中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

大作家、久々の降臨『ともだち』(椰月 美智子)

弱いほう、人数が少ない側を大事にするのはわかります。でも、優遇するのは違うと思います。(本文より)

 

椰月美智子先生は児童文学界の大作家で

旧作が頻出だけどこれは今月発売の新作

 

毎日小学生新聞連載作でかなり平易だし

小4あたりでも読めそうな印象だったよ。

 

クラスに大勢の海外ルーツの子供がいる

一風変わった学校の6年生の日常を描く。

 

もちろん平穏などではなく荒れまくるよ。

 

とくに生徒たちの連携で先生が動揺する

場面が俺が見たところでは最注目パート。

 

素材文適性の面ではなんとも言えないが

後半にかけて魅力ある話が多めだろうな。

 

俺のレビューの一部を以下に置いとくよ。

 

国際色豊かな小学校で、おっちょこちょいな六年生男子が「しずかじゃない日々」を過ごします。あえて狙ったんだと思いますが、主人公の影がちょっと薄いことで、クラスメイトたちのキャラの濃さや躍動感が引き立っていた印象でした。

 

『ともだち』感想・レビュー

 

全16章のうち12、13、15章が推し(2024/3発売)

 

【本気レポート】わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

日頃のメンタルと受験本番のそれは別物だという言説を目にしたことがあります。

実力を発揮できるかどうかは、当日になってみなければわからないというのです。

 

今回紹介するのは直前期にも「受験が楽しみ♪」と言ってはばからなかった元気女子。

 

天性の陽気をまとうムードメーカーは、十二歳の二月に何を見たのでしょうか?


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人生最悪の日(2022年2月4日)

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私、どこで道を間違ったんだろう。


ソファの隅で膝を抱えたまま考えてしまう。

冷たいほど真っ白な明かりに煌々と照らされた部屋で、さっきから頭の中を同じ言葉がグルグル巡っている。

 

「こわい……。嫌……。こわい……」

 

とめどなく涙があふれ、ポタリ、ポタリ、こぼれ落ちていく。隣で背もたれに体を預けたママも頬をびっしょり濡らして、繰り返し洟をすすっている。

 

「見なくていい、結果なんて」

 

ボソリと告げた私の様子に抑えられなくなったのか、またママが嗚咽を漏らす。

おううぅ… 。言葉にならないうめきの先に「ごめんなさい、優花」って消え入るような声がきこえた。

 

見たことない。こんなママ、見たことがない。まるで急に何年も老けてしまったかのよう。そんなあわれな姿が、私の哀しみをいっそう膨らませる。

 

ううん、あやまらないで。私が悪いの。できなかった私が。

 

浮かぶのは自分を責める言葉ばかり。けれど口ごもる私。言葉にはならない。

話そうとしても、ヒッ、ヒックってなってしまう。

 

ただ止まらない。感情があふれだすのが止まらない。ぬぐってもぬぐっても、あとからあとから流れ出る涙。そのせいで、ずーっと視界がゆがんだままだ。


つけっぱなしのテレビからは、アナウンサーの昂ぶった声が垂れ流されている。たぶん沈黙に耐えられずにつけていただけの番組。

ちょうど北京オリンピックの開会式を伝える中継がはじまっていた。

ぼんやり目に映るきらびやかな映像に、ふつふつと怒りが湧いてくる。


どうしてこんな日にお祭り騒ぎをしてるんだろう。なんで人の気も知らずに花火なんか打ち上げてるんだろう。

こんな日なのに、なんで。なんで。

 

・・・わかってる。ただのやつあたりだ。

 

気持ちを断ち切るようにきつく目を閉じると、大粒の涙がこぼれ落ちた。

 

エアコンをガンガンにきかせているのに寒気がする。ココロとカラダって、深いところでつながってるんだな…。

 

気づけば八時二十分。

 

合格発表の時間はとうに過ぎている。運命の瞬間っていうのも、これで、もう七回目。けれど、目の前には不安しかなかった。

 

さあ、見よう、と大きく息を吸っても、そのままフゥとため息がもれるだけ。

動けない。動きたくない。気力がどこかへ行ってしまったかのよう。

ママと二人、ただ、ひたすら泣き続けるしかなかった。

 

これから起こる恐ろしい現実が、簡単に想像できてしまう。それだけの経験を、この数日間で嫌というほど味わってきた。


悪夢だった。それは十二歳にして初めて味わう、本当の悪夢だった。


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入試の初日、二月一日はまだ元気だった。午前と午後に別の学校を受験して、とても疲れたけど楽しみな気持ちで夜の発表を待てた。

 

けれど、二日目には穏やかでいられなかった。さすがに前日の連敗がこたえた。

また午前と午後に受験。初日よりも入りやすいところをママが選んでくれた。

今度は少し手応えがあった気がした。

なのに結果はまたしてもゴメンナサイだった。

 

三日目にも午前と午後にテスト。こんなに続けて試験を受けたことなんてない。

けれど、ひとつも合格が取れないので、できる限り試験を入れることになった。

私の成績なら合格できるはずの学校。

 

「見学もしてない中学に通うのかな、私」


そんな気持ちでとぼとぼと試験会場に向かう。疲労はたまりにたまっていた。気分もいまいち乗らない。

それでもがんばったんだ、私。

なのに、またしてもだめだった・・・まさかの六連敗。

こたえたなあ…。

 

四日目の今日も入試は続いた。誰かが中学入試はデスロードって言ってたっけ。


本当だね。


朝から頭がぼーっとする。眠っても疲れが抜けていかない。

またママが午前と午後に受けられるよう出願した。

全然志望校じゃないところだけど、もう選べないからしょうがないよね。

 

中学受験も終盤戦。まわりの子たちも、なんだか元気がないように感じられた。

試験中は頭を使って問題を解くっていうより、答案を埋めるだけの作業をしている感覚だった。もう、できているのかどうかさえ全然わからない。

 

三時間にわたるむなしいおつとめが終わった。


ただ疲れた。


校門前でママと待ち合わせてランチへ向かう。

今日はもう「どうだった?」って聞いてこないんだね。聞かれるとすごく嫌だったのに、聞かれないとそれはそれで嫌。期待されなくなったのかな?とか思ってしまう。

 

ふらり立ち寄ったファミレスのお手洗いで、鏡を見てギョッとした。

そこには生気のない誰かの顔が映っていた。

肌はボロボロ。顔色はサイアク。目にもチカラがない。

あわてて表情をつくろうとするけど、できたのは引きつったように口角が上がった顔。


その瞬間、スイッチが切れたんだ。

こんなの私じゃない。


涙目で席に戻り、向かい合ったママに拝むように「お願い、もう無理。午後、休ませて」と告げた。

せっかく出願してくれたのに、と思うと顔を上げられなかった。ママの顔をまともに見るのが怖かった。

 

でも、意外にもあっさり「いいよ」って受け入れてくれた。ビックリして視線を上げると、ママの目も真っ赤だった。

 

疲れ切っていたんだね。ママも。

 

そのあとは二人で黙々と並べられた食事を口に運び、まっすぐ帰宅した。


大好きなはずのトマトクリームパスタなのに、嫌な後味だけがいつまでも口の中に残った。


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あの日の誓い(2024年1月29日)

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あの子ったら、また洗面所を独り占めして。


厚切りトーストと目玉焼きにサラダを添えた朝食をペロリと平らげると、鏡に張りつくこと二十分。これが娘の毎朝の大切なルーティーンだ。

鼻歌交じりにセミロングの髪をとかす横顔は今日も溌剌としている。

よしっ、という妙に気合の入った声に思わず含み笑いを漏らすと、キッチンからの視線に気づいた優花が「あ、ママー、今週の木、金は学校ないから。部活も」と告げてきた。

ん、わかってるよと応じながら、もうそんな季節なのかとしみじみ感じる。

 

そういえば学校からのお知らせに、やたら目立つ書体で書いてあった。

二月の休校期間中は「ディズニーランド禁止!」だと。

 

入試シーズンの到来を知り、かすかな胸の痛みとともに二年前の出来事が思い起こされた。

悪夢のようだったあの日々。とりわけ、一生分の涙があふれ出たようにすら感じたあの日。

 

あの長い長い一日のことを私は決して忘れないだろう。


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二年前の二月四日、娘とともにただただ泣きはらしているしかなかったあの夜。

淀み切った空気を吹き飛ばしたのは、帰宅するなり夫が放った一言だった。


「オメデトー!」


玄関のカチャリという音とともに、芝居がかった声が家じゅうに響き渡った。

一瞬、呼吸が止まった。

え…?

いま、なんて?

優花と視線が合う。彼女も目を見開いて固まっている。

 

「いやー。やったな。とうとう」と満面の笑みでリビングに入ってくる夫。

「あれ?どうしたの二人とも。そんなとこでくっついちゃって」といぶかしがる彼に、ひょこっと立ち上がった優花が足音を立てて向っていく。

 

「ねえっ!なに勝手に見てんの?」

 

自分で見たかったのにぃ~ なんて言いつのりながら夫の胸をポカポカ叩いている。

 

そんな姿がたまらなくおかしくて、いとおしくて、思わず後ろから抱きつき、夫とサンドした。

「いやー、キレながら笑い泣きしている人を初めて見たよ」とこぼす夫。

デレっとしたその瞳を、間違いないのよね?という意図でジッと見つめると察した夫は慌ててうんうんうなづき、ほらっとスマホの画面をこちらに向けた。

 

「番号間違えてないよね?」

「もちろん。生年月日も入力したから間違いないって。名前だって出てるし」

 

瞬間、そのスマホを優花が奪って私たちの間からすり抜けた。

 

サクラ色の通知画面に興奮してキャーキャーいいながら飛び跳ねる十二歳。居ても立っても居られないようにジャンプしながら右腕をぐるぐるまわしている。スマホもまわる。

 

そんな彼女を、着地の瞬間にもう一度つかまえてギュっと抱きしめた。優花も思わぬ強さでひしっとしがみついてくる。

 

ぬくもりはどこまでもあたたかい。再びこみあげてきた嗚咽がしばし交ざり合う。

何も言わなくても、ただそうしているだけで気持ちが一つになるような確かな感触があった。

 

突然、季節が変わったような熱に包まれた部屋で、テレビからこぼれ出る祝賀ムードまでもが、わたしたちの喜びに花を添えてくれているように感じられた。

 

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あの日、あのときの心の奥底までの共振は、涸れるほど泣きぬれた二人だけの大切な記憶だ。

 

後にも先にもこんな経験をすることはないだろう。


結果だけを見てしまえば、安全校まで含めた六連敗からのしょっぱい勝利。

人はそれを嗤うかもしれない。見下すのかもしれない。

 

本当をいえば、私も理想と現実のはざまでしばらくはモヤモヤを抱えていた。あんなにがんばったのに、お金も時間もかけたのになどと未練たらしく考えもした。

 

けれど、優花は私なんかよりも早く持ち前の明るさで前を向いて、力強く歩みはじめた。

その生き生きとした姿にどれだけ救われただろう。奮い立たされただろう。

たくましく成長していく娘の姿には、このうえなく大切なことを教えられた。


十二歳の学びの到達点である中学受験の結果。

それが大事なのは理解しているつもりだ。嫌というほどに。

されど、それとて人生にあまたあるチャンスの一つに過ぎないのも本当だ。


先は長い。

何が吉と出るか、凶と出るかなんて、今はわからない。

 

ただ一つ言えるのは、ものごとの受け止め方も、その先の未来も、自分しだいだということ。

 

だから、これからの人生も、しなやかに、自分らしく歩んで行ってほしい。

まだまだ危なっかしいところもあるけど、優花ならきっと大丈夫。

 

人よりいっぱい泣いたあなたは誰よりも強いんだから。


ゆっくり丸皿を拭きながらながらそんな思いにふけっていると、制服に着替えた当人が目の前をサッと横切った。通学カバンを片手に颯爽と玄関へ向かう背中に目を細める。


天性の陽気をまとうムードメーカーは今日も元気だ。


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「ねぇ、優花。学校、気に入ってる?」


出がけにいきなりママが切り出してきてびっくりした。

たぶん、もうすぐ入試期間って言ったから昔のことを思い出したんだろう。

 

今になってみれば二年前のことは、はるか遠い出来事のように感じる。

あのときは人生どん底のように感じた。本当の悪夢のように。

 

でも、ちょっとまわりのことが見えるようになってわかった。

あんなの悪夢じゃない。もっと大変なことが世の中では起きてる。それこそ毎日。

 

それに私の人生のクライマックスはあれじゃない。もっともっとうれしくて涙、涙になる経験をいっぱい積んで、重ねて、上書きしてやる。

 

だって、私、決めたんだ。

”これから進む道を一番いい道にしてみせる”って。

あのときママにしがみついて、泣きまくりながら誓ったんだ。

 

だから立ち止まってなんていられない。

 

人生っていうでっかいゲーム。私は手にしたカードで戦い抜く。楽しみ尽くす。

 

それが私だ。

それでこそ私だ。

 

さ、今日も行くよ。大好きなみんなが待ってる、私がいちばん私でいられる場所へ。


ローファーを履きながら、「・・・ったり前じゃん」とだけ言い置くと、弾みをつけて家をとびだした。

 

私は、私の進む道を正解にしてみせる


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 あ と が き

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最後までお読みいただきありがとうございます。

 

たった五千字ほどの記事ですが、仕上げるのには半年以上もかかりました。作家さんたちの大変さがほんの少しだけわかった気がします。


今回の話は大部分が創作です。骨子となる重要箇所が現役ブロガーさんの実体験で、あとはほぼ想像で肉付けしたフィクションだとお考えください。


つまり、この物語は実在する人物・団体等とはあまり関係ありません。


なお、エピソードをくださったその方からは「しんどい思いをされているママたちの気持ちが少しでも楽になったらという思いで体験をブログに書きました」というコメントとともに「頑張っている子どもと親御さん全員を応援したいです」というあたたかいメッセージを頂戴しています。

 

【本気レポートシリーズ】

涙をチカラに変えて ~或る早稲アカ女子の疾走~

心に御守りをたずさえて ~或る日能研女子の復活劇~

私らしく、いられる場所へ ~或る元サピ女子の再起~

どんなに心が挫けても ~或る公文男子の矜恃~

2月1日の奇跡 ~或るサピックス生のあゆみ~

入試問題の難易度を偏差値化する(算数編)

人間らしさってなんだろう『嘘吹きアンドロイド』(久米 絵美里)

その時、その瞬間は、真実だった気持ちや言葉も、あとから嘘になることもある。過去の言葉の意味は結局、その人が今をどう生きてるかどうかに左右されるんだ。(本文より)

 

まれに出題される作家の先月発売の新作。

 

このシリーズは物語で起こる事件により

ネットやスマホの問題が自然に学べるよ

 

受験に関係なくすすめたくなる一冊だな。

 

ちなみに、大人の俺にも発見があったわ。

 

接客ロボットは、見た目とキャラ設定を

子供っぽくしたほうがクレームが出ない

みたいな話は特に興味深い話だったわ~。

 

弱さが愛される理由になるなんて新鮮だ。

 

確かにガストのロボとか妙にかわいいし。

 

さて、今作は曲がったことが大きらいな

少女が明らかなウソをつく少年と関わり

仲間とともに彼の危うい心の領域に迫る。

 

わりかしヘビーなストーリーでもあった。

だけど終わり方は笑みがこぼれる爽快さ。

 

以下、俺のレビュー終盤だけ付けとくよ。

 

AIを深掘りすることで、逆に人間らしさとは何かを発見できるんですね。

さまざまな問題提起があり、AIが選ぶ心地よい情報への依存や思考の偏りなどについて、じっくり考えさせられました。

今作も小中学生必修にしたいですよ。

 

『嘘吹きアンドロイド』感想・レビュー

 

「勉強しないでお金持ちになることは現実的ではありません」とAIが語る(2024/2発売)

 

部活動の”三種の神器”『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子)

たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。

このタイトルはシリーズ化狙いなのかも。

 

かなり平易なんで小5でも十分に読める。

 

尊敬できる先生や、高め合えるライバル、

目標となる先輩などとの出会いを契機に

新入生の男女が変わっていくストーリー。

 

部活ならではの魅力が凝縮されているよ

 

国語の問題文には少女が先生に認められ

ますます部活が好きになるエピソードの

周辺などがちょっと使えるかもしれない。

 

やっぱ尊敬できる人に解って貰えるって

子どもの運命を変える瞬間になるよな~。

 

また俺のレビューの一部だけ付けとくよ。

 

主人公は中1の男女。

自分の軸があやふやだった2人が、部活動を通じて憧れの対象を見つけ、何かに一生懸命になることの素晴らしさに目覚めていきます。

 

『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』感想・レビュー

 

光ある未来を感じさせてくれる(2024/1発売)

 

燦然!これぞ金字塔『カラフル』(阿部 暁子)

「本当は誰にも迷惑なんてかけたくないよ、私だって(本文より)

 

『カラフル』といえば森絵都先生だけど

今回紹介するのは阿部暁子先生の新作だ。

この先生は『パラ・スター』が頻出だな。

 

今作は車いすユーザーの少女に出会った

高1男子の意識が新生活の中で変化する。

ヒトコトでいえばこんなストーリーだよ。


サラッと書いたがかなり考えさせられる

深みもある物語だからぜひ見て欲しいな。

 

テーマ注目度、素材文適性はともに◎だ。

 

希少な優良素材なのは間違いないんだが

児童書ではなく一般文芸カテゴリだから

ちょ~っと埋もれやすいような気もする。

 

何せ書店の一般文芸棚は生存競争が苛烈。


かなり探求心のある問題作成者でないと

この作品は発掘できないんじゃないかな。

 

全四章だが全ての章に使える箇所はある。

 

特に一章の委員決めの帰り道パートとか

二章のなくした夢を語り合うパートとか

四章の差別ネタで荒れるパートがいいよ。

 

二章の体育パートは〇、三章では少女の

感情がこぼれ出るパートなどが△な印象。

ほかにも国語素材にいい箇所はありそう。

 

地方の進学校の青春を描いたこの小説は

例の分類で文章難易度が「やや難」相当。

 

俺のレビューのカケラは以下の通りっす。

 

「これを個性とは言わないでほしい」という吐露など、車いすユーザーの心情にはハッとさせられる瞬間が幾度もありました。

主人公は高校に入学したばかりの少年。

夢破れ意欲を失くしていた彼が、凛々しく、超然と生きる少女との出会いに刺激を受け、生きる喜びに目覚めていきます。

 

『カラフル』感想・レビュー

 

第四章の先生が長々と語るシーンは必見!(2024/2発売)

 

ボッチに訪れた春『17シーズン 巡るふたりの五七五』(百舌 涼一)

たった一文字、いや一音にそこまでこだわるのかと音々は驚く。同時に、たった十七音しかないのだから、一音一音にこだわり抜かないといけないのだと悟る。(本文より)

 

2024年2月に発売されたばかりの本。

出題実績ゼロの児童文学作家新境地だ。

 

タイトルで高校生モノと誤解しやすいが

17はおおむね俳句を意味してるんだわ。

で、ストーリーほぼ全てが中学生編だよ

 

短歌・俳句扱う作品は入試でわりと出る。

ちょっと思いつくだけでこんだけあるし。

 

短歌・俳句モノのYA本(出題実績あり)

『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』

『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』

『私の空と五七五』

『南風吹く』

 

本作はワケありのボッチ少女が主人公だ。

目立たない彼女が目立つ少年と関わって

驚くほどの成長を見せるってストーリー。

 

途中で主人公のこだわりに??となるが

疑問はラストにかけて解けていくだろう。

 

季重なりなどの俳句の約束ごとも学べる。

言葉の置き換えで印象が激変する点など

ビックリするような発見が俺にはあった。

 

優しくあれという先生の信念もいいよ~。

 

とくにラストは見逃して欲しくない本作。

断片だが俺のレビューを以下に付けとく。

 

個性を認められることがどれだけ救いになるか、思い知りましたね。

主人公は極端に内向的な中学二年生。

過去にとらわれ前に進めなくなっていた彼女が、俳句を通じた出会いをきっかけにして、目の覚めるような変化を遂げてゆくストーリーです。

 

『17シーズン 巡るふたりの五七五』感想・レビュー

 

誓い立て めぐる季節よ この夏を(2024/2発売)

 

スーパー校務員の流儀『17歳のビオトープ』(清水 晴木)

生死に直結しないことに対して、深く悩んで考えられるのは人間に許された贅沢の一つですよ。(本文より)

 

都立高校入試等で出題実績のある作家の

2023年11月に発売された作品だよ。

 

人気者の校務員が子どもたちを救う話だ。

 

校務員がキーマンってなかなか珍しいが

キモは授業では触れられない人生論だわ。

 

これは悩める十代なんかに特に効きそう

大人にもハッとさせられる部分があるし。

 

万能校務員の活躍は、どこまでやるのか

面白ネタとして楽しみつつ見て欲しいよ。

 

それより人生の教科書になる部分がカギ

 

しあわせの国ブータンにおける幸福度が

インターネットの普及で下がった話では

人と比べることの不幸がよく伝わったよ。

 

だからSNSとの向き合い方に要注意と。

 

素材文適性は終盤にありそうな印象かな。

以下に俺のレビューの要約を付けとくよ。

 

心の迷路から抜け出す貴重なアイデアをくれる一冊。

何でもできる高校の校務員が、どこまでも生徒たちの悩みに寄り添い、苦痛から解き放っていきます。

ただ答えを与えるのではなく、徹頭徹尾、自分で考えるよう促し、自ら気づきを得られるようサポートをしていく姿勢がいいですね。

SNSとの向き合い方や、自分の心の守り方など、子どもたちにぜひ参考にして欲しいと感じるエピソードも目白押しでした。

 

『17歳のビオトープ』感想・レビュー

 

彼が万能すぎる?大事なのはソコじゃない(2023/11発売)