中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

生きる力と、踏み出す勇気『かなたのif』(村上 雅郁)

「友だちの助けに、なってあげなさい」ぼくはうなづいた。それ以上、大事なことなんて、きっとこの世界にはないもんね。(本文より)

 

先月開催の四谷大塚の入試報告会の席上、

ホールを埋め尽くす受験生の父母の前で

大スクリーンに映し出された本があった。

 
それが『きみの話を聞かせてくれよ』だ。

 

今年少なくとも15校で出たこの前作で

一躍ときの人になった著者の2ヶ月後に

発売される予定の本を今日は紹介するよ。

 
文章の難易度は例の分類だと平易になる。

小5なら十分に読めそうな間口の広さだ。

本好きな子であれば小4でも楽しめそう。

 
素材文適性が高そうなシーンもあったよ

 

一例を挙げると、5章の後半にかけての

お世話係を自任する子に光が当たる場面。

 
ネタバレで台無しにしたくなかったので

レビューは細心の注意を払って書いたよ。

 

そうやってできたのが以下のメッセージ。

 

少女たちの美しい友情をあますことなく描きあげた大作。

 

心に効く読書体験でした!

 

いろんな感情があふれだしてきて、あれ?泣いてるの、俺?

って具合に自分でもビックリ。

この作品が巻き起こす共感の渦が今から想像できますよ。

 

主人公は2人の中学1年生。

 

それぞれに孤独を抱えていた彼女たちのくすんだ日常が、刹那の出会いをきっかけに、鮮やかなまでに変わっていきます。

心が踊り、よろこびにうち震えるような語らいの末に2人が知ったのは、思いがけない運命の巡り合わせでした。

 

切なる願いがかなっていく高揚感。

そして「まさか」がもたらす衝撃。

 

ぜんっぶ持っていかれました。

 

ラストでは満たされた幸福感と、終幕のさびしさからくる喪失感がない交ぜになった気持ちのまま、呆然となるしかありませんでした。

 

・・・・・スゴいのが来た。

 

”ひと夏のガール・ミーツ・ガール”というフレーズに、苦手な話かも?と懸念しましたが、誤解もいいところでしたね。

 

夢いっぱいのストーリー。

想像力に秘められた無限の可能性。

生きる力と踏み出す勇気をくれる主人公たち。

 

そんなまばゆさに引き込まれ、大人でも時間を忘れて夢中になれました!

 
これは辛さを抱える人ほど刺さると思います。

心のすき間を埋めてくれそうだから。

 

一方で、自分はポジティブと思う人にも強烈に推したくなります。

もっともっとハッピーになれそうだから。


終盤で主人公の一人が立てた誓いは、著者の決意表明そのものでもあると感じました。
 
ぜひとも、末永くこの作品のような物語を産み出して、子どもたちの未来を明るく、
やさしく照らしてください。

 

そっと背中を押してくれる(6月中旬発売予定)