中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

平易でも深みのある『わたしと話したくないあの子』(朝比奈 蓉子)

生活環境が変わったからって、わたしたち自身はなんにも変わらないのに。(本文より)

 

わりと入試にでる作家の3日後に出る本。

この著者では最も素材文適性が高い印象。


描かれるのは少女達の不幸なすれ違いだ。


子供自身のせいでない要因で苦しむ姿が

おっそろしいほど胸に迫ってくるんだわ。


問題文に使えそうな箇所は5~13章に

多数あり、特に5・8・11・13章は

心情を問いやすそうにオレは感じたな~。


格差の問題は出題でよく狙われるんだが

そういうの抜きにして多様性を知るって

意味でも小中学生必携の一冊になりそう。


友だち関係に悩む子にも刺さるだろうな。

 

主人公の周辺だけでなく、友人の父親や

脇役の少年に至るまで魅力溢れる本作は

文章が平易なので小5でもたぶん読める

 

また出版社に送ったレビューを付けとく。

 

友だち関係に悩む少女たちの物語。

 

本当の友情とはどういったものか?

3人の少女の葛藤に触れることで、読者の子どもたちも考えさせられることでしょう。

物語で導き出される答えには、私も一票を投じたいです。

 

主人公は小学6年生の少女。


かつての親友が転校生として戻ってきた喜びは、相手の信じがたい振る舞いで戸惑いに変わっていきます。


何が二人の関係を変えたのか?


トラブルの末に彼女が知ったのは、思いもよらぬ事の真相でした。


貧困からくる差別や、劣等感の根の深さが身に沁みました。

やはり、大人の事情のせいで子どもにこんな思いをさせてはいけないですね。

 

つらい経験があればこそ、嬉しいことが際立つという捉え方は、前に進もうとしたとき支えになってくれそう。

 

できる人が、できるときに誰かを助ける。

助けられた人は、いつか誰かの力になればいい。


物語が訴えかけてくるこうした理念の広がりは、世の中をより良く変えていくための尊い一歩になりそうです。

 

シリーズ前作は複数校で出題(9/4発売予定)

 

わたしたちの立場が逆だったら、わたしを嫌いになるの?友だちをやめるの?(本文より)