱野 京子)

どこで学ぶかではない、何を学ぶかだと、中学の担任教師から言われた。(本文より) 割と入試に出る作家の6月発売予定の本。 環境問題に取り組む高校生が描かれてる。 無関心だった少女の変わりように注目だ。 貧困・格差といった問題にも触れていて、 理・…

出題されるかもしれない新刊本(2023年5月前後)

5月前後の新作で気になってるのは以下。 追加で判明したらこの記事に加えてくよ。 4/17発売 『ノクツドウライオウ 靴ノ往来堂』(佐藤 まどか) 靴職人の世界に足を踏み入れる少女の話。 4/19発売 『ぼんぼん彩句』(宮部 みゆき) 俳句を元にして紡ぎ出さ…

揺らぐ少年の心模様『街に躍ねる』(川上 佐都)

もちろんぼくが受験を選んだのは周りに合わせたからじゃなく、伝記マンガを読んだ結果、なにごとも勉強が大事だということを知ったからだ。(本文より) ポプラ社小説新人賞の特別賞受賞作だわ。 率直に言って、出だしは読みにくかった。 子どもの視点に感情…

好奇心が走り出す『イコトラベリング1948−』(角野 栄子)

疎開先から帰って来る子どもたちで、東京の私立学校はどこも満員状態だったのだ。(本文より) 『魔女の宅急便』著者による自伝的小説。 複数校で出題された『トンネルの森』の 続編にあたる作品ってことで読んでみた。 前作も素晴らしかったがこの本も凄い…

さらなる高みへ『金色の羽でとべ』(高田 由紀子)

弱みだと思っていることが、武器になるかもしれませんよ。(本文より) YA世代向け新作が出題されやすい人の 3月に発売されたバレーボール小説だわ。 5年生の主人公が思わぬ役割を任されて、 戸惑いながらも奮闘していくアツい話だ。 予想外の展開になる…

開成で恵泉『終点のあの子』(柚木 麻子)

今年の開成出題作品なんだが、面白いよ。 女子校の人間関係を掘り下げてる作品で、 男子校でこれ出すか?って思ったけどな。 ま、開成が意外な旧作を出してくるのは いまに始まったことでもなんでもないが。 恵泉中高出身の著者が母校を描いた本は 前に紹介…

自分の軸を大切に『嘘吹きパスワード』(久米 絵美里)

小6がスマホのトラブルに巻き込まれる 筋書きだったコレのシリーズ2作目だわ。 今度は中学一年生になった彼らの物語だ。 前作も子どもに読ませたい一冊だったが 今作もなかなか勉強になる本だったな~。 スラスラと楽しく読めてマナーを学べる。 ネットだ…