命をかけて産んでもらい、人生をかけて育ててもらった。それなのに、申し訳ないと考えてしまうことは、よくある。(本文より)
入試で見たことのない作家の9月の新作。
LGBTQだけじゃない多様性の裾野を
悩める青年の視点で描くストーリーだよ。
すこし子どもに見せづらい箇所もあるが
主人公のみならず周囲で苦悩する人々の
吐き出す激情に学びがありまくりだった。
特性に名前を付けることで見えなくなる
こともあるって俺は思い知らされたな~。
例えばL要素とて0か100かじゃない。
20や30という人だっているだろうし
それは時間の経過によって変化もしうる。
同じ人が複数の要素を持つ可能性もあり
多様性のパターンはいくらでも湧き出る。
そう考えると多様性は自分に関係ないと
思っている多くの人にも関わってきそう。
安易に子供に薦められない部分もあるが
例の難易度分類では難しいに入るレベル。
俺のレビュー要約バージョンは以下だよ。
ジェンダーが絡む話は何度も読んできたはずなのに、大きな見落としがあると気づかされました。
主人公は20代後半の穏やかな男。
普通になれないことに苦悩する彼が、独立を目指しカフェ修行するなかで、様々なセクシュアリティの人々に出会い、世界を広げていきます。
底なしの深みにはまり込んでいくかのような主人公の葛藤が胸に迫りました。
この作品は、普通でないと生きづらい世の中で、ボロボロになりながら擬態して暮らすたくさんの人々に贈られたエールという面もありそうです。
それにしても、驚くほど多様な個性に名前がついているんですね。
それぞれが白か黒かのように区別できる性質でなく、固有の要素が混じる割合に大小があるという現実を踏まえると、多様性のパターンはまさに無限大。
これは私には驚天動地の発見でした。
僕の心は女性ではないと思うけれど、男性だとも言い切れない気がしてくる。(本文より)