中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

新たな定番作品あらわる『この夏の星を見る』(辻村 深月)

4月から俺が騒いでた作品がついに出た。

これは入試で長年使い続けられるだろう。

 

2024年版は秋以降にリリースするが

もし2023年版の出典予想に混ぜたら

まちがいなく1位になっているレベルだ。

 

何しろ素材文に適した箇所が多すぎるよ。

 

前に出題に使える箇所がありすぎるとか

書いた作品の5倍くらいあった印象だわ。

 

入試を作る人にとっては選び放題な反面

模試を作る人も鉄人会さんもどの部分で

出題を当てにいくか困っちまうだろうな。

 

この本が選ばれそうな理由は以下の通り。

 

辻村深月が紡ぎ出す文章が素晴らしい

・中高生らしい心情の移ろいがバッチリ

天文台の館長を含め先生たちが魅力的

・新聞連載作でサクッと切り取りやすい

 

天文の話だから理科の勉強にもなるわな

 

デネブやベガが遠い将来北極星になる等、

好奇心を満たしてくれる話題も出てくる。

 

前に紹介した他作品とのリンクも注目点。

 

『家族シアター』所収の本編とリンクする短編

『1992年の秋空』

 

『Another side of 辻村深月』所収の前日譚短編

『薄明の流れ星』

 

文章難易度は「やや難」という感じだし、

高校入試でもかなり使われそうではある。

 

小学生でこれを読みこなせたらすごいよ

 

以下は俺が書いたレビューの全文ですわ。

 

あたたかい気持ちと感謝に包まれたまま本を閉じました。

 

天体観測を題材にした、みずみずしさ抜群の青春小説です。

 

コロナ禍で思いがけない日常の中に置かれ、戸惑う中高生たちが、逆境を逆手に取りつつ、新しい楽しみ方を見つけていきます。

 

制限がある中でもつながりを拡げ、好奇心を育み、絆を深めていく彼らが眩しいですね。

 

先生方も素晴らしかった!

 

道を踏み外しそうなときにさりげなく支えたり、自主性を伸ばすよう見守ったり、畑違いの分野を果敢に学ぼうとしたりと様々で、何パターンもの理想の教師像を見ることができた気がします。

 

混迷を越え、距離を越えて、子どもたちに芽生える気持ちには心を洗われる思いでした。

 

この夏のイチオシはこれで決まりでしょう。

 

『この夏の星を見る』感想・レビュー

 

他作品に出ていたはるか・うみか姉妹も立派になって再登場