中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

画期的な中学受験小説『小さな挑戦者たち』(騎月 孝弘)

4人の中学受験生に寄り添うストーリー。

この子たちが、みんないい子なんですわ。

 

読めば応援せずにいられなくなるほどに。

主人公もがんばり屋さんで共感できるし。

 

中学受験の心構えを伝えることを主眼に

描かれた小説って点では素晴らしいな~。

 

使えそうなアイデアや膝を打つシーンが

これほど詰まった作品は類を見ないから。

 

一方で、少しだけど勿体ない部分もある。

完成度が高いからこそ気になった点だな。

 

以下、俺のレビューと補足コメント全文。

 

主人公は25歳の家庭教師。

東大卒業後に大きな壁にぶつかった彼女が、新天地で自分の生きがいを見つけ、教え子やその家族とともに、がむしゃらに歩んでいきます。

初めて6年生を受け持った主人公の1年間を追体験することで、中学受験のイロハが学べる画期的な一冊。

小説形式だからこそ伝わりやすいこと、確かにありますね。

印象的だったのは、主人公が教え子のために勇気を振り絞る場面。

回想シーンでの母からの励ましもよかったな~。

とにかく金言が満載。

中学受験を描いたもののなかで、これほど学びのある作品は稀でしょう。

 

一方、少し気になったのは、的確なアドバイスや対処法が機能して道がひらけるというシーンの多用ですね。

「受験生親子はもっとこうあって欲しい。よく考えてみて。ほら、こんなアイデアで変えられるでしょう?」というような、熱烈に伝えたいことに重きを置いたことで、展開がイージーモード寄りになっている印象。

終盤などは評価が分かれるかもしれません。

これはこれで素晴らしいのですが、もう少し不条理な要素を混ぜると、さらに面白くなりそう。

著者が塾講師ということなので、ノーマルモードやハードモード寄りの塾小説もぜひ読んでみたい!

 

『小さな挑戦者たち』感想・レビュー

 

やる気あふれる家庭教師の言葉に注目!(10/4発売)

 

中学受験って、小説で描かれる場合には

たいていネガティブに扱われるんだよな。

抑圧を表現する要素になりがちなんだわ。

 

けれどこの作品はまるで違う視座なワケ。

 

危ないシーンもあるが、基本、みんなの

頑張りをポジティブに応援してくからよ。

 

こういうのが書ける先生の存在は超貴重

だからこそついつい期待しちまうんだわ。

余計な一言を書かずにいられないほどに。