中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

エピソードに宝あり『女の子たち風船爆弾をつくる』(小林 エリカ)

ごきげんよう」は伝統あるこの学園発祥の挨拶なのだから。(本文の跡見学園を描いたパートより)

 

麹町学園の歩みを紹介する公式ページに

戦時中、雙葉跡見の生徒たちとともに

風船爆弾の製造に従事したと書かれてる。

 

何を作っているのか知らされないままで

勤労奉仕という名の労働をしてたんだな。

 

そういう話を掘り下げてるのが今回の本。

雙葉、跡見、麹町学園と、宝塚歌劇団

かかわる少女たちの人生を紐解いてゆく。

 

多視点で語る文体があまりに独特なので

正直、小学生にはあまり薦められない

興味深い史実に触れられる作品ではある。

 

特に戦時中の話は未知のネタが多かった。

 

男は大学に入らないと召集されるからと

命がけで勉強する学生が続出したそうだ。

それで入試が凄い倍率になったらしいよ。

 

結局は卒業繰り上げ&学徒出陣になるが。

 

奉天雙葉の系列校ができた話なんかは

黒歴史なのか今は公にしてないようだね。

 

倍率5倍を超える格式高い女子校だった

麹町学園のクラス名が菊組・竹組等から

第一小隊、第二小隊等に変えられた話は

戦争一色になった時代をよく反映してる。

 

空襲の際に麹町学園の生徒たちを雙葉

教員が救った史実にはジーンときたわ~。

 

このように入念に調査した上で語られた

エピソードには惹かれるものが多々アリ。

 

入試素材にしづらい語り口ではあるけど

彼女たちが奪われた青春には学びもある

 

『伝言』と併読するといいかもしれない。

俺のレビューは少々手厳しいんだけどな。

 

『女の子たち風船爆弾をつくる』感想・レビュー

 

昭和二十年、雙葉の入学式は空襲警報により中止、二日後の爆撃で校舎は焼け落ちた。(2024/5発売)

 

わたしの青春は、もう戻らない。(本文より)