中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

スランプの先へ『八秒で跳べ』(坪田 侑也)

「覚えておきなさい。不調のときは、成長できる最大のチャンスだ」(本文より)

 

慶應普通部で労作展のために書いた本で

デビューして今は医学部生ってナニコレ。

 

中3夏休みの自由研究が商流に乗るとか、

そんだけで驚きだけど、その後も凄すぎ。

 

そんな作家の2作目が今回の紹介本だわ。

発売日はかなり先で来年2月になる模様。

 

高2男子を主人公にした部活小説だけど

読んでみてさらにビックリしちまったよ。

 

登場する一人ひとりが超面白いんだもの。

高校生らしい葛藤や瑞々しさもバッチリ。

 

素材文適性は後半にかけ爆上がりしてく

特に3章の一部と4章には注目したいね。

 

問題文に使いやすそうなシーン5選

4章序盤◎エースが語りかけてくる場面

4章中盤◎食堂でのミーティングシーン

3章中盤〇見くびっていた相手との対話

3章終盤〇公園が舞台になる例のシーン

4章終盤〇意外なキャラとまさかの接触

 

物語を描きつつ作家自身も成長した印象

だから尻上がりに良くなってくんだろう。

 

主要人物に自分自身を投影した観もある。

それゆえに胸に迫るものにできたのかも。

 

かなり長いが以下は俺のレビュー全文だ。

 

リアルにもほどがある!

 

主人公は熱量低めのバレー部員。


トラブルもあり自分を見失いつつあった彼が、思わぬ出会いや、多彩な仲間との関わり合いのなかで、大切なものを取り戻し、飛躍への手がかりを掴んでいきます。


部員たちの温度差が生み出す軋轢、青々とした自我のぶつかり合い、確執の末にたどり着く境地、すべてにハートを鷲づかみにされました。


ちょっとしたゼスチャーに重要な意味を持たせるなど、試合中の描写もまさに迫真。鮮明に映像が浮かぶほどの臨場感です。


これは本気で競技に向き合った著者にしか描けない!


心情の面でとくに共感できたのは、他人には解らないほんのささいな出来事が、本人の支えになりうるというくだりでしたね。


とことん行き詰まっていた少女との、ぎこちないけど誠実な係わり合いも見どころ。


顧問の先生の「覚えておきなさい」に続く言葉など、名ゼリフも多かったな~。


正直、這い上がる意志をなかなか見せない主人公には、イラッとする場面もありました。


けれど、読むのをやめなくて本当に良かった!


あの激アツの四章を見逃すとか、絶対にありえないですから。

 

前半とのギャップを楽しんで!(2024/2発売)