人ってつくづく、経験や体験の上に成り立っていくものなんだと思う。それを失った状態の僕は、僕自身の軸がどこにあるのかがわからない。(本文より)
入試頻出作家が昨年11月に出した新作。
この先生はシリアス作品がよく選ばれる。
本作はエンタメ色が強いと予想してたが、
読んでみたら意外にもシリアス系だった。
記憶を失った少年の苦悩がガチで描かれ
胸にズシリと迫るものがあるんだもんよ。
序盤に提示される謎要素を引っ張るから
読み始めたら多分止まれなくなるだろう。
相手の立場で想像することの大切さなど、
道徳要素が濃い目なのにメッチャ面白い。
説教臭くならずにこれができるところが
いとうみく先生の凄いところだと思うよ。
俺の推奨文を纏めるとこんな感じになる。
僕とは何者だったのか?事故で記憶を失った少年が戸惑いの日々の先に辿り着いたのは、驚きに満ちた真実でした。
善悪の白黒が明確でないところにリアリティを感じましたね。
そう、現実はこの物語のように複雑。
だからこそ、これを読んだ子は身近な問題と捉え、深く考えさせられそうです。
相手の立場になって想像することや自分自身を大切にすることなど、誰もが心に刻んで欲しいテーマが軽妙な文章のなかで、楽しく、自然と、浸透する作品だと思います。