みんな、いろんな壁にぶつかってきているのだから、人並なんて、どこにもない。(本文より)
子どもの受験のときに栄東で出たもんで
慌てて買った本だが当時は読めなかった。
本命の入試まであとわずかだと思ったら
気が急いて文章が頭に入ってこなくてよ、
あのころは本のレビューも書けなかった。
自分自身の受験でもないのに笑えるだろ。
さて、本作は前触れなく複数校で出た本。
風習や言い伝えを残す田舎に越してきた
訳アリ家族を軸に描かれた連作短編集だ。
未知のしきたりやその背景が面白いけど
序盤の不穏さは少し入り込みづらいな~。
素材文適性◎の第三話『猫を配る』から
グッと面白くなると俺なんかは感じたわ。
ジャイアンっぽい孤独な少年が猫探しを
契機に人との関わり方を見つめ直す話だ。
第四話『絡まりほどける』は素材適性〇。
普通の父とちがうのを恥に思ってた娘が
友人たちとの日々の中で変わってく話だ。
第六話『背を守る糸』は適性では△だが
この作品の中で俺が一番好きな短編だよ。
文章難易度では「やや難」になるこの本。
今さらなレビューの締めはこんなですわ。
はじめ身勝手に思えた家族の父がどんどん魅力的になっていくさまや、中高生たちの距離感の変化も見どころ。家族愛や友情、それにほのかな恋愛感情にも口元がゆるみまくること請け合いです。