中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

堂々と生きるために『ドヴォルザークに染まるころ』(町田 その子)

知ってる?シンデレラは王子様と結婚した後に姑の王妃様からいびられるし、眠り姫は姑が人食い魔で王子との間に授かった子どもたちが食べられそうになるんだよ。(本文より)

 

たまに入試に出る作家の11月の新作だ。

 

一行目でもう子供に見せられないと確信。

こんな書き出しアリかよ~って思ったわ。

 

担任の先生のセックスを見たことがある。(第一話本文の一行目をそのまま引用)

 

だがしかーし、本質はソコじゃないんだ。

 

田舎の町の廃校を控えた小学校を舞台に

様々な人間模様が交差するストーリーで

大人女性の内面をえぐるように掘り下げ

少女の葛藤も掬い取る妙技が凄いんだわ。

 

著者の伝えたい極めて真っ当な価値観が

後半にかけじわじわ浸透する実感がある

 

まぁ基本子どもに見せられない系だけど

第四話後半に素材適性が高い場面が複数。

 

問題文によさそうな場面(第四話)

△少女同士の打ち明け話が思わぬ方向に

◎クラスメイト男子の意外な一面を知る

△ラストにかけての少女の驚きの振舞い

 

あとは第二話の卒業制作パートも△かな。

 

入試素材ってやばい箇所を避けて出すの

そう珍しくないしこの本もナシじゃない

 

ま、難しいので普通の小学生には無理め。

マイレビューの一部はこんな感じですわ。

 

忌むべき抑圧から解き放たれるさまが爽快!

主人公は上手く生きられない人々です。

小学校の廃校イベントに集った彼女たちが、思わぬ出会いやトラブルの渦中で、人生を変えるような経験をしていきます。

女性たちの生々しい感情を遠慮なく描き込んだ衝撃作。

序盤で昼ドラ?と決めつけそうになりましたが、まるっきり違いますね。

「正しいと思うことは主張しろ!」「自分自身のために足掻け!」という著者の願いが、これ以上ないってほど鮮やかに伝わってくる物語でした。

大人の心情はときに過激になりますが、丹念に描かれる背景のおかげで、納得も共感もできた気がします。

子ども視点で親たちの嫌な部分を露わにする章は、いっそう人物像をクリアにしてくれますね。

おぉ!襟を正さねば、という気にもさせられましたよ。

 

『ドヴォルザークに染まるころ』感想・レビュー

 

物語が幸せを掴めと叫ぶ(2024/11発売)

 

ひとは、どれだけ辛くても、自分のために闘うことを放棄しちゃだめだ。(本文より)