中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

アクが強い、強すぎる?『サクラサク、サクラチル』(辻堂 ゆめ)

二つ違いの姉は、かつて、両親の自慢の娘だった。中学受験で第一志望校に受かり、両親を喜ばせた。(本文より)

 

名作『山ぎは少し明かりて』の著者の本。

 

毒親に東大合格を強要される少年の話を

東大出身の実力派作家がどう描くのか?

関心があって手にしたのがこの作品だよ。

 

教育虐待しまくりの話だから小学生NG

中学生ならギリOKといったところかな。

 

親世代にも学びがある本だと俺は感じた。

主人公の親にはまったく共感できないが、

反面教師としてはとびきり優秀だからよ。

 

俺のレビューの終わりの方はこんな感じ。

 

一部の描写を胸糞悪いと感じる向きがあるかもしれませんが、程度の差こそあれ、子どもをトロフィーにしたい欲は、私自身を含め多くの親たちの心にあるように思います。

支配し、コントロールしようとすればどうなるのか?

答えは、この物語が教えてくれるかもしれません。

 

『サクラサク、サクラチル』感想・レビュー

 

マニアックな東大攻略法も(2023/7発売)

 

以下は中学受験の参考にもなりそうな話。

 

現代文の読解問題において感情移入は命取りです。(本文より)

どこまでも響け、そのメロディー『うたう』(小野寺 史宜)

わたしもこの数年で学んだわけ。牛後のときは重かったけどね、鶏口になると動きは軽いのよ。(本文より)

 

音楽にかかわる4人の男女が描かれてる

たまに入試に出る作家の2月の新作だよ。

 

夢を応援する妻とか、人気者の先輩とか

登場する一人ひとりの魅力がヤバすぎる

 

この先生、人情を描かせると最っ強だわ。

いい人のふるまいってのが胸に迫るよ~。

 

で、しょーもないキャラもいい味をだす。

なんだコイツと思ったのが変わっていく。

 

それなりの年でも成長していけるんだな。

自分にも何かできるかもって気になるよ。

 

この作品は難易度ではやや難しいんだが

中学生女子を描く最初の章は読みやすく

ここに限り中学入試の出題標準レベルだ

 

素材文適性の面でもそのあたりがよさげ。

例えば親友と文化祭に行くくだりとかな。

 

あとは、家庭教師をするドラマーの章も

使えるかな~?と感じる箇所がチラホラ。

 

俺のレビューのはじめの方はこんなんよ。

 

音楽の楽しさや喜びが直に伝わってくる作品ですね。主人公はとあるバンドのメンバー4人。ボーカルの女性を柱にそれぞれの波乱ある生き様がこまやかに綴られていきます。

 

『うたう』感想・レビュー

 

読書で歌声の魅力に気づかされるとは!(2024/2発売)

 

心がほぐれてゆく一冊『学校に行かない僕の学校』(尾崎 英子)

今の学校は、考える前に与えすぎてるんやと、俺は思う。(本文より)

 

『きみの鐘が鳴る』で中学受験を描いた

著者の約1ヶ月後に発売される新作だよ。

 

これは多様な価値観を体感させてくれる。

今が辛い子どもたちに届いて欲しい本だ

 

国語素材文としてもかなり面白いだろう。

 

特に名門校に入り壁にぶつかった少女と

主人公の少年との会話シーンが使えそう。

 

タイトル的に扱いづらいかも知れないが

よさげな場面が複数あり素材適性は高め。

 

きみ鐘も複数校で出てた要注目だろう。

 

文章レベルはきみ鐘よりちょっと難しい。

まぁ、出題標準レベルといったところだ。

 

以下、俺の長文レビューを付けておくよ。

 

主人公は重いトラウマを抱えた中学生。

 

過去に縛られていた彼が、せせらぎの響く森の学校で、心に枷を負った仲間と絆を深め合い、未来に連なる気づきを得ていきます。

 

自己否定の極みにいた少年や、取り付く島もなかった少女の心がほぐれていくストーリーの鮮やかなこと!

彼らの成長の決め手は、ほどよい距離感の大人であり、自然の中ゆったり流れる時間であり、そして何より解りあえる相棒たちですね。

 

寮のあるフリースクールでのそうそう見られない友情のゆくえには、ぜひとも注目して欲しいです。

 

考える力のみならず、生きる力を身につけさせようとする先生方の理念も素晴らしかった!

ときには逃げてもいいんだよという言葉や、伸びるよりも大事なことがあると訴えるくだりには、私もハッとさせられました。

心に沁みるイデアの数々はきっと多くの子どもたちの救いになりますね。

 

さらに、鮮やかで季節感あふれる描写もたっぷり満喫できました!

とりわけ夏ですよ、夏。

緑の木々に囲まれた川面を日差しがキラリ反射するさまなど、思い浮かべるだけでまぶしさを感じるほど。

 

終盤、スクールで最高学年になった少年が紡ぎだす文章がまたいいんです!

このくだりには「迷える子ども達に居場所を」という著者の祈りが丹精に込められていた気がします。

 

生身の中学生を追い詰める悩みや葛藤が、苦しみ抜いた少年少女を通じてどこまでも響いてくる本作は、親世代としても学びの多い一冊でした。

 

これは間違いなく多くの子どもたちの共感を呼ぶことになるでしょうね。

 

大切な言葉を胸に歩んでゆく(5/7頃発売予定)

 

合不合判定テストの国語出典(続 模試に出る作品は当てられる)

去年の合不合判定テストの物語文だけど

俺がレビューした作品からしか出てない

 

一昨年はここまで当たってなんかないし

たまたまだが、まぁ数撃ちゃあたるわな。

 

 2023/04/09実施 
合不合判定テスト 第一回

『給食アンサンブル2』(如月 かずさ)

(2022/10/12発売)
(2022/12/10投稿)

 

 2023/07/09実施 
合不合判定テスト 第二回

『神無島のウラ』(あさの あつこ)

(2023/02/24発売)
(2023/04/01投稿)

 

 2023/09/10実施 
合不合判定テスト 第三回

『おくることば』(重松 清)

(2023/06/26発売)
(2023/08/08投稿)

 

 2023/10/08実施 
合不合判定テスト 第四回

『ぼくはうそをついた』(西村 すぐり)

(2023/06/07発売)
(2023/06/03投稿)※先行レビュー

 

 2023/11/05実施
合不合判定テスト 第五回

『この夏の星を見る』(辻村 深月)

(2023/06/30発売)
(2023/07/02投稿)

サピックスオープン2023/12/03でも出題

 

 2023/12/10実施
合不合判定テスト 第六回

『かたばみ』(木内 昇)

(2023/08/04発売)
(2023/10/21投稿)

 

だいたい発売3~6ヶ月の本がきてるが

センスあふれるめっちゃいい選書だわ~。

 

ま、模試で既読の作品が出てしまうのは

実力を図るうえでは好ましくないゆえに

無理して出そうな本を追う必要はないよ。

 

【お勧めの過去記事】

模試に出る作品は当てられる

志望校で出る作品は当てられない

入試問題の難易度を偏差値化する(算数編)

涙をチカラに変えて ~或る早稲アカ女子の疾走~

わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

 

いよいよ最大規模の模試のシーズンが到来

 

荒波を超えて『遠い町できみは』(高遠 ちとせ)

誰かを責めるんじゃない。誰かに誇れるように胸を張ろう。(本文より)

 

3月14日に出たポプラ社小説新人賞の

特別賞受賞作ってのが今回の紹介本だよ。

 

海辺の田舎町を舞台にして3人の男女が

小5から中学時代を駆け抜けていく話だ。

 

過酷な運命にあらがう少年少女の成長と

友情のきらめきってのがまぶしかったよ。

 

ちょっと児童虐待を描く瞬間があるので

気がかりなら親が先に見ておくのもアリ

 

少女の波乗りに少年が圧倒される部分等

素材文適性△な箇所もチラホラな印象だ。

 

レベル感としてはやや難といったところ。

俺のレビューの一部を以下に付けとくよ。

 

主人公は都会から来た少年と、地域のはみだし者の少年少女。

大人に振り回されてきた彼らが、ともにかけがえのないものを見つけ、身を寄せ合いながら世間の荒波にあらがっていきます。

サーフィンがつなぐ友情や意外過ぎるトラブルの勃発など、メチャメチャ惹きつけられるストーリー展開でした。

 

『遠い町できみは』|感想・レビュー

 

構想力が凄い(2024/3発売)

 

しあわせを願う意味『風に立つ』(柚月 裕子)

恵まれた人生と充実した人生って同じじゃないのかもな。(本文より)

 

ミステリや推理モノで有名な作家の新作。

 

入試でほぼ見ない先生なんだがこの本は

ちょっと使える要素が混じってるんだな。


地域一の進学校に入学したものの問題を

起こし南部鉄器工房に流れてきた少年の

更生に向き合う人びとを描いた小説だよ。


主人公は38歳の職人、少年は16歳だ。

 

問題少年に関わりたくないと思っていた

主人公がどう変わっていくかに注目だわ。

 

問題を起こして高校を追い出された彼を

追い詰めたものの正体ってのが驚愕モノ。


ボタンのかけ違いってせつないもんだな。


ま、これは子どもより親が読むべきかも。


書店では一般文芸コーナーにあるんだが

平積みになっていて存在感が抜群だから

たぶん作問者も気づくんじゃないかな?

 

難易度では難しいに分類されるこの作品。

俺のレビューの感想パートはこんな感じ。

 

どう生きるべきなのか?

親として勧めたい道筋は確かにありましたが、この作品に触れ、はたと立ち止まりました。

やはり、何が正しいのかなんてわからない。

けれど、もし進む道に迷ったら子どもの心からの幸せを判断基準にすれば、とんでもない間違えにはならないのではないかと感じるようになりました。

大切なのは頭ごなしに決めつけないことであり、価値観を押し付けないことですね。

そのためにも、子どもの声にきちんと話に耳を傾けることが何より大切なのだと得心しました。

 

『風に立つ 』感想・レビュー

 

一般文芸カテゴリの勝ち組作品(2024/1発売)

 

リアルな小学生ライフ『小田くん家は南部せんべい店』(髙森 美由紀)

冷たい思い出より、温かい思い出の方が涙をこみ上げさせるのは、どうしてなんだろう。(本文より)

 

たま~に出題される作家の先月の新作だ。

 

地元ならではの名産品作りが家業という

少年の小4~小5のあゆみを描いた物語。

 

これがまたMAXレベルでエモいんだわ。

人情、友情、家族愛がビシバシ響くから。

 

かつ素材文適性も極限と言えるほど高い

途中まで使えそうな箇所をメモしてたが

ありすぎて途中からは読むのに没頭した。

 

とりあえず一章の分だけを羅列しとくよ。

 

素材文に使えそうなくだり(一章より)

適性○ 教室で課外授業の行き先が決定

適性○ 課外授業での思わぬドタバタ劇

適性◎ 帰宅すると意外な出来事に遭遇

適性○ 後日、学校で心を揺さぶられる

 

二章以降にも盛りだくさんで宝の山だわ。

これほど素材に適した本はそうそうない

 

ただ『カラフル』のときも書いたんだが

この本も過当競争の一般文芸カテゴリで

作問者が見つけられるかは未知数だろう。

 

例の難易度分類だとやや難相当のこの本。

俺のレビューの一部は以下の通りですわ。

 

読めば心がホカホカになること間違いなし!

主人公はせんべい屋の少年です。

家業があまり好きでなかった彼が、新しい友人と関わるうちに心を揺り動かされ、ともに難しい製法に挑む楽しさに目覚めていきます。

人も場面もありありと浮かぶリアルな描写、圧巻でした。

 

『小田くん家は南部せんべい店』感想・レビュー

 

人と人の絆を感じさせてくれる(2024/2発売)