中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

文学×科学の醍醐味『藍を継ぐ海』(伊与原 新)

人類が最初に手にした鉄は、鉄隕石だと言われているんですよ。(本文より)


地学小説という新しいジャンルの開拓者、

聖光学院でも出題実績がある著者の新作。

 

今作でも科学の知識がごく自然な感じで

ストーリーに絡んでくる仕上がりだよ~。

 

しかも北海道開拓史や大戦史も関わって

一石二鳥どころか三鳥な優れモノですわ。

 

これはたぶん著者にしかできない芸当だ。

 

超ユニークだったのはアイヌ流の熊退治

人に遭遇すると立ち上がる習性を利用し、

出刃包丁で喉を突いて仕留めるって話だ。

 

これを知っとけばいつ遭遇してもOK?

 

何より持ってかれたのは戦争被害の話だ。

これは前情報なしに読んでみて欲しいな。

 

素材文適性アリは中学生とウミガメの話。

少女がかつて思わぬ行動をとった理由が

明るみになるシーンが最適な印象だった。

 

難しい作品ゆえ普通の小学生にはきつい。

また俺のレビューをちょっと付けとくな。

 

地学や生物学の知識という付加価値が付いた心に響く物語5編。

陶芸と科学の接点、狼が犬になる系譜、隕石マニアの驚異など多彩な学びをストーリーとともに満喫できました。

圧巻だったのは、思わぬ経緯で戦争の爪痕を知ることになった男の話。

主人公と同様に、私も不可解な遺物の持つ迫力に取り込まれ、突き動かされるようにページをめくりましたよ。

 

『藍を継ぐ海』感想・レビュー

 

どこかで使えそうなマメ知識も多数(2024/9発売)

 

人間と犬とのつながりは、主従関係などないところから始まったのだ。(本文より)