中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

ヤングケアラーに自由を『藍色時刻の君たちは』(前川 ほまれ)

自分を犠牲にして他人を助けることは、そんなに大事なことなんだろうか。(本文より)

 

出題実績がなさそうな著者の新作ですわ。

 

高校生らしい生活もままならない3人の

ヤングケアラーの歩みを描いた衝撃作だ。

 

文科省調査だと世話している家族がいる

小学生が15人に1人いるんだってな?

40人学級だと2~3人いる計算になる。

 

別の厚労省文科省による実態調査だと

中高でもクラスに1~2人いるらしいよ。

 

ヤングケアラーは意外と身近な問題だな

 

非力な子どもたちの肩にのしかかる重責。

反抗期になる余裕さえもない過酷な現実。

 

本作では3人がどこに救いを見出すのか。

このあたりが注目ポイントになるだろう。

 

普通の小学生には歯が立たない難しさで

しかもかなりハードな内容を含んでいる。

 

素材文によさそうな箇所は一応あるけど

作問者がこの本に気づけない気もするな。

 

ま、重かったけど俺は読んでよかったよ。

大人こそ読むべき作品とも感じましたわ。

 

ネタバレ禁止でフワッとした味付けだが

以下は俺が出版社に送ったレビュー全文。

 

社会を変える力を秘めた作品。

 

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、素直にそう感じました。
描かれるヤングケアラーの日常は、それほどまでに衝撃的です。

 

私自身、心を病み奇行を繰り返す母を精神病院に入院させた経験があり、少しは解っているつもりでしたが、甘かったですね。

 

登場する3人の高校生の置かれた現実は、想像を優に超えていました。

もちろんこれはフィクションですが、一方で、どこかで起こっている現実でもあります。

 

それを示すのが、作中でも紹介されているデータ。

ヤングケアラーが、学校のクラスに1人から2人いる計算になるという実態調査の結果です。

 

一体どれだけの子どもたちが、この作品の3人のように、子どもらしい生活を送れずにいるのでしょう?

 

やはり、「あの人」のように、大人がしっかりしないといけないと感じました。

同時に、サポート制度の充実を含め、子どもを守る仕組みづくりの必要性も痛感しました。

 

感動したとか、切なかったとか、そういった感想だけにとどまらず、私にとってはしっかりと心に刻まれるもののある一冊でした。

 

目が離せない場面も多かったですね。

 

序盤から心を鷲づかみにされましたが、特に、謎めいた女性の過去に迫る部分や、「とんでもない惨事」がもたらす波紋などは、時間を忘れ読みふけりました。

 

細部まで描き込まれた看護師の振る舞いや、思考回路も見どころの一つ。

著者の経験が存分に活かされていて、他に類を見ないものに仕上がっています。

 

人の心に直接訴えかけ、世の中を動かすだけの力のある物語。
著者だから描けたひとつの集大成。

 

広く読まれることで、ヤングケアラー支援の一助になって欲しいです。

 

『藍色時刻の君たちは』感想・レビュー

 

著者は現役の看護師(7/28発売予定)