中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

いつか、誰かの方舟に『ショコラ・アソート あの子からの贈りもの』(村上 雅郁)

いつまでもいっしょにいられるわけじゃない。手を伸ばせるなら、伸ばせるときにちゃんと伸ばせ。(本文より)

 

『きみの話を聞かせてくれよ』によって

2024年中学入試で一躍注目を集めた

村上雅郁先生が今月6日に出した短編集。

 

過去作品の登場人物たちに別の角度から

光を当てるというユニークな企画だよ~。

 

21校出題『きみ話』のスピンオフも

いいけど最初の話がイチバンだった印象。

 

冒頭のフレーズでグイッと引っ張り込み

さらなるビックリ展開に連れていくから。


それでいて多様性が胸に刻まれる短編だ

 

素材文適性って点でも恐らく一話目が○。

 

ま、そういうの関係なしに3人組の話は

もっと読みたいと思わされちまったな~。

 

他の短編でも教え子を覚醒させる先生や

心をほぐしてくれる少年のエピソード等

魅力的な話がぎっしりと詰まっていたよ。

 

文章難易度は中学入試の出題標準レベル

そんでコレは俺っちからの贈りものじゃ。

 

もう一度あの子に会いたい!

そんな読者の夢をかなえてくれる特別な5編。

スピンオフ作品集なのですが、本編を知らなくても困らないよう自然な感じでおさらいしてくれますよ。

 

個性的な子が次々に登場し、思い悩み、もがくさまが超リアル!

 

とくに幼馴染の美しい友情を描く『ラピスラズリの初恋』の魅力は、メッセージ性も相まって圧倒的でした。

これを知ってしまったら、未読の人でも絶対、本編を読みたくなりますよ。

 

『バカナタの言うとおり』では、後向きの感情に縛られる少女が、葛藤の末に前進するエネルギーを解放します。

ぶきっちょな少年との微笑ましいやり取りに、こちらまで口角が上がりっぱなしでした。

 

全体を通して感じたのは、

「独りで苦しむ誰かに届きますように」

「傷ついた心に寄り添えますように」

という著者の祈りですね。

 

甘酸っぱさのなかに”共感の粒”がたっぷり詰まった魅惑のアンソロジー

古い価値観を両断する切れ味にも注目ですよ~。

 

勇気と思いやりがくれる安らぎ(2024/12発売)

 

私の大切な人の心を、ないがしろにしないでよ!!(本文より)