中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

あの先生のお株を奪うような『かたばみ』(木内 昇)

楽な道を選べば、いっとき救われるんや。けどな、努め続けておったらたどり着けたはずの場所から、永遠に切り離される。(本文より)

 

読友さん達がやたら激賞するもんだから

思わず手にしてみたが確かに大当たりだ

 

 何が正しいか徹底して考えさせられるよ。

全ての先生に読んで欲しい稀有な一冊だ。

 

入試では見ない作家だが素材文適性アリ。

なにしろ新聞連載作だから切り取り易い。

 

とくに少年視点の3章は、重松清先生の

お株を奪うような心情表現の嵐だったよ。

 

3章の素材によさげなシーン5選

・従兄に野球で手加減したことがバレる

・小学校入学以来、一二を争う最悪な日

・街頭TVの野球中継でついた優しい嘘

・従姉の人知れぬ葛藤を聞かされる場面

・自分の辛さの正体に初めて気づく終盤

 

新米教師視点の一章も使えそうな箇所が

多すぎてメモしていくのが大変だったわ。

 

1章の素材によさげなシーン7選

槍投げに打ち込むべきか?迷いを吐露

つるかめ算の授業で意外すぎる解法が

・教頭に大目玉をくらうきっかけの場面

・出征を控えた最後の早慶戦での一コマ

学童疎開する3人が別れの挨拶に立つ

・軍需工場の見学に向かうシーンの前半

・卒業式のない卒業で生徒たちとお別れ

 

まぁ、上に挙げた例なんてほんの一部だ。

2章も含め注目のシーンはまだまだある。

 

新米教師の主人公に指導役としてついた

ベテラン教師ってのがまたいいんだな~。

この心の師は名ゼリフが多いから要注目。

 

挫折とはきっと、正しい扉を開くための尊いきっかけなのでしょうね。(本文より心の師、吉川先生の言葉)

 

ストーリー的にも充実しまくっていてよ、

圧倒的に面白くてためになる一冊ですわ。

 

8/4発売なんで作問の時期にかぶるし

出題者がこの本に気づけるか微妙だけど

出典予想最終版では20位台にする予定

 

名門高校入試で使われても驚かないほど

難易度はハイレベル、作家頻出度は無印、

テーマ注目度◎、素材文適性〇って感じ。

 

俺のレビューの締めくくりはこんなだよ。

 

読者を虜にする秘訣は人情ですね。気持ちいいほどに人情厚いエピソードが多いから、読んでいて心が洗われましたよ。そして、戦中から戦後にかけての暮らしには学びも多かった!学び、感動、爽快感が織りなすめくるめく興奮。これは確かに、もの凄い!

 

『かたばみ』本のあらすじ・感想・レビュー

 

紹介本では最大ボリューム(2023/8発売)